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87: 少年と魔王とお見舞いの話 34
しおりを挟む体力の限界はとっくに超えていて、その上、酔いもずいぶんと身体にまわってしまったようで、目の前は朦朧としてきた。
だが、意識を手放したくても出来ない。
最奥に収められた熱い楔がその存在を主張しているし、レステラーの手が肌に触れるたび身体が疼いてたまらないのだ。
「う、うごいて……れすたー……おねがい……」
潤んだ瞳を向けてレステラーに懇願する。
「動いていいのかよ」
「い、いい……いいからぁ……」
「エロいな、アンタ」
「はぅ……あ、ああ、んっ!」
美味そうな獲物が自ら手の中に飛び込んできたのだ。
貪り喰わないはずがない。
力ないツァイトの身体を抱き寄せてその背中を支え、反対側の腕で彼の腰を掴んで少しだけ浮き上がらせると、最奥に向かってレステラーは容赦のない突き上げを開始した。
中のいいところを擦られ、快感の波が身体全体に広がる。
「あっ、んっ、ああぁぁ……ッ!」
「これで満足か?」
「あ、ああぁ……やぁ、も、もっとぉ……」
乱暴に動くレステラーのものを無意識にぎゅっと締め付けると、わずかばかりレステラーが眉をしかめた。
だが、レステラーの首に腕を回してしがみつき、揺さぶりに堪えているツァイトには、その表情をうかがう余裕がなかった。
「ああっ、あ、んっ、も、もう……い、いくっ! いくっ!」
「好きにイけよ。俺もアンタの中にだすから」
「ああぁぁ……っ!」
ひときわ強く敏感な部分を抉られ、嬌声をあげたツァイトが背を仰け反らせて絶頂を迎える。
三度目ともなるとツァイトの吐き出すものは量も少なく、勢いもない。
だが、ぎゅうぎゅうに締め付けてくる後孔のきつさは絶品で、そのきつさを味わいながら数度抜き差しを繰り返すと、レステラーはツァイトの最奥に精を放った。
「おい、大丈夫か?」
「…………」
「ツァイト?」
ぐったりともたれ掛ったままのツァイトは、レステラーが声をかけても反応しなかった。
腕でその身体を支えるようにして少しだけ身体を離す。
涙でぬれた瞳は閉じられ、半開きのままの唇からは穏やかな寝息が聞こえてきた。
「あいかわらず体力ねえなぁ……」
瞼の端に浮かんでいた涙を舐め取ったレステラーは、心地よいツァイトの後孔からまだ萎えていない己のものをずるりと抜きとる。
二人の身体はツァイトの放ったものでどろどろだ。
さすがにこの状態で眠らせることなど出来ない。
大人に成長させてもまだ軽いツァイトの身体を抱え上げると、レステラーはそのまま浴室へと向かった。
意識のないツァイトを手ずから綺麗に洗い、新しい服を着せ、ベッドに寝かせてもツァイトは目を覚ますことはなく、結局、ツァイトが気が付いたのは、次の日の朝だった。
レステラーによって大人に成長させられていた身体は、いつもの大きさに戻っていた。
「うぅぅ……あたま、いたい……」
大きな窓から差し込む朝日を浴びて目を覚ましたツァイトは、割れるような頭の痛みに苦痛の声を漏らす。
頭全体を鈍器で殴られたかのようにがんがんと痛い。
大きな柔らかい枕に額を押し付け、身体を丸くして、痛む頭を押さえていた。
「完全な二日酔いだな」
「う、うるさ……っ! うぅぅっ、いた、い……」
「調子に乗って全部飲むからだ」
同じベッドの上、ツァイトの隣に座りその様子を見ていたレステラーが苦笑をもらす。
よっぽど昨日の酒は人間のツァイトにはきつかったようだ。
不老不死になって以来、痛みとはほぼ無縁だったツァイトは、あまりの痛さに涙目になっていた。
大量に度数の高い飲んでも一切酔わないレステラーにはその苦しさが理解不能だったが、さすがに気の毒に思って、彼の大きな手をツァイトの頭に伸ばした。
亜麻色の髪を撫でるようにして手のひらに魔力を込めれば、あれほど激しかった痛みがすっと和らいだ。
「レスター……?」
「痛みはとれたか?」
「う、うん。ありがと……」
ほっと、心底安堵したような息をツァイトは吐き出した。
「ねぇ、レスター……オレ、昨日なんかした?」
「ん?」
「飲んでから後の記憶が全然ないんだけど……」
丸まった格好のまま、顔だけをレステラーにむけて、ツァイトがぽつりと問いかける。
ツァイトが覚えているのは、レステラーに甘い酒の入った赤い靴のカップをもらって、それに口をつけたところまでだ。
あの酒が本当に甘かったのは覚えているし、美味しかったのも覚えている。
だがそれを飲んでいる途中から今朝目が覚めるまでの記憶がすっぽり抜け落ちていた。
起きた時の頭の痛みもそうだったが、なんだか身体全身がひどくだるい。
レステラーによって頭痛はとってもらえたものの、今日一日、ベッドから起きれないような気がした。
「いや、別になんもしてねえぞ」
「……ホントに? 気分悪くて吐いたりしなかった?」
「ああ。酒飲んで酔っ払ったアンタが、俺にさんざんケチだなんだとクダ巻いて絡みまくったあげく、さっさと一人で寝やがっただけだからな」
なんとなくその状況が容易に想像できてしまい、ツァイトはすごく居た堪れなくなった。
「ちなみに、アンタを湯あみさせて、着替えさせて、ここまで運んで寝かせたのは俺だから」
「うっ、なんか……ごめん……」
「気にするな。いつものことだろ」
レステラーはなんてことないように笑うが、クダを巻く酔っぱらいの世話をさせたとなると、ずいぶんと迷惑をかけたことだろう。
申し訳ない気持ちになって、ツァイトは謝罪の言葉と共に、感謝の言葉も述べた。
「どうせ暇なんだ。今日は一日寝てろ」
ゆったりと髪を撫でてくるレステラーの優しい手つきに誘われるように、ツァイトはうとうとと目を閉じていた。
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