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身代わり
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遡っている間に考えた。何度助けようとしても必ずだれかが死ぬのなら、自分が死ねば助かるのではないか、と。
腕時計は少しづつ壊れていっていた。
朝、いつも通りに起きると身支度をして待ち合わせ場所に行った。一季と佳代はもういた。2人に駆け寄って奏を待った。けれど車がスリップして突っ込んできた。
全体重をかけて2人を押しのけ、自分から車に飛び込んでいった。
その瞬間、グチャッと吐き気がするような音がして吹き飛ばされた。
そしてプツリと意識がなくなった。
《永遠の愛を望んだ。でも、自分には他人が必要だと思いたくなかった。強がりは半世紀にわたり、それはあまりにも幸せすぎる時間だった。自分で自分を生き地獄に縛り付けた。何度願ったとて、永遠に終わりを許そうとしなかった》
《カンパスの色。それが愛と知っていた。スッと消えていったそれぞれの色。恐れていたことが起こり、よくわからない感情がこみあげた。一度見た色の残光が、真っ白なカンパスの存在を全否定している。ポツンと残ったカンパスと真っ白なパレットを眺めては泣いた。初めて人のために泣いた。もっと素直でいればよかった》
腕時計がパンっという音を出して砕け散る感覚がした。
腕時計は少しづつ壊れていっていた。
朝、いつも通りに起きると身支度をして待ち合わせ場所に行った。一季と佳代はもういた。2人に駆け寄って奏を待った。けれど車がスリップして突っ込んできた。
全体重をかけて2人を押しのけ、自分から車に飛び込んでいった。
その瞬間、グチャッと吐き気がするような音がして吹き飛ばされた。
そしてプツリと意識がなくなった。
《永遠の愛を望んだ。でも、自分には他人が必要だと思いたくなかった。強がりは半世紀にわたり、それはあまりにも幸せすぎる時間だった。自分で自分を生き地獄に縛り付けた。何度願ったとて、永遠に終わりを許そうとしなかった》
《カンパスの色。それが愛と知っていた。スッと消えていったそれぞれの色。恐れていたことが起こり、よくわからない感情がこみあげた。一度見た色の残光が、真っ白なカンパスの存在を全否定している。ポツンと残ったカンパスと真っ白なパレットを眺めては泣いた。初めて人のために泣いた。もっと素直でいればよかった》
腕時計がパンっという音を出して砕け散る感覚がした。
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