つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~

ハリエンジュ

文字の大きさ
12 / 38
第二話『最愛の人よ』

その3 やきもち、なのです

しおりを挟む
★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第二話『最愛のひとよ』その3 やきもち、なのです

 神戸の恋路に協力する、と勢いで言ってしまった俺は、本当に愚かだと思う。
 恋のこの字も知らない俺が、他人の色恋をどうこうできる筈もないのに。
 花が咲いたように笑ってくれた神戸の笑顔を見ると、罪悪感がぐさぐさと刺激された。
 神戸と話した直後にチャイムが鳴って、俺と神戸は授業を受けるべく教室に戻った、のだが。
 俺は今後の自分の身の振り方を必死で考えていたせいで、授業が全く頭に入って来なかった。
 多分、俺の次回の小テストの成績は散々だろう。
 でも、これは完全に俺の自業自得だ。
 自棄になって要らんトラブルに関わった俺が完全に、悪い。

「鶫くん」

 休み時間、自分の席で頭を抱えて溜息を吐いていた俺に、隣の席からふわふわした声がかけられた。
 椋のものだった。
 俺がちら、と視線だけ椋にやると、椋はきょとんと無邪気な表情で首を傾げていた。
 俺に視線をしっかりと合わせ、椋は俺に問いかけてくる。

「愛理ちゃんと、さっき、何をお話していたのですか?」

 愛理。
 神戸のことか。
 俺はどう話すべきか一瞬悩んだが、どうしてもこの悩みを、苦労を誰かと分かち合いたい気持ちもあったので、椋に愚痴るのも悪かったが、ぽつぽつと口を開いた。
 今回ばかりは、中二病キャラも出て来ない。

「……ちょっと、神戸が恋の悩みを抱えてるらしく、色々あって何でか俺がその恋路の手伝いを、することになった……」

 本当に何でなんだろう、どうしてなんだろう。
 中二病モードを発動させた、今朝の俺に全力で問い詰めたい。
 何なら殴り飛ばしたい。
 またも長い長い溜息を吐き出す俺を見て、椋はくすっと優しく微笑みかけてきた。
 その柔らかな、穏やかな笑顔に、俺の心臓はどきりと跳ね上がる。
 椋はどこまでも優しげに、まるで慈しむように俺を見ていた。

「鶫くんは、優しいのです」

「……優しい? 俺が?」

「はい、とっても。椋とも友達になってくれました」

 ……いや、優しいは、ないだろ。
 俺はただ、状況に流されやすいだけだ。
 椋と友達になれたのだって、椋の方からアプローチしてくれたからだし。
 結局の所、俺は受け身で生きている情けない人間なのだ。
 それなのに、何が救世主だよ。
 馬鹿馬鹿しい。
 自己嫌悪の波に囚われそうになった時、椋がまるで俺を救うかのように告げた。

「椋は、鶫くんのそういう所、とても好きなのです」

「…………へ?」

 好き。
 その言葉に、全身の温度がじわじわと上昇していくのがわかった。
 椋の言葉に、深い意味がないのはわかっている。
 椋は、俺をただの友達としてしか思ってないのだから。
 それでも。
 それでも、そんなことを言われたら――年頃の男子的には、どきどきしちまうだろ。
 俺が狼狽していると、椋は少し影のある表情を浮かべた。
 椋にはあんまりしてほしくない表情。
 何だ、と俺が思っていると、椋がぽつりと呟く。

「……でも、あんまり、愛理ちゃんにばかり構っちゃ、やなのです」

 そう言う椋の表情は、少し拗ねた、寂しそうなものだった。
 その表情の理由がわからず、俺はぽかんとすることしかできない。

「……何で?」

 やっとの思いで訊ねると、椋はじと、と俺を見て、こう言った。

「やきもち、なのです」

 ……え?
 思わず、俺はフリーズした。
 フリーズしていると言うのに、俺の全身は着々とオーバーヒートを迎えている。
 だって、そんなの。
 そんなの。
 ――何だそれ、可愛いが過ぎるだろ。
 俺は椋の言葉に上手く応えられず、勢い良く机に突っ伏した。
 額をごつんと机にぶつけてかなり痛かったが、気にしてはいられなかった。
 椋の言葉に深い意味はない、それはわかっている。
 それでも免疫がない俺は、こうしてドギマギしてしまうのだ。
 流石に殺されたいとは思わないけど、俺が椋に抱く感情はまだ恋ってわけじゃないんだろうけど。
 神戸が牟田弟に向ける重い想いが、少しだけわかってしまったような気がして、ぐるぐると変な気持ちになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...