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愛され方も、愛し方も知らない
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しおりを挟む「……」
見ればわかった。彼女を好意の目で見ているのは明らかだった。
「よーへい、…あれ、好きなの?」
その言葉に、彼は言葉を濁した。
けど、明らかだった。
明らかだった。
明らかだった。
「…そっか」
へぇとどうでも良さげに呟いた。
内心滅多刺しだった。好きな人。洋平に、好きな女。俺以外に。俺がずっと洋平の傍にいるはずだったのに。
「でも、あいつ好きな男いるみたいだよ」
視線の先には、女が少し照れたような顔で話す男。
幼なじみらしい。よくある話だ。他の男が難しいから、手近な男で恋愛してしまおうという。
どう考えてもあんな男より洋平の方が格好いいから、負けるはずがないのだ。ただ、今は洋平とあの女の接点はないというだけのこと。
――――――――――
…だから、それを作ってやろうと思った。
「今からこの場所で待ち合わせね」
一方的に電話を切る。
勿論、電話相手は洋平だ。突然の呼び出しだが、きっと彼は来るだろう。そういう男なのだ。
含み笑いをし、すぐ傍の歩道を歩いている女の口を後ろから塞ぐ。
おさえた掌に響く叫び声。
暴れ、もがく女を組み敷き、持っていたナイフで服のボタンをぶちぶちと裂く。
見たくもない露わにした肌を目前に、今何をしているのだろうとぼんやり思った。
…と、
「やめろ…!!」
怒りと焦りを滲ませた声。
ガツッ!!後頭部を殴られた。星が飛ぶ。
(…ああ、やっと来たか)
待ちわびていた存在に安堵し、意識を飛ばした。
「……お前、なんで…」
数秒後、覚醒した俺を見る、洋平の目。その腕にいるがたがたと震える彼女。
信じられないものを見る目。怪物。ごみ。異物。
「あーあ、一発ヤるつもりだったのに」
けらけら笑えば、一層彼女を守るように抱くその手。
羨ましい。羨ましい。羨ましくてたまらない。
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