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第二話『最愛の人よ』
その1 グラビティ・シスコン
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★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第二話『最愛のひとよ』その1 グラビティ・シスコン
死ねばいいのに。
……死ねばいいのに?
未だかつて幸運にも俺の人生で言われたことのない一言に、俺は愕然としてその場に立ち尽くすことしかできなかった。
クラスメイトの、牟田美冬に突如として言われた言葉。
今まであまり交流がなかった上に、牟田弟はてっきり大人しいやつだと思っていたから、正直かなり驚いたし、とてつもなくショックでもあった。
何だ?
俺は、何をした?
何か、牟田弟の気に障ることをしたのか!?
どうしよう、全く身に覚えがない。
俺の中二病っぷりがいよいよ鬱陶しくなったのか?
いやしかし、だからと言って殺意まで……。
俺が悶々と考えていると、背後からぽん、と肩を叩かれた。
ぐるぐるの思考のまま振り向くと、気遣わしげにこちらを見下ろす志久次郎が立っていた。
「神室? どうした? 水飲み場に行くんじゃなかったのか?」
志久は牟田弟の姉、すなわち牟田美夏の彼氏だ。
志久なら、牟田弟のことを少しは何か知っているかもしれない。
俺は未だに冷静じゃない頭で、なおかつ震える声で呟いた。
最早いつもの中二病キャラを貼り付ける余裕もない。
「……牟田弟に……いきなり、『死ねばいいのに』って、言われた……」
そう言うと、志久は『あー……』とばつが悪そうな声を上げて、ぽんぽん、と俺の肩を二回ほど叩いてきた。
「そりゃ災難だったな。美冬はな、重度のシスコンなんだよ」
「シスコン?」
「姉の美夏が、好きで好きで仕方がないっつーわけだな。ありゃもう崇拝に近い。だから美夏と仲良くしてたおまえが、気に食わなかったんだろ」
仲良く……仲良くしてたか?
俺と牟田が?
いまいち実感が湧かない。
こういうの友達っぽいな、とぼんやり嬉しく思ってはいたが、牟田弟の判定は相当厳しいんじゃないだろうか。
志久は自分の頭を雑に掻いて、少し気まずそうに言う。
「まあ、実を言うと美夏の彼氏の俺も何回か美冬には暗殺されかけてる」
「暗殺!?」
学校という空間では俺の妄想の中でしか浮かんでこないし聞かないんじゃないかってくらいの物騒な単語に俺が素っ頓狂な声を上げると、志久は苦く頷いた。
「とりあえず、毒を盛られる、罠を仕掛けられるとかは日常茶飯事だな。やれやれ……」
ど、毒。
どうやって調達しているんだ。
そして牟田弟は何者なんだ。
「俺は丈夫だから何とかなってるけど、おまえはちょっと危ないかもな。南雲はともかく、美夏にはあんまり近付かない方がいいかもしれない。まあ、俺からもフォローは入れるようにするよ」
丈夫だからって理由で毒とか罠とか何とかなるもんなのか。
もしかして、志久って普通そうに見えてかなり凄いやつだったりする?
椋と友達になれて薔薇色の学園生活が送れそうだったのに、早くも波乱の予感が訪れてしまったことに俺の心臓は早鐘を打つ。
とりあえず、俺を心配してくれているのだろう志久に礼を言おうとした時。
「あ……あの、神室くん……」
第三者の、声が響いた。
女子の、弱々しいか細い、けれど綺麗な声。
振り返ると、天然色の茶髪を一つの三つ編みにまとめており肩から前に垂らした、椋同様眼鏡をかけて、でもどちらかと言うと背は高めな大人しそうな女の子が立っていた。
クラスメイトの、神戸愛理だ。
神戸と話したことは今まで全くない。
牟田弟以上におとなしい女子だと思っていたから。
でも、神戸は今こうして俺にどういうわけか話しかけていて。
「……ちょっと、いいかな……?」
困ったように眉を下げて問いかける神戸に、思わず頷いてしまったのが、更なるトラブルに巻き込まれるきっかけだなんて――わかる筈も、ないだろう。
死ねばいいのに。
……死ねばいいのに?
未だかつて幸運にも俺の人生で言われたことのない一言に、俺は愕然としてその場に立ち尽くすことしかできなかった。
クラスメイトの、牟田美冬に突如として言われた言葉。
今まであまり交流がなかった上に、牟田弟はてっきり大人しいやつだと思っていたから、正直かなり驚いたし、とてつもなくショックでもあった。
何だ?
俺は、何をした?
何か、牟田弟の気に障ることをしたのか!?
どうしよう、全く身に覚えがない。
俺の中二病っぷりがいよいよ鬱陶しくなったのか?
いやしかし、だからと言って殺意まで……。
俺が悶々と考えていると、背後からぽん、と肩を叩かれた。
ぐるぐるの思考のまま振り向くと、気遣わしげにこちらを見下ろす志久次郎が立っていた。
「神室? どうした? 水飲み場に行くんじゃなかったのか?」
志久は牟田弟の姉、すなわち牟田美夏の彼氏だ。
志久なら、牟田弟のことを少しは何か知っているかもしれない。
俺は未だに冷静じゃない頭で、なおかつ震える声で呟いた。
最早いつもの中二病キャラを貼り付ける余裕もない。
「……牟田弟に……いきなり、『死ねばいいのに』って、言われた……」
そう言うと、志久は『あー……』とばつが悪そうな声を上げて、ぽんぽん、と俺の肩を二回ほど叩いてきた。
「そりゃ災難だったな。美冬はな、重度のシスコンなんだよ」
「シスコン?」
「姉の美夏が、好きで好きで仕方がないっつーわけだな。ありゃもう崇拝に近い。だから美夏と仲良くしてたおまえが、気に食わなかったんだろ」
仲良く……仲良くしてたか?
俺と牟田が?
いまいち実感が湧かない。
こういうの友達っぽいな、とぼんやり嬉しく思ってはいたが、牟田弟の判定は相当厳しいんじゃないだろうか。
志久は自分の頭を雑に掻いて、少し気まずそうに言う。
「まあ、実を言うと美夏の彼氏の俺も何回か美冬には暗殺されかけてる」
「暗殺!?」
学校という空間では俺の妄想の中でしか浮かんでこないし聞かないんじゃないかってくらいの物騒な単語に俺が素っ頓狂な声を上げると、志久は苦く頷いた。
「とりあえず、毒を盛られる、罠を仕掛けられるとかは日常茶飯事だな。やれやれ……」
ど、毒。
どうやって調達しているんだ。
そして牟田弟は何者なんだ。
「俺は丈夫だから何とかなってるけど、おまえはちょっと危ないかもな。南雲はともかく、美夏にはあんまり近付かない方がいいかもしれない。まあ、俺からもフォローは入れるようにするよ」
丈夫だからって理由で毒とか罠とか何とかなるもんなのか。
もしかして、志久って普通そうに見えてかなり凄いやつだったりする?
椋と友達になれて薔薇色の学園生活が送れそうだったのに、早くも波乱の予感が訪れてしまったことに俺の心臓は早鐘を打つ。
とりあえず、俺を心配してくれているのだろう志久に礼を言おうとした時。
「あ……あの、神室くん……」
第三者の、声が響いた。
女子の、弱々しいか細い、けれど綺麗な声。
振り返ると、天然色の茶髪を一つの三つ編みにまとめており肩から前に垂らした、椋同様眼鏡をかけて、でもどちらかと言うと背は高めな大人しそうな女の子が立っていた。
クラスメイトの、神戸愛理だ。
神戸と話したことは今まで全くない。
牟田弟以上におとなしい女子だと思っていたから。
でも、神戸は今こうして俺にどういうわけか話しかけていて。
「……ちょっと、いいかな……?」
困ったように眉を下げて問いかける神戸に、思わず頷いてしまったのが、更なるトラブルに巻き込まれるきっかけだなんて――わかる筈も、ないだろう。
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