黄昏の国家

旅里 茂

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激流の顛末

黄昏の国家07

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核心に入った。そう立木は直感した。
ビジョノートで聞いている角安も同様に感じた。
立木は更に踏むこむ。「杉本という人物を知ってるかい?」
少しの沈黙があったが、内村は「あの事件の被害者ね。知ってるわ」
流石に懸念したのか、言葉を足す。「でも、どうしてその人の事、聞くの?」
「オレの友人だったんだよ、杉本は…」勿論、ブラフである。
「それが、埠頭で射殺体で発見された。オレは犯人を許さない!」
演技臭くもあるが、内村を動揺させるには効果があったようだ。
「そう、可哀そうに。私からはこれだけ言ってあげる。現場は神戸三宮のショットバー『ライデン』、関わった人物は全部で六人…」
そうか、情報は必要以上に集まった。
「ありがとう、お礼だ」そう言って内村の胸をまさぐりながら、再度情事に耽った。
これで首謀者は川崎達也副次官と見て、間違いない。
角安と高沢のビジョノートと同様、走らせていたリードペーパーに送信され、状況を記録する書類が出来上がっていく。
これを検察庁に提出し、川崎を追い詰める事が出来そうだった。
翌朝、八時十四分、角安は面識のある検事、秋元秀作に連絡を取った。
「これは角安幹事長、お早いご連絡で。杉本才気の件ですか?」
中々にして勘が鋭い男である。多分、情報が被っている部分もあるのだろう。
「察しが良いですな。秋元検事。実はこの書類を見て頂けますかな?」
ビジョノートに乗せて情報を伝達する。
「ほう、これは興味深いですな。我々が追っている情報と一部一致する件もありますが、こちらの方が核心に迫っています」
流れからして角安は、川崎を落とし、そのポストに就くことを目論んでいた。
高沢は純粋に杉本の無念を晴らそうとしているが、角安のそんな心中を垣間見たのである。
だからといって、角安を無下に出来ない。角安有っての『オーイックス』なのだから。
それからは検察の動きは早かった。
まるでもつれて絡まった糸が、するすると解けるように杉本を殺害した、或いは其処にいた容疑者六人を一斉に検挙した。
警察に改めて身柄を引き渡し、取り調べが始まる。
秋元検事は証拠物件が出た事を良しとして、川崎達也副次官宅に捜査に入った。
初めは抵抗した川崎だったが、証拠物件を提示され、逃げ場を失った。
その頃、内村秘書はスイスに飛んでいた。
立木から旅券と使用出来る口座を渡され、海外逃亡したのだった。
同日、十時三十分。総理官邸に川崎逮捕の一報が入る。
まさか総理大臣の補佐官役である、副次官が逮捕される事態に、周囲では騒ぎが起こっていた。
野党はここぞとばかりに、中越総理は任命責任を取って辞任しろと強く要求した。
事態を深刻に受け止めた自政党は、緊急招集をかけて今後の対応を協議した。
殺人に関わったとして逮捕された川崎の他、関東電力の複式の名も挙がり、状況は大混乱となった。
各種マスコミは、一大スキャンダルとして大々的に報道し、収拾が着かぬ様相であった。
結局、複式も逮捕され関東電力の株価はストップ安まで下がった。
これを受けて株主らは、一斉に集団訴訟を起こした。
困惑と怒号、直ぐに号外が出され世の注目の的となった。
これを機に角安は検察の後押しもあって、幹事長から副次官として昇格した。
まず、角安から情報を持たされたとして、検察トップが自政党に助言し、川崎に代わって現内閣を補佐する為に、中越総理をサポートするポジションに着いたのである。
いわば場当たり的な部分もあるが、角安の第一目標は達成出来たのである。
杉本が暗殺され、皮肉にも角安が得をえる。
それを終始近くで見ていた高沢は、政権に固執する集団をきな臭く感じていた。
勿論、角安も例外ではない。
中越内閣は、そんな角安の助言を得て体制を立て直した。
騒ぎはしばらく続いたが、やがてそれらも遠い世界へと抜けてゆき、いつもの日常が訪れようとしていた。
只、大きく変わったのは、中越内閣が「オーイックス」に初めて準日本政府組織としての、取り組みを発表したことだった。
これは「オーイックス」への追い風となって、事業を急速に拡大するきっかけとなった。

例の事件から数年が過ぎた。
ビッグ計画は順調に進み、ビッグ・ファイブまでの建造をよしとした。
中越内閣はその間、二度危機に仰ぎ解散を余儀なくされたが、「オーイックス」の持つ自浄作用で、内閣改造の元、中越内閣は延命している。
その間、高沢は「オーイックス」総統として体をなして総指揮にあたっている。
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