つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~

ハリエンジュ

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第二話『最愛の人よ』

その10 ピンチは相次ぐわけでありまして

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★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第二話『最愛のひとよ』その10 ピンチは相次ぐわけでありまして

teller:神室鶫

 そう言えば鞄を教室に置いたままだな、と帰り支度の為に教室に立ち寄ると。

「お疲れ様なのです、鶫くん」

 椋が、俺の隣の席で文庫本を広げていた。
 俺の姿を見るなり、ふわりと桜色の髪を揺らし、首を傾げる。
 何で、椋が、まだ。

「……もしかして、待っててくれたのか?」

「はい、鶫くんと一緒に帰りたかったので」

 きゅん。

 何だ、今の感覚。
 心臓が、やばいくらい締め付けられる音がしたんだが。
 多分、恐らく、俺は今。
 めちゃくちゃ顔に熱が集まっているのを誤魔化しきれていない。
 今日一日色々大変な、あまりにも怒涛の日だったせいか、椋の声が、言葉が、行動が、存在が、全てが俺にとっては癒しだった。

「……椋」

「はい?」

「……俺は、闇より舞い降りし万人の救世主だが、俺にとっての救世主はおまえだな……」

「良くわかりませんが、鶫くんのお力に、少しでもなれたのなら、嬉しいのです」

 嬉しすぎて、わけがわからなさすぎる中二台詞まで口走ってしまった。
 って言うか、今、俺、中二抜きにしても相当恥ずかしいこと言わなかったか?
 しかし、椋はふふ、と優しく笑うばかり。
 その仕草に、笑顔に、また俺は救われる。

 可愛い、な。
 素直に、そう思った。
 やっぱり神戸の考えは、理解できない。
 好きなやつに、殺されたいとか、好きなやつを、殺したいとか、そういうの。
 普通、好きなやつとはずっと一緒に居たいもんじゃねえの?
 待て待て待て、好きなやつってなんだ。
 浮かれすぎて、思考がかなりぶっ飛んでるぞ。

「……帰るか。椋」

「はいっ」

 俺が机の横に掛けてあった鞄を手に取ると、それに倣って椋が立ち上がった。
 そのまま二人、並んで教室を出ようとする。
 友達と帰るなんて、随分と久しぶりだな。
 いつぶりだろうか。
 そうやって、浮き立つ気持ちのまま、椋の方だけを見ていたのが悪かった。
 椋と何を話そうか、とか、オカルト研究部で起こったこととか、色々話したいな、とかそんなんばっかり思っていたのが悪かった。
 椋は牟田と仲が良いから、牟田関連の話だったら楽しく聞いてくれるかな、とか、オカルト研究部でひどい目に遭ったのも、椋との話のネタになると思えば良い思い出かな、とか思っていたのも悪かった。
 前を見ていなかったせいで、教室を出る瞬間、誰かに思いっ切りぶつかった。

「……っと、悪い――ひっ!?」

 慌てて謝ったが、時既に遅し。
 俺は目線を下げ、さっと顔を青ざめさせた。
 俺の顔色は、赤かったり、青かったりと大忙しだ。
 だって、俺の目線の下に居たのは――。

「……どこに目ぇつけとんのや。殺すぞ。神室」

 ――小柄ながら、クラス1の不良少年・村瀬むらせ静流しずるだったのだから。
 …………え、また俺、命の危機ですか?
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