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帰国~始動3
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翌日、未来と健斗がやってきた。藤堂は既にこの家に住んでいる。お屋敷には個室の使用人室がいくつもあって、未来と健斗にもそれぞれ与えられた。食卓やお風呂なども尊人一家とは別の物が備わっていて、建物は一つだけれど、家は二つあるような、一般家庭で言えば二世帯住宅のようになっていた。ゆえに、玄関も二つある。未来と健斗は使用人用の玄関から入り、自室に案内され、荷物を整理し、制服を着て、それから尊人に会いに行った。いや、会いに行かされた。調子と結子も来ていて、尊人の父則人と、君子と、尊人の5人がそろっているところへ、藤堂に連れられて現れたのだった。
「殿下、これが今後尊人様を警護いたします、近衛兵でございます。」
王族のSP=近衛兵、のリーダーである藤堂が言った。
「山縣未来と申します、殿下。」
「渋谷健斗と申します、殿下。」
二人はひざまずいて挨拶した。
「よろしく頼みます。留学中も尊人が大変お世話になったようですね。感謝いたします。これからも尊人を助けてやってください。」
則人が穏やかに言った。
「はっ。」
未来が言い、二人はひざまずいたまま頭を下げた。
「二人とももういいから、俺の部屋に来てくれ。」
尊人はそう言って、二人に立つよう促した。
「え?」
健斗は尊人に腕を掴まれて立ちかけながら、そこにいる人たちを見回した。
「いいのか?」
健斗がそう尊人に言うと、
「こら!口の利き方に注意しろ。」
藤堂が小声で言った。
「あ、申し訳ありません、殿下。」
健斗が立った状態で尊人に少し頭を下げたので、尊人はちょっと噴き出した。
「ははは。健斗、家の中で俺の事を殿下、なんて呼ばなくていい。未来もな。」
「え、でも・・・。」
未来が藤堂を見る。藤堂は無視していた。
「お二人とも、こちらに座って、留学中のお話でも聞かせてちょうだいな。」
結子がそう言ってソファを勧めた。未来はカチンと固まった。
「どうしたんだ?」
尊人が声をかけると、気を付けのまま首を尊人の方へ向け、
「結子様じゃないか!テレビで見るより美しい!俺、近寄れない、無理、今日会えるなんて思ってなかった!」
小声でそう言うが、結子にも他の皆にも丸聞こえである。けれども上品な一家なので、何事もなかったようににこやかに微笑んでいる。
「姉上様、彼らはまだ王族に慣れていませんから、また今度にしてください。今日は私からいろいろ話をしなければなりませんので。」
尊人は結子にそう言い、未来と健斗を自分の部屋に連れて行った。藤堂は持ち場へ戻った。
「はああ、疲れた。これからここでずっと暮らすのか?」
尊人の部屋に入ると、健斗が大げさにため息をついた。
「なんだよ、嫌なのか?」
尊人はベッドに腰かけ、二人にソファを勧めた。
「・・・そんなんじゃないよ。俺は、尊人の力になりたいさ。」
尻すぼまりな感じで、健斗は言った。
「実際、どのスタンスでお前と接すればいいのか、俺にも分からないよ。」
未来が座りながら言った。健斗も座る。
「俺の事は、今まで通り“尊人”と呼んでくれればいいよ。ただ、よその人がいる時には、一応“尊人様”と呼ぶようにしてくれ。悪いけど。」
尊人が言うと、
「OK!尊人!」
健斗が親指を立て、いいねポーズをして言った。
「けどお前、よくそうやって言葉遣いをころころ変えられるよなあ。俺たちの前では普通にしゃべって、家族の前では丁寧語で。」
未来が感嘆の声を漏らすと、尊人はキョトンとしてから、笑った。
「何言ってんだよ。お前だって、英語と母国語を使い分けてるだろ。それと同じだよ。」
「そうかなあ。」
未来は首をひねった。
そうして未来と健斗と尊人の、新しい生活が始まった。尊人には公務があり、玄関に向かうとそこに未来と健斗が待っており、尊人が玄関を出る時に両脇について外に出る。一緒に車に乗り込み、目的地へ向かう。いつも傍にいて、尊人を守った。御所に帰ってくると、いったんは玄関で別れて、それぞれの部屋に戻るが、二人はこっそりと私服で尊人の部屋に行き、寝るまで三人で過ごすこともよくあった。その時の尊人の部屋だけが、この特殊な王族空間の中で、唯一普通の俗世間が存在する場所だった。
「殿下、これが今後尊人様を警護いたします、近衛兵でございます。」
王族のSP=近衛兵、のリーダーである藤堂が言った。
「山縣未来と申します、殿下。」
「渋谷健斗と申します、殿下。」
二人はひざまずいて挨拶した。
「よろしく頼みます。留学中も尊人が大変お世話になったようですね。感謝いたします。これからも尊人を助けてやってください。」
則人が穏やかに言った。
「はっ。」
未来が言い、二人はひざまずいたまま頭を下げた。
「二人とももういいから、俺の部屋に来てくれ。」
尊人はそう言って、二人に立つよう促した。
「え?」
健斗は尊人に腕を掴まれて立ちかけながら、そこにいる人たちを見回した。
「いいのか?」
健斗がそう尊人に言うと、
「こら!口の利き方に注意しろ。」
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「あ、申し訳ありません、殿下。」
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「ははは。健斗、家の中で俺の事を殿下、なんて呼ばなくていい。未来もな。」
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未来が藤堂を見る。藤堂は無視していた。
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「結子様じゃないか!テレビで見るより美しい!俺、近寄れない、無理、今日会えるなんて思ってなかった!」
小声でそう言うが、結子にも他の皆にも丸聞こえである。けれども上品な一家なので、何事もなかったようににこやかに微笑んでいる。
「姉上様、彼らはまだ王族に慣れていませんから、また今度にしてください。今日は私からいろいろ話をしなければなりませんので。」
尊人は結子にそう言い、未来と健斗を自分の部屋に連れて行った。藤堂は持ち場へ戻った。
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「なんだよ、嫌なのか?」
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「・・・そんなんじゃないよ。俺は、尊人の力になりたいさ。」
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「実際、どのスタンスでお前と接すればいいのか、俺にも分からないよ。」
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「俺の事は、今まで通り“尊人”と呼んでくれればいいよ。ただ、よその人がいる時には、一応“尊人様”と呼ぶようにしてくれ。悪いけど。」
尊人が言うと、
「OK!尊人!」
健斗が親指を立て、いいねポーズをして言った。
「けどお前、よくそうやって言葉遣いをころころ変えられるよなあ。俺たちの前では普通にしゃべって、家族の前では丁寧語で。」
未来が感嘆の声を漏らすと、尊人はキョトンとしてから、笑った。
「何言ってんだよ。お前だって、英語と母国語を使い分けてるだろ。それと同じだよ。」
「そうかなあ。」
未来は首をひねった。
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