49 / 52
入学
しおりを挟む
入学式を終えた。その夜ベッドに入った時に、
「あ、そうだ。そろそろ母さんに電話しないとな。寂しがってるだろうから。」
俺が言うと、
「お前はそういうとこ、偉いよな。感心するぜ。」
と、海斗が言った。
「そりゃあ、お前と違って俺は、育ててもらったのが当たり前じゃないからな。」
と言いながらスマホを操作していると、海斗が黙って背中にくっついてきた。
「もしもし、母さん?元気?」
「岳斗?うん、元気よ。入学式はどうだった?」
母さんと、少し話をした。海斗にハグされたまま。そして、
「じゃあ、海斗に代わるね。」
と言ってスマホを海斗に渡す。海斗は驚いた顔をしたが、渋々受け取って、母さんと少し言葉を交わしていた。そして、すぐに俺にスマホを返した。もっと話してあげればいいのに。母さんにとって、海斗はどれほど可愛いことか。
「もしもし?じゃあ、またちょくちょく電話するからね。お休み。」
そう言って、電話を切った。
「岳斗、いい息子だな。母さんは幸せだよ。」
と、海斗がしみじみと言った。これくらい孝行しないと。学費や生活費を出してもらっているわけだし。
「海斗はもっと、親孝行しなよ。」
と俺が言うと、急にキスされた。びっくりしていると、
「うるさい。」
と、海斗が言った。なんだか、二人きりでずっといられるのって、嬉しいけど、照れくさい。いい雰囲気になってしまったら、この後どうしたらいいのか分からなくなる。
「あ・・・今日も疲れたな。明日から早起きだし、もう寝よう!」
俺はやたらと元気にそう言って、布団をかぶって海斗に背中を向けた。
「そうだな。お休み、岳斗。」
海斗はそう言って、俺の頭をちょっと撫で、電気を消した。一方的に切り上げすぎたかな、二人きりの甘い時間を・・・。
翌朝から、授業が始まった。なるほど、工学部というのは女子が少ない。あまり数字を気にしていなかったので、実際に教室に座ってみて初めて分かった。十人に一人と言ったところだろうか。キャンパスは広く、学生が混み合う事もない。ここなら、海斗が現れて悲鳴が沸き起こる事もなかろう。
何となく近くに座った人たちと話をした。
「へえ、兄貴と二人で住んでるんだ、いいなー。」
と言われた。地元から通っていて、実家暮らしの学生が多いようだ。独り暮らしをしている学生もいるが、ほとんどが道内か東北地方の出身だと聞いた。東京には付属校があるけれど、そこから上がってきた学生は見かけなかった。学年全体でも何人もいないのだ。
「岳斗!」
数人で校舎から出たところで、海斗が俺を呼び留めた。
「もしかして、あれが兄貴?」
友達に聞かれて、そうだと答えると、
「すっげえ、イケメンだな。さすが東京出身だな。城崎もイケメンだもんなー。」
と、少し東北訛りで言われた。
「そんな事ないよ。」
と言っている間に、海斗が俺の前に現れた。
「今から帰るのか?一緒に帰ろうぜ。」
と言って、俺の肩に腕を回した。友達から俺を奪うようにして連れ去る。そんな事しなくたって、俺がこの男子たちに狙われるわけもないのに。少し笑ってしまう。俺は、新しい友達たちに手を振って別れた。みんな呆然とこちらを見ていたが、手を振り返してくれた。
翌日、昼休みに学食で食事をしていると、葵さんと慎二さんに会った。
「おー、岳斗くん。」
「こんにちは。」
俺は挨拶をした。すると、
「ねえ、海斗の彼女って誰なの?岳斗くん知ってる?」
と、また葵さんに聞かれた。
「この大学の一年生なんでしょ?」
「そうなのか?!」
慎二さんが驚いて聞いた。
「この間、海斗が言ってたのよ。バイトを減らしたのは、彼女がこっちに来たからだって。」
葵さんが慎二さんに言う。
「なるほど、もう毎月の飛行機代は稼がなくて良くなったってわけか。」
慎二さんは何度か頷いた。
「で、どの子?知ってるんだろ?」
と、慎二さんが俺に言う。
「えーと、知りません。すみません、じゃあ。」
俺はそう言って、逃げるようにトレイを持って立ち上がった。海斗、このまま隠し通せるとも思えないぞ。彼女とは別れた事にしておいた方が良かったんじゃないのか?
「あ、そうだ。そろそろ母さんに電話しないとな。寂しがってるだろうから。」
俺が言うと、
「お前はそういうとこ、偉いよな。感心するぜ。」
と、海斗が言った。
「そりゃあ、お前と違って俺は、育ててもらったのが当たり前じゃないからな。」
と言いながらスマホを操作していると、海斗が黙って背中にくっついてきた。
「もしもし、母さん?元気?」
「岳斗?うん、元気よ。入学式はどうだった?」
母さんと、少し話をした。海斗にハグされたまま。そして、
「じゃあ、海斗に代わるね。」
と言ってスマホを海斗に渡す。海斗は驚いた顔をしたが、渋々受け取って、母さんと少し言葉を交わしていた。そして、すぐに俺にスマホを返した。もっと話してあげればいいのに。母さんにとって、海斗はどれほど可愛いことか。
「もしもし?じゃあ、またちょくちょく電話するからね。お休み。」
そう言って、電話を切った。
「岳斗、いい息子だな。母さんは幸せだよ。」
と、海斗がしみじみと言った。これくらい孝行しないと。学費や生活費を出してもらっているわけだし。
「海斗はもっと、親孝行しなよ。」
と俺が言うと、急にキスされた。びっくりしていると、
「うるさい。」
と、海斗が言った。なんだか、二人きりでずっといられるのって、嬉しいけど、照れくさい。いい雰囲気になってしまったら、この後どうしたらいいのか分からなくなる。
「あ・・・今日も疲れたな。明日から早起きだし、もう寝よう!」
俺はやたらと元気にそう言って、布団をかぶって海斗に背中を向けた。
「そうだな。お休み、岳斗。」
海斗はそう言って、俺の頭をちょっと撫で、電気を消した。一方的に切り上げすぎたかな、二人きりの甘い時間を・・・。
翌朝から、授業が始まった。なるほど、工学部というのは女子が少ない。あまり数字を気にしていなかったので、実際に教室に座ってみて初めて分かった。十人に一人と言ったところだろうか。キャンパスは広く、学生が混み合う事もない。ここなら、海斗が現れて悲鳴が沸き起こる事もなかろう。
何となく近くに座った人たちと話をした。
「へえ、兄貴と二人で住んでるんだ、いいなー。」
と言われた。地元から通っていて、実家暮らしの学生が多いようだ。独り暮らしをしている学生もいるが、ほとんどが道内か東北地方の出身だと聞いた。東京には付属校があるけれど、そこから上がってきた学生は見かけなかった。学年全体でも何人もいないのだ。
「岳斗!」
数人で校舎から出たところで、海斗が俺を呼び留めた。
「もしかして、あれが兄貴?」
友達に聞かれて、そうだと答えると、
「すっげえ、イケメンだな。さすが東京出身だな。城崎もイケメンだもんなー。」
と、少し東北訛りで言われた。
「そんな事ないよ。」
と言っている間に、海斗が俺の前に現れた。
「今から帰るのか?一緒に帰ろうぜ。」
と言って、俺の肩に腕を回した。友達から俺を奪うようにして連れ去る。そんな事しなくたって、俺がこの男子たちに狙われるわけもないのに。少し笑ってしまう。俺は、新しい友達たちに手を振って別れた。みんな呆然とこちらを見ていたが、手を振り返してくれた。
翌日、昼休みに学食で食事をしていると、葵さんと慎二さんに会った。
「おー、岳斗くん。」
「こんにちは。」
俺は挨拶をした。すると、
「ねえ、海斗の彼女って誰なの?岳斗くん知ってる?」
と、また葵さんに聞かれた。
「この大学の一年生なんでしょ?」
「そうなのか?!」
慎二さんが驚いて聞いた。
「この間、海斗が言ってたのよ。バイトを減らしたのは、彼女がこっちに来たからだって。」
葵さんが慎二さんに言う。
「なるほど、もう毎月の飛行機代は稼がなくて良くなったってわけか。」
慎二さんは何度か頷いた。
「で、どの子?知ってるんだろ?」
と、慎二さんが俺に言う。
「えーと、知りません。すみません、じゃあ。」
俺はそう言って、逃げるようにトレイを持って立ち上がった。海斗、このまま隠し通せるとも思えないぞ。彼女とは別れた事にしておいた方が良かったんじゃないのか?
1
あなたにおすすめの小説
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
長年の恋に終止符を
mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。
そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。
男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。
それがあの人のモットーというやつでしょう。
どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。
これで終らせることが出来る、そう思っていました。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる