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嘘
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しおりを挟む――休日。カフェ。
「で、なんで俺を呼び出したんだ」
「もうすぐアイツの誕生日だし、なんか買ってやろーかなって」
「…そんなんで呼ぶなよ」
「急用っていうから何かと思えば…」と文句を言う友人に、最近翔とあったあれやこれやを惚気る。唯月はなんだかんだ優しいし面倒見がいいから怒ったりせず聞いてくれる。
「世間体なんか気にせず彼女と別れればいいと思わねー?」
「どーだろーね」
コーヒーを飲みつつ、頬杖をついて適当に返事をする逸樹は心底どうでも良さそうだった。けど、面倒臭そうに、でも時々呆れて笑うその姿に惚気心は充分に満たされた。前ネックレス貰ったし、暇さえあれば俺を求めてくる翔によって無敵感情を得た俺の気分は更に上昇していく。
「逸樹もさ、モテるんだから早く彼女作れよ」
「興味ないし面倒くさい」
「はは、もったいねー」
男同士でも海外なら結婚もできるんだよなー。いっそのこと、移住でもしちゃうか。想像してうへへとだらしなく顔を緩ませている と、
「翔はいいよなー。もうすぐ可愛い彼女と結婚するんだろ?」
今妄想真っ只中の単語が聞こえてきて、ピン、とセンサーが鳴った。
へー、アイツと同じ名前じゃん。一体どんな奴が結婚の話とかしてんだろー。と、野次馬気分でそっちに目を向け て
(…――え、)
「まぁな」
そう、返事をしているのは、見たことのある横顔。…というよりは、…さっきまで考えて、考えて、想像していた、まさにその人が、
「もう我慢の限界だったからさ、結婚したらやっと由香を抱けるよ」
翔の、口から続けられた言葉に、血の気が引いた。
「…――は……、?」
零れた声は、唖然としている。
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