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3【招待という名の呼び出し】
3-11暴君(1)
しおりを挟む仕事でもプライベートでも、楓珠さんと食事に行く際は楓珠さんが自ら見つけセレクトされたお店へ連れて行ってくださるのが毎度のことながら定番のながれ。今回もはずれなく満足な味にお腹も満たされ、13時前には会社へと戻っていた。
宣言通り瀧川くんを連れ出かけて行った楓珠さんは最後まで心配げに僕へ気を配ってくださり、申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいになりながら見送ると、僕と水嶋さんはそのまま楓真くんの意向で各自仕事を社長室へと持ち込み、そこで一柳代表の迎えが来るまで待機することとなった。
いつどのようにやって来るのかわからない状況での待機は無駄にソワソワと落ち着かず、読まなくてはならない書類の文章が全く頭に入ってこない。
早鐘のように逸る心臓に多少の気分の悪さを覚えながらも無理やり誤魔化し、手元の資料に集中するよう必死だった。
そんな状態でなんとか過ごし、時計の針がいよいよ14時に差し迫った頃――
その知らせは突然やってきた。
『失礼します、御門社長おみえでしょうか』
なんの前触れもなしに楓真くんの机に置かれた電話機から受付の内線が社長室内に鳴り響き、内心ビクッと驚きはするものの、長年身に染みついた秘書の癖から条件反射で副回線を押し次の瞬間には受話器を取っていた。
「はい、みえます」
『14時お約束の一柳ホールディングス様おみえになりました』
「ありがとうございます、社長には伝えますのでそのまま会議室へお通しください」
『承知致しました――』
あわよくば社長宛の来訪の内線だけで終わってくれと願った僕の淡い思いは、続く言葉に簡単に打ち砕かれてしまった。
『それと、橘さん宛に一柳代表の秘書様がおみえになっております』
「……承知致しました、すぐ向かうとお伝えください」
僕の言葉を最後に内線が切れたのを確認するとゆっくり受話器を置き、大きくひとつ息を吐き出した。そして、通話中終始心配そうに僕へ視線を向けてくれていた楓真くんへ「一柳ホールディングス様がおみえです」と告げた言葉は自分の想像以上に弱々しいものだった。
「つかささん、宗介さんは」
「一柳代表の秘書の方がみえた、とだけ伝えられました」
「……一旦俺も下まで行きます」
「!?みなさんをお待たせするのは――」
「大丈夫、先方も到着してすぐより準備時間必要でしょうし」
「でも……」
「お前ら何してんだ、さっさと行くぞ~」
いつまでも躊躇する僕の背中を押すように、一人さっさと扉の前まで移動していた水嶋さんに呼ばれる形で社長室を後にするのだった。
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