8 / 10
第八話:鍔に籠められた祈り ~行方知れずの武士~
しおりを挟む
寒さが一段と厳しくなった、師走(しわす)も半ばの頃。桐谷一葉の鑑定所を訪れたのは、沈痛な面持ちの年配の夫婦だった。
彼らは、数ヶ月前に行方が分からなくなった息子、源七郎(げんしちろう)という武士について、何か手掛かりを得たいと一葉の元を訪れたのだ。
「先生…息子は、穏やかな性格で…争い事など好まぬ者でしたのに…なぜ、突然、姿を消したのか…」
母親の声は、深い悲しみに震えている。源七郎は、どこかの藩に仕官していたわけではなく、気ままに剣の修行をしながら暮らしていたという。行方不明になってから数ヶ月が経ち、事件に巻き込まれた可能性も考えられたが、目立った争いの形跡もなく、奉行所も手がかりを見つけられずにいた。
夫婦が持ってきたのは、源七郎が愛用していたらしい一振りの刀だった。刀身は、ごく一般的な打刀だが、その鍔(つば)に、夫婦は特別な思いを抱いていた。
「この鍔は…息子が、肌身離さず持っていたもので…おそらく、自分で選んだのでしょう。何か、特別な思いが込められているのではないかと…」
父親は、震える手で刀を抜き、鍔を一葉に差し出した。現れた鍔は、鉄製で、やや大きめだ。表面には、独特の、精緻な意匠が彫り込まれている。
一葉は、鍔を受け取った。手に取ると、ずっしりとした重みの中に、込められた思いの重さまで伝わってくるようだ。鍔の表面には、複雑な、しかし力強い意匠が刻まれている。それは、生き物のように見えるが、具体的な動物とは少し違う、幻想的な姿だった。
「これは…見事な意匠ですね。」
一葉は、鍔の材質や製作技法を調べた。古い時代の物ではないが、確かな腕を持つ職人によって作られている。そして、意匠に目を凝らした。流れるような線、鱗(うろこ)のような模様、そして、何かを守るかのように大きく広げられた翼のようなもの。
「この意匠は…龍のようにも見えますが…少し違う。どこか、亀のようでもあり…翼を持っている…。」
一葉の脳裏に、「五龍の剣」伝説の言葉がよぎる。青龍、朱雀、白虎、玄武、そして黄龍。それぞれの龍には、象徴する方角、色、そして特性があると伝えられている。
「…玄武…北方を守るとされる、亀と蛇が絡み合った姿…しかし、これは…」
この鍔の意匠は、玄武の伝承とは異なる。しかし、亀のような姿と、翼のようなもの。それは、玄武が持つ「堅固さ」や「守り」の象徴と、何か別の意味が組み合わされているのかもしれない。
一葉は、意匠が持つ象徴的な意味について深く考察した。翼は、飛翔、あるいは自由を意味するのか。亀のような姿は、堅固さ、あるいは長寿や不変を意味するのか。そして、全体として、何かを守り、あるいはどこかへ向かおうとしているような印象を受ける。
「この意匠には…何か強い『願い』や『祈り』が込められているように感じられます。」
一葉は、夫婦に源七郎についてさらに詳しく尋ねた。何か特定の場所に行きたがっていた様子はなかったか。何かを探していたことはないか。特定の人物と関わりはなかったか。
夫婦は、源七郎が最近、古い歴史書や地理書をよく読んでいたこと、そして、ある伝説について調べていたと語った。それは、遠い昔に失われた、特別な「刀」に関する伝説だという。具体的な刀の名前は分からないが、源七郎は、その刀の「守り手」に関する記述に興味を持っていたらしい。
特別な「刀」に関する伝説。そして、「守り手」。
一葉は、鍔の意匠が示す「守り」や「方向性」と、源七郎が調べていた伝説を結びつけた。もしかすると、この鍔は、源七郎が探していた、あるいは守ろうとしていた「特別な刀」と関連があるのではないか。
そして、鍔に込められた意匠は、その刀を守るための「祈り」であり、あるいは、その刀が示す「場所」への手掛かりだったのではないか。
その可能性に思い至り、一葉の心臓が強く脈打った。源七郎が探していた伝説の刀。それが、「五龍の剣」の一つである可能性は高い。そして、この鍔の意匠は…「五龍の剣」の一つ、あるいはその守り手を示す暗号なのかもしれない。
一葉は、鍔の意匠が示す方向性、そして源七郎が調べていた伝説の内容から、彼が向かったであろう場所を推理した。それは、江戸から離れた、古い伝承が残る土地。そして、鍔の意匠が示す「守り」が意味するもの…それは、単なる刀の守り手ではない。
何か、大切なもの、あるいは危険なものから「守る」という強い意志が込められている。
「この鍔の意匠は…『北方の守り』、あるいは、『険しい道のりの先にある場所』を示唆しているように見えます。そして、『守り手』に関する伝説…」
一葉は、夫婦に、源七郎が向かったであろう場所、そして彼が何をしようとしていたのか、自身の推理を伝えた。それは、単なる気まぐれな旅ではない。強い目的意識を持った、危険を伴う旅だった可能性が高い。そして、その目的は、彼が調べていた「特別な刀」と、それを守るための「祈り」に関わっている。
夫婦は、一葉の言葉に、新たな希望と同時に、深い不安を感じた。息子は、単に姿を消したのではなく、何か大きな、危険なものに関わろうとしていたのだ。
一葉は、鍔の意匠が「五龍の剣」の一つ、特に「玄武」に関連する可能性が高いこと、そして、源七郎が向かったであろう場所が、「影追」が曰くつきの刀を追っている土地と重なる可能性について、奉行所の田島同心に情報提供した。
田島同心からの報告によると、源七郎が向かった可能性のある土地では、「影追」と見られる不審な集団が活動していたという情報があった。また、その土地には、「五龍の剣」伝説の一部に関わる古い伝承が残っていることも判明した。
「先生…息子は…影追に…?」
父親の声が震える。
「分かりません。しかし、源七郎さんが追っていたものが、『五龍の剣』に関わる何かであり、それが影追の目的と重なっていた可能性はあります。彼は…そのために、危険な状況に巻き込まれたのかもしれません。」
一葉は、夫婦に、鍔に込められた源七郎の「祈り」について語った。それは、単なる物理的な守りではない。何か大切なもの、あるいは誰かを守ろうとする、武士としての、あるいは人としての強い意志が込められている。
「この鍔は…源七郎さんが、どれほど真剣に、そして強い覚悟を持って、何かを守ろうとしていたかを物語っています。彼の思いは…この鍔の中に生き続けています。」
夫婦は、鍔を手に取り、意匠を撫でた。息子が、命をかけてまで守ろうとしたもの。その思いが、この冷たい鉄の中に込められている。彼らの目から、再び涙が溢れ落ちた。それは、悲しみだけでなく、息子の知られざる勇気と覚悟に対する、誇りの涙でもあった。
夫婦が去った後、一葉は一人、鑑定所に残った。手元には、源七郎が置いていった刀。そして、その鍔に刻まれた、あの意匠。
鍔が語った、武士の隠された探求と、命をかけた祈り。それは、「五龍の剣」伝説、そして「影追」という存在の謎へと繋がる、新たな扉を開いた。
一葉の胸に、緊張感と、使命感が湧き上がる。源七郎は、何を求め、何を「守ろう」としたのか?
その答えは、「五龍の剣」伝説の核心、そして影追の目的と深く関わっているはずだ。この鍔に込められたメッセージを、さらに深く読み解く必要がある。
「五龍の剣」…曰くつきの刀を追う「影追」…そして、彼らに巻き込まれていく人々。
一葉は、鑑定台の上に置かれた刀を見つめた。鉄は記憶する。そして、その記憶は、江戸の闇に潜む巨大な謎、そして未だ見ぬ「五龍の剣」へと繋がっている。
一葉の、刃に刻まれた真実を追う探求の日々は、鍔に籠められた武士の祈りと共に続いていく。
彼らは、数ヶ月前に行方が分からなくなった息子、源七郎(げんしちろう)という武士について、何か手掛かりを得たいと一葉の元を訪れたのだ。
「先生…息子は、穏やかな性格で…争い事など好まぬ者でしたのに…なぜ、突然、姿を消したのか…」
母親の声は、深い悲しみに震えている。源七郎は、どこかの藩に仕官していたわけではなく、気ままに剣の修行をしながら暮らしていたという。行方不明になってから数ヶ月が経ち、事件に巻き込まれた可能性も考えられたが、目立った争いの形跡もなく、奉行所も手がかりを見つけられずにいた。
夫婦が持ってきたのは、源七郎が愛用していたらしい一振りの刀だった。刀身は、ごく一般的な打刀だが、その鍔(つば)に、夫婦は特別な思いを抱いていた。
「この鍔は…息子が、肌身離さず持っていたもので…おそらく、自分で選んだのでしょう。何か、特別な思いが込められているのではないかと…」
父親は、震える手で刀を抜き、鍔を一葉に差し出した。現れた鍔は、鉄製で、やや大きめだ。表面には、独特の、精緻な意匠が彫り込まれている。
一葉は、鍔を受け取った。手に取ると、ずっしりとした重みの中に、込められた思いの重さまで伝わってくるようだ。鍔の表面には、複雑な、しかし力強い意匠が刻まれている。それは、生き物のように見えるが、具体的な動物とは少し違う、幻想的な姿だった。
「これは…見事な意匠ですね。」
一葉は、鍔の材質や製作技法を調べた。古い時代の物ではないが、確かな腕を持つ職人によって作られている。そして、意匠に目を凝らした。流れるような線、鱗(うろこ)のような模様、そして、何かを守るかのように大きく広げられた翼のようなもの。
「この意匠は…龍のようにも見えますが…少し違う。どこか、亀のようでもあり…翼を持っている…。」
一葉の脳裏に、「五龍の剣」伝説の言葉がよぎる。青龍、朱雀、白虎、玄武、そして黄龍。それぞれの龍には、象徴する方角、色、そして特性があると伝えられている。
「…玄武…北方を守るとされる、亀と蛇が絡み合った姿…しかし、これは…」
この鍔の意匠は、玄武の伝承とは異なる。しかし、亀のような姿と、翼のようなもの。それは、玄武が持つ「堅固さ」や「守り」の象徴と、何か別の意味が組み合わされているのかもしれない。
一葉は、意匠が持つ象徴的な意味について深く考察した。翼は、飛翔、あるいは自由を意味するのか。亀のような姿は、堅固さ、あるいは長寿や不変を意味するのか。そして、全体として、何かを守り、あるいはどこかへ向かおうとしているような印象を受ける。
「この意匠には…何か強い『願い』や『祈り』が込められているように感じられます。」
一葉は、夫婦に源七郎についてさらに詳しく尋ねた。何か特定の場所に行きたがっていた様子はなかったか。何かを探していたことはないか。特定の人物と関わりはなかったか。
夫婦は、源七郎が最近、古い歴史書や地理書をよく読んでいたこと、そして、ある伝説について調べていたと語った。それは、遠い昔に失われた、特別な「刀」に関する伝説だという。具体的な刀の名前は分からないが、源七郎は、その刀の「守り手」に関する記述に興味を持っていたらしい。
特別な「刀」に関する伝説。そして、「守り手」。
一葉は、鍔の意匠が示す「守り」や「方向性」と、源七郎が調べていた伝説を結びつけた。もしかすると、この鍔は、源七郎が探していた、あるいは守ろうとしていた「特別な刀」と関連があるのではないか。
そして、鍔に込められた意匠は、その刀を守るための「祈り」であり、あるいは、その刀が示す「場所」への手掛かりだったのではないか。
その可能性に思い至り、一葉の心臓が強く脈打った。源七郎が探していた伝説の刀。それが、「五龍の剣」の一つである可能性は高い。そして、この鍔の意匠は…「五龍の剣」の一つ、あるいはその守り手を示す暗号なのかもしれない。
一葉は、鍔の意匠が示す方向性、そして源七郎が調べていた伝説の内容から、彼が向かったであろう場所を推理した。それは、江戸から離れた、古い伝承が残る土地。そして、鍔の意匠が示す「守り」が意味するもの…それは、単なる刀の守り手ではない。
何か、大切なもの、あるいは危険なものから「守る」という強い意志が込められている。
「この鍔の意匠は…『北方の守り』、あるいは、『険しい道のりの先にある場所』を示唆しているように見えます。そして、『守り手』に関する伝説…」
一葉は、夫婦に、源七郎が向かったであろう場所、そして彼が何をしようとしていたのか、自身の推理を伝えた。それは、単なる気まぐれな旅ではない。強い目的意識を持った、危険を伴う旅だった可能性が高い。そして、その目的は、彼が調べていた「特別な刀」と、それを守るための「祈り」に関わっている。
夫婦は、一葉の言葉に、新たな希望と同時に、深い不安を感じた。息子は、単に姿を消したのではなく、何か大きな、危険なものに関わろうとしていたのだ。
一葉は、鍔の意匠が「五龍の剣」の一つ、特に「玄武」に関連する可能性が高いこと、そして、源七郎が向かったであろう場所が、「影追」が曰くつきの刀を追っている土地と重なる可能性について、奉行所の田島同心に情報提供した。
田島同心からの報告によると、源七郎が向かった可能性のある土地では、「影追」と見られる不審な集団が活動していたという情報があった。また、その土地には、「五龍の剣」伝説の一部に関わる古い伝承が残っていることも判明した。
「先生…息子は…影追に…?」
父親の声が震える。
「分かりません。しかし、源七郎さんが追っていたものが、『五龍の剣』に関わる何かであり、それが影追の目的と重なっていた可能性はあります。彼は…そのために、危険な状況に巻き込まれたのかもしれません。」
一葉は、夫婦に、鍔に込められた源七郎の「祈り」について語った。それは、単なる物理的な守りではない。何か大切なもの、あるいは誰かを守ろうとする、武士としての、あるいは人としての強い意志が込められている。
「この鍔は…源七郎さんが、どれほど真剣に、そして強い覚悟を持って、何かを守ろうとしていたかを物語っています。彼の思いは…この鍔の中に生き続けています。」
夫婦は、鍔を手に取り、意匠を撫でた。息子が、命をかけてまで守ろうとしたもの。その思いが、この冷たい鉄の中に込められている。彼らの目から、再び涙が溢れ落ちた。それは、悲しみだけでなく、息子の知られざる勇気と覚悟に対する、誇りの涙でもあった。
夫婦が去った後、一葉は一人、鑑定所に残った。手元には、源七郎が置いていった刀。そして、その鍔に刻まれた、あの意匠。
鍔が語った、武士の隠された探求と、命をかけた祈り。それは、「五龍の剣」伝説、そして「影追」という存在の謎へと繋がる、新たな扉を開いた。
一葉の胸に、緊張感と、使命感が湧き上がる。源七郎は、何を求め、何を「守ろう」としたのか?
その答えは、「五龍の剣」伝説の核心、そして影追の目的と深く関わっているはずだ。この鍔に込められたメッセージを、さらに深く読み解く必要がある。
「五龍の剣」…曰くつきの刀を追う「影追」…そして、彼らに巻き込まれていく人々。
一葉は、鑑定台の上に置かれた刀を見つめた。鉄は記憶する。そして、その記憶は、江戸の闇に潜む巨大な謎、そして未だ見ぬ「五龍の剣」へと繋がっている。
一葉の、刃に刻まれた真実を追う探求の日々は、鍔に籠められた武士の祈りと共に続いていく。
20
あなたにおすすめの小説
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる