黄昏の国家

旅里 茂

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ギークの目覚め

黄昏の国家09

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一種、危険な範疇である人工の子供たちが、防衛、更には各種軍備に適応した訓練を受けて、コントロール室で待機する。
ここを管轄している軍需コントロール室、室長、多田よし江なる人物が子供たちの管理を行っており、その下で従事するスタッフは十五人いる。
『ギーク』の子供たちは総勢八人、世界情勢、各国の軍事情勢を一瞬で把握する能力を司る。
今後予定されているのは、ビッグ・システムのナンバー8に当たる九州方面に完成を求めている同様規模のフロートで、そこには他とは違うロケット発射基地を設けて軍事衛星を百数十機打ち上げる計画だ。
空想的な案件だが、高沢を始めスタッフはプランを立てて実行までの準備を怠らずにいる。
ロケットに必要な知識や製造のイロハは、既に人員を確保していた。
現在は量子コンピューターを使用してシュミレーションを実行し、近い将来に置いての発射に備えている。
これらも二酸化炭素を原料とするエンジンで行うため、燃料が必要ない。
勿論これらは軍事衛星としての機能を要する為、ギークの子供たちがコントロールする。
かつて二十年程遡り、アメリカ空軍の戦闘機に初めて強力なレーザー砲を装備したのが始まりで、ビッグ・システムがコントロールするのも、レーザー砲である。
既に各軍隊で、レーザー砲は主要兵器に成りつつあり、形骸化したとはいえ、今では世界で一位の経済大国となった中国が目下、危険な軍隊と言われている。
これに対抗する為、民主主義連合が誕生し、その中心が英国で、日本国はアジア最重要監視国として機能を果たしている。
この辺りも、先に述べたように在日米軍は既に撤退しており、その支えとしてオーイックスの軍部がサポートしている。日本自衛軍とオーイックス軍の二段構えで強力な軍事プロセスを持ち得ているのだ。
ギークの先頭に立つのは少女『サキナ』が多田に問いかける。
普段は殆ど喋らないサキナが話しかけたことで、躊躇した多田だったが、その言葉を聞くことにした。
「私たちが動く日が近付いている。」
多田は、呆気に取られた。何のことだ?状況を飲み込めないうちに、他のギークの子供たちが一斉に多田を見つめた。
その眼光には、恐怖を感じた。
多田は決して子供たちを心の底から信頼していない。
只、このセクションを任されているからの、一心である。
多田は虚勢を張って、サキナに問いただした。
「貴方たちが動くとは、どういう意味?私の指示通りにしなさい!」
その言葉にサキナは大きく反応した。
「炎…、たくさんの炎がこの施設に起こるわ」
最早、自制出来ない程、多田は恐怖に駆られた。
直ぐにビジョノートで高沢に連絡を取る。その際にサキナが多田の視覚に大きく映り込み、回線がショートした。
多田はその場に崩れ落ちた。一瞬の出来事だったが、高沢には辛うじて通信の内容を見ることが出来た。
何かが起きている。高沢は直ぐに保安部に連絡を取り、防衛コントロール室に急行する。
其処には、直立不動したサキナを始めとする八人が待ち受けていた。
やはり、人工的に作り出した人間の制御は出来ないのか。多田は何故か椅子に気を失ったまま、もたれ掛かっていた。
高沢はサキナに説いた。「なにかあるのか?私が受け取った内容は僅かだが、炎といったな。それは…。」高沢の言葉を遮りサキナが答えた。
「北朝鮮からミサイルが飛んでくるわ。何もしなければ此処は炎に包まれる」
北朝鮮?既に崩壊が始まって混乱をきたしている国にそんな余裕があるのか。
現在の北朝鮮の状況は、中国に支配され人民解放軍が多々に渡り占拠している状態だ。
だとすれば、それは中国が動くという事か。高沢はサキナを始めギークの子供たちに慎重になりながらも話を続けた。
「それはいつ?ミサイルか?通常の?それとも…」サキナは、またしても話の途中で答えた。「核よ。数は二発、でも、やり方によっては防げるわ」
現行、日本海に展開中のイージス艦五隻と地上から敵基地を破壊するロットMSDというミサイルを自衛軍は保有しているが、核を海上で撃破すれば核爆発は免れるが、放射能を散らばらせてしまう。
これに対処する為、オーイックスの防衛には、ニュートリノ・レーザーというものを各ビッグ・フロートに配備している。核を無力化する事が可能と言われている。
但し、実際に実験を何処の国も試した事が無い為、その信頼性は乏しい。
しかし、もし無力化が可能なら、放射能の被害に遭わずに済む。
ニュートリノ・レーザーで核ミサイルに照射し、その後、迎撃ミサイルで破壊する。
問題は極音速で飛来するミサイルを、都合よく照射出来るかだ。
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