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2【子育て日記】

2-33 社交界の花(14)※

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 突然重なった唇は軽く触れ合うだけですぐ離れていくかと思われた僕の予想に反し、ほんの僅かな隙間をうまくこじ開け中にまで入って来る。

 どこかで楓真くんのスイッチを押してしまったらしい。

 ままならない息継ぎのなか必死に楓真くんに応えながら彼の肩をギュッと握るが、強く触れ合う度に反射的にビクッとゆれてしまう僕の腰を楓真くんはギュッと抱き寄せさらに密着する。
 鼻から抜けるような僕の声とお互いのものが混ざり合う水音だけがリビングを埋め尽くしていた。
 
 

 
 
「ん……」

 
 気付けば唇が熱く熱をもつくらいには長い時間触れ合っていた。
 どちらともなくそっと離れた二人の間を繋ぐ糸がぷつんっと途切れる。その瞬間をお互い無言で眺め、かと思えばすぐに再びゼロ距離に戻る。それの繰り返し。
 
 
 何度も角度を変え気持ちいい所ばかりを愛撫する楓真くんのキスに、キスひとつでこんなにも気持ちが昂るなんて…と少し戸惑いながらとっくに反応している下半身は誤魔化せない。しかも、後ろに回った楓真くんの手が背中を擦るだけでビクビクっと身体が強く反応してしまう。
 久しぶりの二人きりとはいえ、あまりに感度のよすぎる僕に楓真くんも思うところがあったのかそっと唇を離すと、動きを止めじっと顔を覗き込んでくる。
 楓真くんの瞳越しに、頬が上気しのぼせたような表情の自分の顔がハッキリ見えた。
 
 そんな僕の頬を優しく撫でながらふふ、と笑い出す楓真くんに、さっきの雰囲気はどこへやら、きょとん、としてしまう。
 
 
「……ふふ、やっぱりずっと思ってたんですけど」
「……ん?」
「つかささんが着てるシャツ、今のつかささんと相まって、とてもえっちでセクシーですね」
 
 
 前言撤回。
 彼はエッチな事を考えてました。
 
 
 横目で見える窓ガラスの反射越しに改めて自分の格好を眺めれば、ジャケットを脱いだシャツとスラックス姿で、ソファに座る楓真くんの膝に跨る姿が目に映る。
 それを僕が見ていることを知ってか、背面レース生地の背中に手を侵入させた楓真くんは脇腹から脇下へ撫で上げていく、その手の動きがレース越しに透けてしっかり窓ガラスに映っていた。
 
 
「ぁ…」
 
 
 脇下から伸びた親指がわざと胸の飾りを掠めていく。
 
 咄嗟に手で口を覆っても、一度漏れた声をもっと聞かせてとでも言うように、指は執拗にそこを弄り、しまいには二本の指でキュッと摘まれ「んぅ」と上がる声を我慢できなかった。
 
 
「つかささん、かわいい…」
「は、…っ、ぁ、そこばっか…や…」
 
 
 もう随分前から感じている、腹の奥底からとめどなく溢れる熱い蜜が狭い体内をとろっと伝い、じわぁと下着を濡らす感触。


 はぁ、と吐く息が熱い。


 自分でも自覚していた。
 触るまでもなく、自ら濡れ柔軟に入口を柔らかくしていつでもアルファのものを受け入れる体勢にするオメガの本能。それが、いま、発動している。
 

 
「ふ…まく……」
 

 
 トロンとした目で目の前にいる自分のアルファを見据え、誘惑する甘いフェロモンが馬鹿みたいにリビング中に溢れて止まらなかった。

 
 
 
 
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