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第一章:没落の姫、修羅の道へ
第十九話:旅立ちの決意
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玄心の再訪は、さつきの胸に新たな旅立ちへの決意を促した。
京での手がかりは、古文書の解読作業を除けば、ほぼ出尽くした感があった。朧衆も、祇園祭の一件で警戒を強めたことで、しばらくは表立った動きを見せないだろう。このまま京に留まっていても、黒幕の真の姿には辿り着けない。
「南の自由な交易の町…」
玄心の残した言葉を、さつきは何度も反芻した。具体的な場所は明かされなかったが、京から遠く離れた地にも、黒幕の影が伸びていることを示唆していた。
そして、その地で新たな試練が待っているという玄心の言葉は、さつきの闘志を静かに燃え上がらせた。
「この京の都だけでは、奴らの根を断ち切ることはできない」
さつきは、古文書と、これまでの朧衆との戦いから得た情報を照らし合わせ、確信した。綾小路家を滅ぼした黒幕は、京の一勢力に留まらない。その影響力は、この国全体に及んでいるのかもしれない。ならば、自らもこの京を離れ、その根源を探らねばならない。
「藤次郎、小夜」
さつきは、二人の仲間を呼び寄せた。彼らは、さつきの表情から、何か重大な決意を感じ取っていた。
「私は、京を離れ、旅に出る。黒幕の尻尾を掴むためだ」
さつきの言葉に、藤次郎は驚いたような顔をしたが、すぐに納得したように頷いた。
「なるほどな。確かに、この京だけじゃあ、埒が明かねぇってとこか」
藤次郎は、さつきの決断を理解してくれたようだった。彼は、自身の過去について多くを語らないが、さつきの復讐の旅に付き従うことに、迷いはなかった。彼の豪放磊落な性格の裏には、さつきの志に共感し、行動を共にするという揺るぎない覚悟が隠されている。
しかし、小夜は不安そうな表情を浮かべた。
「さつき様…旅、ですか? 遠いところへ行くのですか?」
幼い小夜にとって、慣れない土地への旅は、不安でしかなかっただろう。京の町で、さつきに拾われ、ようやく落ち着いた生活を送れるようになったばかりだ。
「ああ、遠いところへ行くことになるだろう。危険な旅になる。お前は、この京に残っても良い。藤次郎に頼めば、この長屋で暮らせるよう手配してくれるはずだ」
さつきは、小夜の身を案じ、そう告げた。彼女にとって、小夜は復讐の道具ではない。大切な仲間であり、守るべき存在だった。
小夜は、さつきの言葉に涙ぐんだ。だが、その瞳には、すぐに強い光が宿った。
「嫌です! さつき様と、ご一緒します! 私も、さつき様のお役に立ちたいです! 薬草のことなら、もっと詳しい場所があるかもしれませんし、知らない土地の情報なら、私の方が早く見つけられるかもしれません!」
小夜は、必死に訴えかけた。彼女は、さつきが家族を失った悲しみを、誰よりも理解している。そして、自分を救ってくれたさつきへの恩義と、姉のように慕う気持ちが、彼女をそうさせた。
さつきは、小夜の真っ直ぐな瞳を見つめた。その健気な姿に、さつきの心の奥底にあった、凍てついた感情が、わずかに揺らぐのを感じた。
「そうか…」
さつきは、小夜の頭を優しく撫でた。
「ならば、共に行くか。だが、決して無理はするな。お前は、私にとって、大切な仲間だ」
さつきの言葉に、小夜は満面の笑みを浮かべた。藤次郎もまた、その様子を見て、豪快に笑った。
「へへ、そりゃあ心強いな! 姐さんが京を離れるってんなら、俺もついていくに決まってるだろ! あんたを一人で放っておくわけにはいかねぇからな!」
藤次郎は、そう言ってさつきの肩を叩いた。彼もまた、さつきと共に旅に出ることに、何のためらいもなかった。
彼の過去に何があったのかは語られないが、さつきの目的を追うことが、彼の心の奥底に眠る何かを癒やすことに繋がっているのかもしれない。
こうして、さつき、藤次郎、小夜の三人は、新たな旅立ちを決意した。黒幕の尻尾を掴むため、そして、綾小路家の真実を明らかにするため、京を離れ、未知の地へと足を踏み入れる。
夜空には、満月が輝いていた。その光は、さつきの決意を照らし、彼女の進むべき道を静かに示しているようだった。
復讐と再生の旅は、いよいよ本格的な幕開けを迎えようとしていた。
京での手がかりは、古文書の解読作業を除けば、ほぼ出尽くした感があった。朧衆も、祇園祭の一件で警戒を強めたことで、しばらくは表立った動きを見せないだろう。このまま京に留まっていても、黒幕の真の姿には辿り着けない。
「南の自由な交易の町…」
玄心の残した言葉を、さつきは何度も反芻した。具体的な場所は明かされなかったが、京から遠く離れた地にも、黒幕の影が伸びていることを示唆していた。
そして、その地で新たな試練が待っているという玄心の言葉は、さつきの闘志を静かに燃え上がらせた。
「この京の都だけでは、奴らの根を断ち切ることはできない」
さつきは、古文書と、これまでの朧衆との戦いから得た情報を照らし合わせ、確信した。綾小路家を滅ぼした黒幕は、京の一勢力に留まらない。その影響力は、この国全体に及んでいるのかもしれない。ならば、自らもこの京を離れ、その根源を探らねばならない。
「藤次郎、小夜」
さつきは、二人の仲間を呼び寄せた。彼らは、さつきの表情から、何か重大な決意を感じ取っていた。
「私は、京を離れ、旅に出る。黒幕の尻尾を掴むためだ」
さつきの言葉に、藤次郎は驚いたような顔をしたが、すぐに納得したように頷いた。
「なるほどな。確かに、この京だけじゃあ、埒が明かねぇってとこか」
藤次郎は、さつきの決断を理解してくれたようだった。彼は、自身の過去について多くを語らないが、さつきの復讐の旅に付き従うことに、迷いはなかった。彼の豪放磊落な性格の裏には、さつきの志に共感し、行動を共にするという揺るぎない覚悟が隠されている。
しかし、小夜は不安そうな表情を浮かべた。
「さつき様…旅、ですか? 遠いところへ行くのですか?」
幼い小夜にとって、慣れない土地への旅は、不安でしかなかっただろう。京の町で、さつきに拾われ、ようやく落ち着いた生活を送れるようになったばかりだ。
「ああ、遠いところへ行くことになるだろう。危険な旅になる。お前は、この京に残っても良い。藤次郎に頼めば、この長屋で暮らせるよう手配してくれるはずだ」
さつきは、小夜の身を案じ、そう告げた。彼女にとって、小夜は復讐の道具ではない。大切な仲間であり、守るべき存在だった。
小夜は、さつきの言葉に涙ぐんだ。だが、その瞳には、すぐに強い光が宿った。
「嫌です! さつき様と、ご一緒します! 私も、さつき様のお役に立ちたいです! 薬草のことなら、もっと詳しい場所があるかもしれませんし、知らない土地の情報なら、私の方が早く見つけられるかもしれません!」
小夜は、必死に訴えかけた。彼女は、さつきが家族を失った悲しみを、誰よりも理解している。そして、自分を救ってくれたさつきへの恩義と、姉のように慕う気持ちが、彼女をそうさせた。
さつきは、小夜の真っ直ぐな瞳を見つめた。その健気な姿に、さつきの心の奥底にあった、凍てついた感情が、わずかに揺らぐのを感じた。
「そうか…」
さつきは、小夜の頭を優しく撫でた。
「ならば、共に行くか。だが、決して無理はするな。お前は、私にとって、大切な仲間だ」
さつきの言葉に、小夜は満面の笑みを浮かべた。藤次郎もまた、その様子を見て、豪快に笑った。
「へへ、そりゃあ心強いな! 姐さんが京を離れるってんなら、俺もついていくに決まってるだろ! あんたを一人で放っておくわけにはいかねぇからな!」
藤次郎は、そう言ってさつきの肩を叩いた。彼もまた、さつきと共に旅に出ることに、何のためらいもなかった。
彼の過去に何があったのかは語られないが、さつきの目的を追うことが、彼の心の奥底に眠る何かを癒やすことに繋がっているのかもしれない。
こうして、さつき、藤次郎、小夜の三人は、新たな旅立ちを決意した。黒幕の尻尾を掴むため、そして、綾小路家の真実を明らかにするため、京を離れ、未知の地へと足を踏み入れる。
夜空には、満月が輝いていた。その光は、さつきの決意を照らし、彼女の進むべき道を静かに示しているようだった。
復讐と再生の旅は、いよいよ本格的な幕開けを迎えようとしていた。
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