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第六話『愛歌VS詩織!? 試されるハーツ・ラバーの絆!』
その9 彼の話
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★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第六話『愛歌VS詩織!? 試されるハーツ・ラバーの絆!』
その9 彼の話
teller:芹沢 昴
オレ――芹沢昴は、昔から友達の作り方が良くわからなかった。
人見知りが激しくて、自分の考えを他人に伝えることが下手で。
自然と口数が少なくなって、『何を考えているか良くわからない』としょっちゅう言われた。
おまけに性格は暗いし、存在感も薄い。
自分から他人に声をかける勇気がある筈もなく、必然的に交友関係は狭苦しかった。
子どもの頃からサッカーが好きで、一応地域のクラブには入っていたけど、そこでも周りと打ち解けられなくて浮いてしまっていた。
小学校を卒業して中学に上がる時。
特に中学生活に期待はしていなかった。
サッカーは続けるつもりだったけど、頑張るつもりだったけど。
親しい友達ができる気はしなかったし、今まで通りの単調な日々が続くんだとばかり思っていた。
そんなオレが変わりたいと願うようになったきっかけは、中学一年生の四月、校外学習の日。
その日は朝から体調が悪かったけど、中学最初の大きな学校行事をいきなり休んではますます孤立すると思ったから、無理をして参加した。
でも、それが更なるミスを呼んだ。
体調不良に加えて、ひどいバス酔いに襲われた。
気持ち悪くて、頭がふらついて、今にも吐きそうで。
でも、ここで嘔吐なんてしたら孤立なんてものじゃ済まされない。
イジメ、なんてことにも発展するかもしれない。
だから、込み上げる吐き気を必死に堪えていたら。
「芹沢くん、これ、飲んで」
ミネラルウォーターが入ったペットボトルと、酔い止めであろう錠剤が、隣の席の女子から差し出された。
オレがぽかんとしていると、その子は優しく笑った。
「大丈夫だから、ね」
差し出された錠剤を受け取って、水と共に喉の奥に流し込んだ。
喉が潤った影響か、少しだけ気分が良くなった気がした。
「……ありがとう……」
無口なオレでも、必要最低限の礼儀は心得ている。
だからお礼を言ったのだけれど、その子は緩く首を横に振るだけだった。
「気にしないで。バスが着いたら先生に言って少し離れた所で休みましょう」
その子の顔を見ようとして、すぐにオレは目を逸らした。
何故だか、その子を見ていたらぎゅっと胸が苦しくなるような気がしたから。
名前は確か、河本詩織。
クラスでは、委員長を務めている。
凄いな、とは思っていた。
クラスを纏める仕事なんて、自分には絶対できないから。
バスが目的地に着いた後、河本は担任の先生に事情を話してオレを木陰のベンチに連れて行ってくれた。
まだ気持ち悪くてくらくらしているオレの傍に、河本はずっといてくれた。
何度も背中を擦ってくれた。
吐きそうになっているオレを、決して気持ち悪い物を見るような目で見ることはしなかった。
ただただ、穏やかな眼差しを向けてくれた。
何とか校外学習を追えて帰宅した頃、気付けばオレは河本のことばかり考えていた。
――どうしたら、オレもあの子を助けられるだろう。
いつもハキハキとしていて真面目でしっかりした河本。
そんな河本は、オレなんて必要としないかもしれない。
それでも何か、どこかで力になりたかった。
河本を、全身全霊で支えたかった。
河本はきっと、校外学習のことなんて覚えてない。
あの子は当たり前のように、平等に誰かに優しくできる女の子だから。
でも、あれはオレにとっては何よりも特別な思い出で。
あの日から、河本を見る度に、声を聴く度に動悸が激しくなった。
気付けば河本のことを目で追いかけていた。
会話なんて、数える程しかしたことがない。
それでも、オレは河本のことが気になって気になって仕方がなかった。
いつからか河本の、オレへの態度がおかしくなった。
他の誰にも見せないような顔で、女の子の顔でオレを見るようになった。
なんて、オレの自惚れかもしれない。
オレには河本に好かれる理由がないから。
でも、絶対に嫌われたくはなかった。
河本を助けられる男になりたいと思った。
いつまでも暗くて地味なだけの男じゃ駄目だと思った。
河本に相応しくなりたかった。
つまり、つまりは。
あの日から、オレは河本のことが――。
第六話『愛歌VS詩織!? 試されるハーツ・ラバーの絆!』
その9 彼の話
teller:芹沢 昴
オレ――芹沢昴は、昔から友達の作り方が良くわからなかった。
人見知りが激しくて、自分の考えを他人に伝えることが下手で。
自然と口数が少なくなって、『何を考えているか良くわからない』としょっちゅう言われた。
おまけに性格は暗いし、存在感も薄い。
自分から他人に声をかける勇気がある筈もなく、必然的に交友関係は狭苦しかった。
子どもの頃からサッカーが好きで、一応地域のクラブには入っていたけど、そこでも周りと打ち解けられなくて浮いてしまっていた。
小学校を卒業して中学に上がる時。
特に中学生活に期待はしていなかった。
サッカーは続けるつもりだったけど、頑張るつもりだったけど。
親しい友達ができる気はしなかったし、今まで通りの単調な日々が続くんだとばかり思っていた。
そんなオレが変わりたいと願うようになったきっかけは、中学一年生の四月、校外学習の日。
その日は朝から体調が悪かったけど、中学最初の大きな学校行事をいきなり休んではますます孤立すると思ったから、無理をして参加した。
でも、それが更なるミスを呼んだ。
体調不良に加えて、ひどいバス酔いに襲われた。
気持ち悪くて、頭がふらついて、今にも吐きそうで。
でも、ここで嘔吐なんてしたら孤立なんてものじゃ済まされない。
イジメ、なんてことにも発展するかもしれない。
だから、込み上げる吐き気を必死に堪えていたら。
「芹沢くん、これ、飲んで」
ミネラルウォーターが入ったペットボトルと、酔い止めであろう錠剤が、隣の席の女子から差し出された。
オレがぽかんとしていると、その子は優しく笑った。
「大丈夫だから、ね」
差し出された錠剤を受け取って、水と共に喉の奥に流し込んだ。
喉が潤った影響か、少しだけ気分が良くなった気がした。
「……ありがとう……」
無口なオレでも、必要最低限の礼儀は心得ている。
だからお礼を言ったのだけれど、その子は緩く首を横に振るだけだった。
「気にしないで。バスが着いたら先生に言って少し離れた所で休みましょう」
その子の顔を見ようとして、すぐにオレは目を逸らした。
何故だか、その子を見ていたらぎゅっと胸が苦しくなるような気がしたから。
名前は確か、河本詩織。
クラスでは、委員長を務めている。
凄いな、とは思っていた。
クラスを纏める仕事なんて、自分には絶対できないから。
バスが目的地に着いた後、河本は担任の先生に事情を話してオレを木陰のベンチに連れて行ってくれた。
まだ気持ち悪くてくらくらしているオレの傍に、河本はずっといてくれた。
何度も背中を擦ってくれた。
吐きそうになっているオレを、決して気持ち悪い物を見るような目で見ることはしなかった。
ただただ、穏やかな眼差しを向けてくれた。
何とか校外学習を追えて帰宅した頃、気付けばオレは河本のことばかり考えていた。
――どうしたら、オレもあの子を助けられるだろう。
いつもハキハキとしていて真面目でしっかりした河本。
そんな河本は、オレなんて必要としないかもしれない。
それでも何か、どこかで力になりたかった。
河本を、全身全霊で支えたかった。
河本はきっと、校外学習のことなんて覚えてない。
あの子は当たり前のように、平等に誰かに優しくできる女の子だから。
でも、あれはオレにとっては何よりも特別な思い出で。
あの日から、河本を見る度に、声を聴く度に動悸が激しくなった。
気付けば河本のことを目で追いかけていた。
会話なんて、数える程しかしたことがない。
それでも、オレは河本のことが気になって気になって仕方がなかった。
いつからか河本の、オレへの態度がおかしくなった。
他の誰にも見せないような顔で、女の子の顔でオレを見るようになった。
なんて、オレの自惚れかもしれない。
オレには河本に好かれる理由がないから。
でも、絶対に嫌われたくはなかった。
河本を助けられる男になりたいと思った。
いつまでも暗くて地味なだけの男じゃ駄目だと思った。
河本に相応しくなりたかった。
つまり、つまりは。
あの日から、オレは河本のことが――。
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