88 / 110
第九話『愛歌トキメキ! 千雪にアコガレ熱視線!』
その5 騙す
しおりを挟む
★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第九話『愛歌トキメキ! 千雪にアコガレ熱視線!』
その5 騙す
teller:小枝 こずえ
気がつけば、もう5月。
本来ならお父さんとお母さんが料理修行から帰って来てもいい頃の筈だけど、どうも修行が長引いているらしい。
生活費はまだ残してもらえているけど……二人とも、元気にしてるのかな。
いつも明るく前向きなお父さんとお母さんだけど、さすがに心配になってしまう。
「ねえ、こずえちゃん」
唐突に名前を呼ばれて振り向くと、スーパーの袋を片手に提げた千雪さんが立ち止まっていた。
辺りが夕焼けに染まる中、千雪さんの長い黒髪が靡く。
その様が、何とも綺麗だと思った。
千雪さんは、私の夕ご飯の買い出しの手伝いをしてくれている。
何度も遠慮したのだけれど、『食べさせてもらってる身だから』と千雪さんも頑なに譲らず。
こうして、二人でスーパーの袋を分担して持ちながら家路に着いている。
そんな千雪さんは、何故か今はひどく険しい表情をしていて。
千雪さんが、ゆっくりと口を開く。
「愛歌ちゃんってどんな子?」
愛歌ちゃん。
予想外の言葉に目を丸くしてしまう。
千雪さんと愛歌ちゃんの間に、私が知らない内に何かあったのだろうか。
不思議に思う気持ちはあったけれど、とりあえず疑問に答えようと、私も口を開く。
「愛歌ちゃんは……凄く明るくて、人懐っこくて……とっても可愛らしくて華やかな女の子です……」
頭に浮かんだままの感想を伝えた。
それでも千雪さんの表情は難しいままで、私はどう補足説明を入れたものか思案してから、おずおずとまた声を発した。
「あと……あの、愛歌ちゃんはアイドルを目指していて……私はその夢を、凄く応援しています……」
「……アイドル、かあ」
ぽつりと呟いて、千雪さんは一瞬夕空を仰ぐ。
それから千雪さんは、道端に落ちていた小石をころん、ころんと蹴りながら歩き始めた。
「やっぱり私とは、何もかもが違うや」
「違う……?」
「愛歌ちゃんがさ、私に憧れてるって言ってくれたんだ」
心なしか、千雪さんの声のトーンがいつもより落ちていた。
千雪さんが蹴った小石がまた、道を転がる。
「でも私、憧れられる資格なんてない。モデルなんてやりたくもなかったし、そんな姿を憧れられても困るっていうか……申し訳ないんだ。……私、愛歌ちゃんの他にも沢山の女の子騙してきたのかなあ……」
「だ……騙してなんかいません……っ」
思わず、少し大きな声を上げてしまった。
千雪さんもさすがにびっくりしたのか、足を止め、目を丸くして私を見ている。
途端に大声を出したことが恥ずかしくなったけど、私はそれでも千雪さんに伝えたくて、途切れ途切れの口調でも、言った。
「千雪さんが望んだ形じゃないとは思うんですけど……千雪さんが女の子たちに夢を与えたのは事実だから……それは……千雪さんにとって誇っていい部分だと……私は思います……」
そこまで言って、はっとする。
私、何を言ってるんだろう。
千雪さんの苦しみも、時折見せる彼女の影も、何一つ理解していないくせに。
「ご、ごめんなさい……偉そうに……」
「……ううん」
だけど、焦る私とは対照的に、千雪さんは穏やかに微笑んでいて。
「……ありがと」
私の好きな笑い方をして、私を見つめてくれた。
それがやっぱり、泣きそうなくらいに綺麗だった。
第九話『愛歌トキメキ! 千雪にアコガレ熱視線!』
その5 騙す
teller:小枝 こずえ
気がつけば、もう5月。
本来ならお父さんとお母さんが料理修行から帰って来てもいい頃の筈だけど、どうも修行が長引いているらしい。
生活費はまだ残してもらえているけど……二人とも、元気にしてるのかな。
いつも明るく前向きなお父さんとお母さんだけど、さすがに心配になってしまう。
「ねえ、こずえちゃん」
唐突に名前を呼ばれて振り向くと、スーパーの袋を片手に提げた千雪さんが立ち止まっていた。
辺りが夕焼けに染まる中、千雪さんの長い黒髪が靡く。
その様が、何とも綺麗だと思った。
千雪さんは、私の夕ご飯の買い出しの手伝いをしてくれている。
何度も遠慮したのだけれど、『食べさせてもらってる身だから』と千雪さんも頑なに譲らず。
こうして、二人でスーパーの袋を分担して持ちながら家路に着いている。
そんな千雪さんは、何故か今はひどく険しい表情をしていて。
千雪さんが、ゆっくりと口を開く。
「愛歌ちゃんってどんな子?」
愛歌ちゃん。
予想外の言葉に目を丸くしてしまう。
千雪さんと愛歌ちゃんの間に、私が知らない内に何かあったのだろうか。
不思議に思う気持ちはあったけれど、とりあえず疑問に答えようと、私も口を開く。
「愛歌ちゃんは……凄く明るくて、人懐っこくて……とっても可愛らしくて華やかな女の子です……」
頭に浮かんだままの感想を伝えた。
それでも千雪さんの表情は難しいままで、私はどう補足説明を入れたものか思案してから、おずおずとまた声を発した。
「あと……あの、愛歌ちゃんはアイドルを目指していて……私はその夢を、凄く応援しています……」
「……アイドル、かあ」
ぽつりと呟いて、千雪さんは一瞬夕空を仰ぐ。
それから千雪さんは、道端に落ちていた小石をころん、ころんと蹴りながら歩き始めた。
「やっぱり私とは、何もかもが違うや」
「違う……?」
「愛歌ちゃんがさ、私に憧れてるって言ってくれたんだ」
心なしか、千雪さんの声のトーンがいつもより落ちていた。
千雪さんが蹴った小石がまた、道を転がる。
「でも私、憧れられる資格なんてない。モデルなんてやりたくもなかったし、そんな姿を憧れられても困るっていうか……申し訳ないんだ。……私、愛歌ちゃんの他にも沢山の女の子騙してきたのかなあ……」
「だ……騙してなんかいません……っ」
思わず、少し大きな声を上げてしまった。
千雪さんもさすがにびっくりしたのか、足を止め、目を丸くして私を見ている。
途端に大声を出したことが恥ずかしくなったけど、私はそれでも千雪さんに伝えたくて、途切れ途切れの口調でも、言った。
「千雪さんが望んだ形じゃないとは思うんですけど……千雪さんが女の子たちに夢を与えたのは事実だから……それは……千雪さんにとって誇っていい部分だと……私は思います……」
そこまで言って、はっとする。
私、何を言ってるんだろう。
千雪さんの苦しみも、時折見せる彼女の影も、何一つ理解していないくせに。
「ご、ごめんなさい……偉そうに……」
「……ううん」
だけど、焦る私とは対照的に、千雪さんは穏やかに微笑んでいて。
「……ありがと」
私の好きな笑い方をして、私を見つめてくれた。
それがやっぱり、泣きそうなくらいに綺麗だった。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる