41 / 131
2【動き出す思惑】
2-3それぞれの朝(3)
しおりを挟む「「ママァァァァっ!」」
都内の閑静な住宅街にある御門邸。
その立派な玄関扉を開き足を踏み入れた瞬間、きゃーっと手を広げ満面の笑みで駆け寄ってくる我が子の熱烈歓迎を咄嗟に膝をつき同じ目線になって受け止めた。その瞬間、車の中でまで抱いていた二人に嫌われてしまっていたらどうしようという不安は綺麗さっぱり消え失せ、短い腕を必死に伸ばし首に抱きつく楓莉とつくしを力いっぱい両腕に抱きしめその感触を確かめた。
「ふぅくん、つぅくん、昨日はママ約束守れなくてごめんね、じぃじと仲良くお留守番しててくれてありがとう…ふたりともとってもいい子だね」
「ふぅくんね、じぃじといっちょにおねんねした~」
「つぅくん、いいこでおねんね、できた」
腕の中で鼻息荒く胸を張ってアピールしてくる二人をこれでもかと褒めちぎりながら、「なんでうちの子はこんなにもいい子で天使なんだろうか…」と完全なる親バカ発言を真顔ですれば、すかさず「つかささんの子ですから当然です」といつの間にか同じように隣で膝をつきしゃがんでいた楓真くんから返ってくる。「楓真くん…」と感動しかけていると、返答はそれだけでは終わらなかった。
「聖母マリアのような包容力で満ち溢れたつかささんが産んだ子達ですよ、優しい心を持った聞き分けのいい天使のように可愛い子達に決まってます」
「……熱弁をありがとう、だけどそれ、あまり外では言わないでね」
「え―――」
「もう手遅れだと思うよつかさくん」
僕の切実なお願いに何でですかという表情を顔面に貼り付けた楓真くんへ言葉を続けるより先に、頭上から降ってきた落ち着いた声音に視線が向かう。そこに立っていたのはリビングからスーツ姿でやってきた楓珠さんだった。
「楓珠さん!」
「父さん、おはよう」
「おはよう、つかさくん、楓真くん。お迎えご苦労さま。体調はもう大丈夫?」
「楓珠さん、昨晩は突然のお願いだったのにすみませんでした…ほんと、親として不甲斐なく…」
「気にしないで、歓迎会やりなって水嶋くんに言ったのは私だし。それにしてもお酒で潰れちゃうくらい飲んだのかな?しばらくは仕事中でのお酒の場が増えるだろうから、そこは気を付けようね」
「はい…」
優しく戒めてくれる楓珠さんの言葉を真摯に受け止め反省の意を示したくとも、いまだ子供たちが抱きついている状況に咄嗟に立ち上がれず、膝をついたままの体勢で頭を下げるしかない。釣られて楓莉もつくしもぺこりと頭を下げている光景にふふ、と笑う楓珠さんは頭を上げてと促すと僕が立ち上がれるよう双子を自分の方へ呼び寄せ引き受けてくださった。
身軽になった体ですぐに立ち上がろうとすると、いままでしゃがんでいた反動から一瞬視界が歪み、立ちくらみでくらっとしかけたところをすかさず楓真くんが受け止めてくれる。
「大丈夫ですか」
「ごめん、一瞬立ちくらみしただけ、大丈夫だよありがとう」
「まだ本調子じゃなさそうだね…楓真くん業務中もしっかり見ててあげなさい」
「もちろん」
大したことでは無いのに御門親子の間で僕は重病人のような扱いになりつつある状況に気後れしつつあると、楓珠さんの両手には双子の黄色い通園カバンがぶら下がっていることに気が付いた。
「楓珠さんカバン、いただきます。すみません持たせてしまっていて」
「いいよいいよ、洗濯と詰めるのはトヨさんがしてくれたからね。はい、楓真くんキミが持ちなさい」
「ん、ありがと」
手を伸ばす僕ではなく、楓真くんへ預けてしまう楓珠さんにもはや何も言えず、おずおずと手を引っ込めるのだった。
14
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
籠中の鳥と陽の差す国〜訳アリ王子の受難〜
むらくも
BL
氷の国アルブレアの第三王子グラキエは、太陽の国ネヴァルストの第五王子ラズリウの婚約者。
長い冬が明け、いよいよ二人はラズリウの祖国へ婚約の報告に向かう事になった。
初めて国外へ出るグラキエのテンションは最高潮。
しかし見知らぬ男に目をつけられ、不覚にも誘拐されてしまう。
そこに婚約者を探し回っていたラズリウが飛び込んできて──
……王への謁見どころじゃないんだが?
君は、必ず守るから。
無防備なおのぼりα王子×婚約者が心配なΩ王子の
ゆるあまオメガバース&ファンタジーBL
※「籠中の鳥と陽色の君〜訳アリ王子の婚約お試し期間〜」の続きのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる