【BL】欠陥Ωのオフィスラブストーリー

カニ蒲鉾

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1【職場復帰】

1-31大好きな先輩side花野井千佳(3)

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「―――なんか、あの雰囲気はちょっと酒のせいってだけじゃない気がするんすよね…わかんないですけど……って、花野井?どうした?眠いか?」
 
 
 長らく過去に思いを馳せていると再びたっきーの言葉で急速に我に返り、今はまだ歓迎会の途中だったと思い出す。そして、今日の先輩の様子について話していたという事も。
 
 
「んーんなんでもない!でもさ、だったらなんなんだろ…飲んじゃったのはボスのお酒一杯分くらいでしょ?先輩お酒に強いわけではないけど人並みにはって感じだったよね?今までも取引先とのお酒の場何回も見てきたし……お酒一杯であんなにぐだぐだになっちゃうなんて…どんだけ強いの飲んでたのボス」
「アホか普通のハイボールだわ」
「え~ホントですかぁ~?いだっ!」
 
 
 疑いの目を向ければ容赦なく頭を叩かれ、酷い…と涙目でボスを睨んでいると今までずっと黙って話を聞いていた松野さんが不意に口を開いた。
 
 
「私が御手洗に付き添った時も橘さん、だいぶフラフラでしたね…すぐに社長が現れて落ち着かれたようでしたが」
「はぁ…やっぱり運命の番の傍は落ち着くんだぁ…ロマンだなぁ…」
「運命…」
 
 
 ベータの僕にはそもそも縁もゆかりも無い運命という関係性はただ物語の主人公に憧れるくらいの軽い感覚で口にしただけの言葉。それなのに、意味深にポツリとつぶやく松野さんの姿に思わず首を傾げた。

 
「松――」
「運命がどうかしたんすかー?」
 

 松野さん、そう呼びかけようとした言葉はひとり御手洗に立っていたにっしーがにこにこ笑顔で戻ってきたタイミングと綺麗に重なり、口から出る前に消失した。そんな事は知らないにっしーは、運命という単語だけが聞こえたらしくそこだけを無邪気に聞き返してくる。
 
 
「おかえりにっしー。先輩と楓真くんの関係が素敵だなぁ~って話!」
「あー…なるほど!おふたりの事は噂には聞いてたんですけど、今日一日見ただけでお互いがお互いの事を大事に思ってるのなんかわかります…誰もあの空気感には入っていけない感じ…」
「わかる?そーなの!だからにっしーも下手に先輩にちょっかい出しちゃダメだよ?社長命令で容赦なくクビ飛んじゃうかもっ」
「ひぇっ」
 
 
 首の横でシュッと手刀を振る真似をしながら冗談で笑っていると隣に座る松野さんが絶妙なタイミングで時計を見る動作をするのが視界の端に映った。
 
 
「ところで、みなさん二軒目決まりました?いいお時間になってきてますね」
「そうだな、ナイスだ松野。そろそろ店移すか」
「えぇ…マジで二軒目行くんすか明日も仕事ですよ帰らせてください…」
「うるせーぞ瀧川黙ってついてこい。んでもってちょっとは花を見習え。お前はブツブツ文句言い過ぎなんだよ」
「やーい、たっきー怒られてるぅ」
「……こいつから見習うところは無いっす」
「んん!?なんですと!?」
「先輩方仲良しですねぇ」
 
 
 やいやい言い合いながらも各自自然な流れで荷物を片手に席を立つ。伝票をスっと抜き取り先にお会計へと進むボスの後ろ姿に気持ちよく「ご馳走様でぇす」と声を投げれば「我らが会長様の奢りだ~」とブラックカードを光らせるのだった。
 
 
 
 あざしたーっと店員さんの掛け声を背中で受けながら一足先に外に出てお会計中のボスを待つ。春の夜の澄んだ空気が気持ちいい。
 
 
「明日は先輩復活してるといいなぁ…」
「そうですね…花野井くんも二日酔いは気をつけてください」
 
 
 ポツリと呟いた僕の言葉にまさか返答が返って来るとは思わず、返事の発信源、気付けばすぐ近くに立っていた松野さんをじっと見上げる。
 楓真くん並に背の高い人だなぁ…とぼんやり眺めたのち、いきなりニッと満面の笑みを送ってみた。不意打ちを着くことに成功したのか黒縁メガネの奥の目がきょとんと見開かれるのが珍しくて、おもしろくて、余計僕の笑みが深まった
 
 
「僕はまだまだ行けますよぉ!松野さん二軒目れっつごーです!にっしーもたっきーもごー!」
「ごーー!」
「帰りてぇー…」
「お前ら夜に外で騒ぐなー」
「ボスーー!二軒目へごーー!」
 
 
 
 
 次の日の朝、

 ガンガン響く頭の痛みの中、すっかり抜けた記憶と共に見知らぬ部屋で目覚めた話はまたいつか、機会があったら―――
 
 
 
 
 
 
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