君と僕と先輩と後輩と部長とあの子と宇宙人とメイドとその他大勢の日常

先輩と後輩・3

「あー犯罪者だー」

「黙れ、誰が好き好んであんな変態と散歩せにゃならんのだ」

「先輩ってたまーにおじさんみたいな言葉使いになりますよねー」

「後輩、人の話、聞いて？」

「そういえば先輩！　またお気に入りが増えました！　やっぱり男同士の友情は胸が熱くなるからですかね？」

「……その話、男同士の恋愛とか、ないよな？」

「えっ？　なんですか、それ？」

「い、いや、意味が分からないならそれでいい」

「？」

「と、ところで後輩、今日メイドは迎えにくるのか？」

「来ますよ、当たり前じゃないですか」

「当たり前なのかよ。いや、ならいいんだ」

「先輩がウチのメイドに何のようですか？　もしかして、デートお誘いですか？」

「おい、後輩、世の中には言っていい事と悪い事があんだよ。忘れるな」

「またそんな冷え切った目をして～。先輩ってウチのメイドの話になるとヤケにカリカリしますよね、嫌いなんですか？」

「いや、嫌いって訳じゃないんだけどな、アイツの前で油断するとすぐに明後日の方向に弄られるからその予防だよ」

「へぇ～」

「へぇ～って、興味ないなら聞かないで貰えます？」

「そんな事より先輩、お腹空きませんか？」

「ああ、もう話に飽きたのか」

「先輩の話は長いです、もっと短めにして下さいよ」

「これで長いならお前と話す事はもう無いな」

「そんな！！　なら今日は特別に持ってきたメイド特製スーパーイナゴクッキーあげませんからね！」

「いやいらねえよ、何だよその悍ましい食い物」

「えっ？　美味しいですよ？」

「俺に食虫趣味はねえよ」

「イナゴと言ってもインディアンナッツオイルゴーヤクッキーの略なんですけどね」

「インディアンナッツオイルって何だよ、つうかなんでそれにゴーヤ入れたんだ？」

「知らないんですか？　メイドはゴーヤが好きなんですよ」

「アイツ自分の事は一切喋らないし知ってる訳ないだろ。でもまあ俺はどちらかというと苦手だな、ゴーヤチャンプルくらいしか食った事ないけど苦味が強すぎてちょっとな」

「それは人生損してますね、ゴーヤのお刺身とか美味しいですよ？」

「ゴーヤに刺身とかあんの！？」

「ありますよ、でもゴーヤの話ししてたら食べたくなって来ましたねぇ」

「まあ食ってみたいとは思うな」

「あっ！　先輩、一緒に沖縄に行きません？」

「どうせ今からって言うんだろ？　俺は無理だ他を当たってくれ」

「ぶー、先輩のいけず！　アンポンタン！　目がヤクザ！」

「あ？」

「すいません、ごめんなさい、言い過ぎました」

「ったく、唐突じゃなかったら少しは考えるんだからちょっとは予定を立ててから提案しろ」

「でもいま先輩と行きたかったんだもん」

「……………だ、ダメだ、今日はバイトだからダメだ」

「先輩、なんか挙動が怪しくなりましたよ？」

「はぁ！？　ちょっと意味わからないですね」

「へぇ、先輩も興味がない訳じゃないんですね」

「な、何にだよ」

「沖縄」

「……うん、アルヨー」

「でしょ？　じゃあ一緒にいきましょーよ」

「それはそれ、これはこれ、バイトをいきなり休んだら店に迷惑が掛かるだろ、そういうのは良くない」

「やっぱり先輩は真面目だなー、他の人と代わってもらえばいいのに」

「まあ、それはそうなんだけどな、こればっかりは性分なんだよ」

「頭は硬いし頑固だし不器用だし、先輩は絶対損してますよ」

「言うようになったな、後輩」

「先輩の後輩ですからね」

「成長してるようで何よりだよ。さて、そろそろ帰るぞ、バイトに遅れる」


　手早く書きかけの原稿を纏めてカバンにしまい込み扉に手を掛ける。

　すると、ニコニコと笑顔を浮かべる後輩が口を開く。

「そんな先輩はすっごくカッコイイと思いますよ」

「…………あっそ」

「ええ！？　冷たい！　冷たいですぞ！　先輩！！」

「ええい！　鬱陶しい、引っ付くんじゃねえよ！」




　この後メイドに見られて無茶苦茶からかわれた。