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魔法少女
実録 パンドラの真実~3年目から見えてくる光
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日本がおかしくなったのは何時からだろう。
夜風に吹かれながら吾観利咲は考えた。
コンビニの帰りに、クソガキが魔物と対峙している世の中は普通じゃない。銃を振り回している自分も普通じゃない。
そんな世界になったのは恐らく3年前だった。
突如として日本の真上に開いた穴。青空の真ん中に出現した黒い穴に世間は騒然とした。夜になっても消えず、次の日も存在し続けた。
異常気象なのか、どこかの国の兵器攻撃なのか。様々な分野の有識者がワイドショーをにぎわせた。
領土の問題から日本が国が動かなければならず、航空自衛隊と海上自衛隊を調査を開始するも、存在が解明されることは無かった。
だが、わかった事もあった。1つは穴はオゾン層の下に穴は存在しているという事。そして、戦闘機で上から覗いてみても、下と同じように黒い穴しかない事。最後に、その穴に入ると帰ってこない事がわかった。ちなみに、最後の帰ってきていない人間というのは、自衛隊員では無く、民間の宇宙人と友好を築くのが目的の団体だった。彼らはチャーター機を使い、自衛隊の制止を振り切り穴へ入っていったのだった。
そして、何もないまま1ヶ月が経ち、世界も注目を失いかけていた時に変化が起こった。
いつもの様に海上から監視していた戦艦から本部に通信があった。
『対象から、何かが落ちてきた』
消えた民間団体の飛行機なのか、それとも別の何かなのか。確認できなかったことから、大規模な捜索が始まった。航空、海上それぞれでの捜索の結果、海に浮いていたのは見たことも無い生物。ドロリとしていて翼のある、生まれる直前の鳥に近かい生物だった。
その数時間後、本格的な異常が始まった。
穴から次々と『何か』が落ちてきたのである。形も大きさも様々で、真下で観測していた船は落ちてきた何かに飲みこまれた。
艦長からの最後の通信は、「唄が聞こえる」だった。
地上での観測隊も同時刻におぞましいものを見ていた。
穴からぶら下がるように生えたのは吸盤のある脚。まるで巨大なタコが住んでいるかのような光景だったが、その脚をすり抜ける形で飛行するモノもいた。
翼、羽。それらを羽ばたかせたりしながら四方へ去っていくのを双眼鏡や望遠鏡で確認し本部に報告した。
困ったのが本部だ。隊員から上がって来た報告によれば、巨大なタコの脚・翼の生えた馬・小さい人・人魚。などを見たと言われたのだから驚くしかない。
そして、それらは日本だけでは無く世界全体に広がっていた。
日本の地にやって来た無数の魔物。物珍し気に辺りを見回す者。無関心に佇む者。人間を襲い殺す者。
殺される人を見て、パニックに陥っている状況でも、対処しようとする人々はいる。自衛隊と警察が何とか食い止めようと武力を用いて戦った。
魔物を殺せ。そんなスローガンまがいな目的を持って、見境なく魔物狩りをする民間人も現れ、一種の狂った流行にもなった。
当然各国でも同じ流れになり、互いの死体の山を築いたが、3ヶ月もすると人間と魔物の戦争は一応の収束を見せた。
その原因は、人も魔物も等しく踏みつぶせる存在が現れた事だった。
巨大な羽の生えたトカゲ、いわゆるドラゴンが穴から這い出て日本に居座った。その体躯は山ほどの大きさがあり、降り立った地面は地形が変わるほどだった。
等しく踏みつぶされ、炎で焼かれた事で殺し合いなどしている場合では無いと、誰もが思い知った。
日本に居るだけならいいが、自国に来るかもしれないドラゴンを殺すため、大国が用意した最終兵器は核ミサイル。
事もあろうに、それを躊躇い無く日本に発射した。
発射すれば解決だと思われたが、それは効果を発揮しないまま終わる。
何故なら、自身に向かってきたミサイルをドラゴンは弾頭から丸呑みにしたからだ。まるで魚を与えられた鳥の様に綺麗に飲みこんだ。
ミサイルは腹で爆発したのかも分からない。ドラゴンはベロリと舌で口周りを舐めると満足そうに目を細めた。
その後、何故か眠りに着いたドラゴンを起こそうとするバカは流石におらず、戦争というバカ騒ぎが消滅した。
絶対的な強者を頂点に訪れた平和。
魔物を降らせる穴は『パンドラ』と命名され、観測対象となっている。パンドラは神話と同じように絶望を振りまいたが、同時に小さな希望も与えた。
パンドラから出て来た者の中には、平和を望む者がおり、人間に味方してくれている。特別な能力を与え、近代兵器も効かないような魔物とも対等に戦える戦力をくれた。
それは『魔法』と言われたり、『超能力』と言われたりしている。
「くだらね」
回想として思い出てきたのは、以前テレビ番組でやっていた『実録 パンドラの真実~3年目から見えてくる光』を思い返していたが、実にくだらなかった。
「何で最後まで観たんだろ」
テレビの物語は美談に次ぐ美談。最後のナレーションは「この真実から見えてくるものはなんなのだろうか?」という曖昧な終わりだった。
咲はもう一度、大きくため息を吐く。
「世界の事情なんかどうでもいい」
パンドラの出現による始終の事件は大きく分けて2つ。世界情勢に絡むような事件と、民間規模の小競り合いだ。
大半が個人での事件で、強盗・傷害・殺人など。警察が介入しようと、司法が動こうと逮捕したことも無ければ、逮捕できるのかもわからない。そして、確実に立件できるわけでもない。
多くは無き寝入りか、自衛を考え武器を手に取った。
くだらない回想で暇をつぶしながら、繁華街から少し外れた地域の3階建てのビルに着いた。
夜風に吹かれながら吾観利咲は考えた。
コンビニの帰りに、クソガキが魔物と対峙している世の中は普通じゃない。銃を振り回している自分も普通じゃない。
そんな世界になったのは恐らく3年前だった。
突如として日本の真上に開いた穴。青空の真ん中に出現した黒い穴に世間は騒然とした。夜になっても消えず、次の日も存在し続けた。
異常気象なのか、どこかの国の兵器攻撃なのか。様々な分野の有識者がワイドショーをにぎわせた。
領土の問題から日本が国が動かなければならず、航空自衛隊と海上自衛隊を調査を開始するも、存在が解明されることは無かった。
だが、わかった事もあった。1つは穴はオゾン層の下に穴は存在しているという事。そして、戦闘機で上から覗いてみても、下と同じように黒い穴しかない事。最後に、その穴に入ると帰ってこない事がわかった。ちなみに、最後の帰ってきていない人間というのは、自衛隊員では無く、民間の宇宙人と友好を築くのが目的の団体だった。彼らはチャーター機を使い、自衛隊の制止を振り切り穴へ入っていったのだった。
そして、何もないまま1ヶ月が経ち、世界も注目を失いかけていた時に変化が起こった。
いつもの様に海上から監視していた戦艦から本部に通信があった。
『対象から、何かが落ちてきた』
消えた民間団体の飛行機なのか、それとも別の何かなのか。確認できなかったことから、大規模な捜索が始まった。航空、海上それぞれでの捜索の結果、海に浮いていたのは見たことも無い生物。ドロリとしていて翼のある、生まれる直前の鳥に近かい生物だった。
その数時間後、本格的な異常が始まった。
穴から次々と『何か』が落ちてきたのである。形も大きさも様々で、真下で観測していた船は落ちてきた何かに飲みこまれた。
艦長からの最後の通信は、「唄が聞こえる」だった。
地上での観測隊も同時刻におぞましいものを見ていた。
穴からぶら下がるように生えたのは吸盤のある脚。まるで巨大なタコが住んでいるかのような光景だったが、その脚をすり抜ける形で飛行するモノもいた。
翼、羽。それらを羽ばたかせたりしながら四方へ去っていくのを双眼鏡や望遠鏡で確認し本部に報告した。
困ったのが本部だ。隊員から上がって来た報告によれば、巨大なタコの脚・翼の生えた馬・小さい人・人魚。などを見たと言われたのだから驚くしかない。
そして、それらは日本だけでは無く世界全体に広がっていた。
日本の地にやって来た無数の魔物。物珍し気に辺りを見回す者。無関心に佇む者。人間を襲い殺す者。
殺される人を見て、パニックに陥っている状況でも、対処しようとする人々はいる。自衛隊と警察が何とか食い止めようと武力を用いて戦った。
魔物を殺せ。そんなスローガンまがいな目的を持って、見境なく魔物狩りをする民間人も現れ、一種の狂った流行にもなった。
当然各国でも同じ流れになり、互いの死体の山を築いたが、3ヶ月もすると人間と魔物の戦争は一応の収束を見せた。
その原因は、人も魔物も等しく踏みつぶせる存在が現れた事だった。
巨大な羽の生えたトカゲ、いわゆるドラゴンが穴から這い出て日本に居座った。その体躯は山ほどの大きさがあり、降り立った地面は地形が変わるほどだった。
等しく踏みつぶされ、炎で焼かれた事で殺し合いなどしている場合では無いと、誰もが思い知った。
日本に居るだけならいいが、自国に来るかもしれないドラゴンを殺すため、大国が用意した最終兵器は核ミサイル。
事もあろうに、それを躊躇い無く日本に発射した。
発射すれば解決だと思われたが、それは効果を発揮しないまま終わる。
何故なら、自身に向かってきたミサイルをドラゴンは弾頭から丸呑みにしたからだ。まるで魚を与えられた鳥の様に綺麗に飲みこんだ。
ミサイルは腹で爆発したのかも分からない。ドラゴンはベロリと舌で口周りを舐めると満足そうに目を細めた。
その後、何故か眠りに着いたドラゴンを起こそうとするバカは流石におらず、戦争というバカ騒ぎが消滅した。
絶対的な強者を頂点に訪れた平和。
魔物を降らせる穴は『パンドラ』と命名され、観測対象となっている。パンドラは神話と同じように絶望を振りまいたが、同時に小さな希望も与えた。
パンドラから出て来た者の中には、平和を望む者がおり、人間に味方してくれている。特別な能力を与え、近代兵器も効かないような魔物とも対等に戦える戦力をくれた。
それは『魔法』と言われたり、『超能力』と言われたりしている。
「くだらね」
回想として思い出てきたのは、以前テレビ番組でやっていた『実録 パンドラの真実~3年目から見えてくる光』を思い返していたが、実にくだらなかった。
「何で最後まで観たんだろ」
テレビの物語は美談に次ぐ美談。最後のナレーションは「この真実から見えてくるものはなんなのだろうか?」という曖昧な終わりだった。
咲はもう一度、大きくため息を吐く。
「世界の事情なんかどうでもいい」
パンドラの出現による始終の事件は大きく分けて2つ。世界情勢に絡むような事件と、民間規模の小競り合いだ。
大半が個人での事件で、強盗・傷害・殺人など。警察が介入しようと、司法が動こうと逮捕したことも無ければ、逮捕できるのかもわからない。そして、確実に立件できるわけでもない。
多くは無き寝入りか、自衛を考え武器を手に取った。
くだらない回想で暇をつぶしながら、繁華街から少し外れた地域の3階建てのビルに着いた。
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