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魔法少女
聡里と亜紀4
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しかし、幸運にも聡里は逮捕を免れた。屋根裏に逃げ、息を殺して動かなかった事で、警察の目をかいくぐれた。数時間動かずにいると、警察の人数が減った。全ての信者を逮捕したことが決着となったからだ。聡里の事を告げる信者もいたが、全員が薬物使用者。どれが本当の話なのかは時間が掛かる。警察管を総動員しても見つからないのであれば、嘘という事になった。
施設から命からがら逃げ果せて、街中に潜んだ。
(これからどうしよう)
出頭するか逃げるか。今出頭すればどこかに保護されて、平和に薬を使えるだろうか。今日は施設に帰って考えよう。施設はないんだ。
薬の影響で、まともに考えがまとまらない。その彼女の耳に、街頭に設置されている大型テレビの声が聞こえた。
女性の声で淡々と原稿を読んでいる。
『逮捕された信者とみられる男女は30人以上にも上り、その殆どが、禁止薬物を常時摂取していたとみられます。そして――』
そこでアナウンサーが声を止めた。男性が持ってきた紙に目を通し、若干の興奮を持って再度喋り始めた。
『速報です。たった今、拘置所内で信者とみられる全員が死亡しました。繰り返します。たった今、拘置所内で信者とみられる全員が死亡しました』
それを聞いた聡里に感情は無かった。なぜなら予見できていたから。教団の教えとして【政府の人間に、心理を知られてはいけない】というのがあった。薬を使ったコミュニケーション術。それを知られてはいけないと教えられていたから。
本来であれば、1人2人の信者が捕まった時ようの防御策なのだろうが、今回は聡里以外の全員だった。
(お父さん、お母さん)
両親の死に際も解った。後は自分だけ。薬物のために金を稼いで生きるか、野垂れ死ぬか。
考えた末に行きついた答えは、過去を捨て、薬物を断って生きる事だった。
今の自分は目立ちすぎる。厚生施設に行けば身元が洗われるので駄目。何処にも頼れない状況で選んだのは、自力での解決だった。
廃ビルに身を潜め、薬を断ってから9時間以上。襲い来る幻覚に悶絶していた。自分が叫んでいるのか、幻聴なのかもわからない。太陽が沈んだと思えば、次の瞬間には紫色の太陽が昇って来た。
自分が何を見ているのかも判らなくなり始めて3日目。ようやく幻覚と幻聴が姿を消した。
ボロボロになりながらも立ち上がる。手足には、自分で行った無数の引っ掻き傷があり、髪の毛もボサボサだった。
トイレに行き、自分の顔を見た。
「ヒドイなぁ」
ある程度の身だしなみを整えて外に出る。久しぶりに外の空気で肺を満たした。これからは1人で強く生きよう。その決意が揺らぐことは無かった。
人間、1つの事を成し遂げると、立て続けに良い事が起こるらしく、1ヶ月もしないうちに生きていける場所が見つかったのだった。
「助けてあげるからね」
過去の思い出から現実に帰って来る。
ツライ事は理解している。楽しいはずが無い。頭を抱え涙を流している少女に向かい、歩を進める。
足元に居る虫を踏みつぶし、真横に立つ毛むくじゃらの何かを無視する。少し離れた所では人形が手を振っていた。
少女の元へたどり着いた聡里は優しく微笑む。
「ちょ~っと痛いけど、我慢してねぇ」
そう言うと、亜紀の腹部めがけて右の拳を叩き込んだ。
強制的に意識を断ち切られた少女を受け止める。
「はぁ、幸せ」
靄も霧散し、幻覚も崩れていく。名残惜しそうに聡里たちを見ている崩れかけの人形たち。
全てが消え去り、体育館裏には聡里と亜紀だけになった。
施設から命からがら逃げ果せて、街中に潜んだ。
(これからどうしよう)
出頭するか逃げるか。今出頭すればどこかに保護されて、平和に薬を使えるだろうか。今日は施設に帰って考えよう。施設はないんだ。
薬の影響で、まともに考えがまとまらない。その彼女の耳に、街頭に設置されている大型テレビの声が聞こえた。
女性の声で淡々と原稿を読んでいる。
『逮捕された信者とみられる男女は30人以上にも上り、その殆どが、禁止薬物を常時摂取していたとみられます。そして――』
そこでアナウンサーが声を止めた。男性が持ってきた紙に目を通し、若干の興奮を持って再度喋り始めた。
『速報です。たった今、拘置所内で信者とみられる全員が死亡しました。繰り返します。たった今、拘置所内で信者とみられる全員が死亡しました』
それを聞いた聡里に感情は無かった。なぜなら予見できていたから。教団の教えとして【政府の人間に、心理を知られてはいけない】というのがあった。薬を使ったコミュニケーション術。それを知られてはいけないと教えられていたから。
本来であれば、1人2人の信者が捕まった時ようの防御策なのだろうが、今回は聡里以外の全員だった。
(お父さん、お母さん)
両親の死に際も解った。後は自分だけ。薬物のために金を稼いで生きるか、野垂れ死ぬか。
考えた末に行きついた答えは、過去を捨て、薬物を断って生きる事だった。
今の自分は目立ちすぎる。厚生施設に行けば身元が洗われるので駄目。何処にも頼れない状況で選んだのは、自力での解決だった。
廃ビルに身を潜め、薬を断ってから9時間以上。襲い来る幻覚に悶絶していた。自分が叫んでいるのか、幻聴なのかもわからない。太陽が沈んだと思えば、次の瞬間には紫色の太陽が昇って来た。
自分が何を見ているのかも判らなくなり始めて3日目。ようやく幻覚と幻聴が姿を消した。
ボロボロになりながらも立ち上がる。手足には、自分で行った無数の引っ掻き傷があり、髪の毛もボサボサだった。
トイレに行き、自分の顔を見た。
「ヒドイなぁ」
ある程度の身だしなみを整えて外に出る。久しぶりに外の空気で肺を満たした。これからは1人で強く生きよう。その決意が揺らぐことは無かった。
人間、1つの事を成し遂げると、立て続けに良い事が起こるらしく、1ヶ月もしないうちに生きていける場所が見つかったのだった。
「助けてあげるからね」
過去の思い出から現実に帰って来る。
ツライ事は理解している。楽しいはずが無い。頭を抱え涙を流している少女に向かい、歩を進める。
足元に居る虫を踏みつぶし、真横に立つ毛むくじゃらの何かを無視する。少し離れた所では人形が手を振っていた。
少女の元へたどり着いた聡里は優しく微笑む。
「ちょ~っと痛いけど、我慢してねぇ」
そう言うと、亜紀の腹部めがけて右の拳を叩き込んだ。
強制的に意識を断ち切られた少女を受け止める。
「はぁ、幸せ」
靄も霧散し、幻覚も崩れていく。名残惜しそうに聡里たちを見ている崩れかけの人形たち。
全てが消え去り、体育館裏には聡里と亜紀だけになった。
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