人間になりたい~Even if I am King~

夏目碧央

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子孫~芽生え4

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 食事が終わり、未来は遥貴の部屋に行った。この3年間の間に何をして、どこへ行って、どんな事を感じたのか、さっきははにかんでいたものの、やはりまだ小学生。遥貴は未来に写真を見せたり、作った工作を見せたりしながら、いろいろと語ってくれた。背は伸びても、やはり子供だと、未来はベッドに並んで腰かけ、時々遥貴の頭を撫でながら思っていた。
「ああ、俺にも子供がいたらなあ。遥貴みたいな子供が。」
最後にそう言って遥貴の頭をなでなですると、遥貴は真面目な顔で、
「じゃあ、僕はこれから未来の子になろうか?」
と言った。未来は、この顔で俺の子はないだろう、と内心で想いながら、遥貴の優しさに顔をほころばせた。
 遥貴にお休みを言ってから、未来は健斗に尋ねた。
「遥貴はさ、自分の出生の事情、どこまで知ってるんだ?」
健斗は一瞬沈黙した後、
「クローンだって事は、言ってないんだ。」
と言った。
「じゃあ、どこかに母親がいると思っているのか?」
未来が言うと、健斗はただ頷いた。
「そうか。まあ、クローンという話はしにくいか。だけど、そのうち母親に会いたいとか、考えたりするだろうよ。」
未来が言うと、
「未来さ、お前、上手く話してやってくれないかな?」
健斗がそんな事を言い出した。
「は?俺が?そんな大事な事、他人が話していいのかよ。」
未来が驚いて言うと、
「他人の方が話しやすいというか、遥貴が聞きやすいかなと思ってさ。いや、ただの他人じゃだめだけど、未来ならいいんじゃないか、と。」
健斗が変な事を言う。
「そうかぁ?たまにしか会わないような、俺がか?」
未来は怪訝そうに言った。
「だってさ、未来は頭がいいし、なにしろ、遥貴が大好きな相手だしさ。」
そう言われて、未来は悪い気がしなかった。
「分かったよ。滞在中に何とか話してみるよ。」
と、つい請け合ってしまった。

 未来と遥貴はいろいろなところへ出かけた。時にはロンドンまで行って買い物をしたり、映画を見たりした。ハリーポッターの映画に出てくる場所を巡ったり、2階建てバスにも乗った。ある時は近くに釣りに出かけた。その時、静かな場所で、親二人もいないところで、例の話を切り出した。
「遥貴はさ、自分がどうやって生まれたのか、知りたいか?」
未来がぽつりと言うと、遥貴は未来の横顔を凝視した。
「未来は、知ってるの?僕が生まれた時の事を。」
遥貴が問う。未来はちょっと困った。実際は知らぬ間に生まれていたのだから。
「俺は、お前のお父さんたちに聞いただけだが、一応知ってるよ。」
遥貴の方を見ず、川面を見つめながら言った。遥貴は、尊人の事をパパと呼び、健斗の事をダディと呼んでいた。合わせてファーザーズだ。ペアレントと同義。遥貴にとっては。
「お母さんがいなくて、お父さんが二人っていうのは、おかしいと思ったり、おかしいと言われたりしないか?」
未来が言うと、
「僕だけじゃないから。他にもお父さん二人とか、お母さん二人とか。」
「そういう子は、どうやって生まれたのかな?」
「施設から引き取られたらしいよ。生まれたのは、他のお父さんとお母さんからって事だね。」
「そうか。でも、遥貴には他にお母さんがいるわけじゃないんだよ。」
未来が本題を切り出す。
「え、どういうこと?」
「お前は、尊人の子供だ。それは分かるよな?そっくりだもんな。」
遥貴が頷く。
「でも、母親がいるわけじゃない。尊人のクローンなんだ。って言っても分かんないか。」
未来がちらっと遥貴を見ると、思いきり首を傾げている。
「コピーって言ったら分かるか?尊人の細胞をコピーして作られたんだ。」
遥貴は、傾げた首をそのままに、更に眉根を寄せた。
「まだ分かんないか。それならいい。ただ、間違いなく尊人の血を引いていて、他に血を引いている人はいないって事だ。だから、本当のお母さんはどんな人だろうとか、考えなくていいんだ。ただ、これは実はあまり世の中に認められていない事だから、人に言わない方がいい。分かるか?」
未来が聞くと、遥貴は頷いた。
「僕は、パパのコピーなのか。ねえ、未来はパパの事が好きだったの?」
「ゲホッ、ゲホ。何?なんでそう思うんだ?」
未来は思わず咳き込んでしまった。
「・・・何となく。そうだったらいいのになーって・・・。」
「え?」
「ううん、何でもないよ。」
可愛らしく、遥貴は取り繕って釣竿を構えてそっぽを向く。尊人にそっくりだけど、育った環境は全然違う。だから、性格や仕草は、尊人とは少し違うと思う未来だった。だからというわけではないが、未来は遥貴に、本当の事を伝える気になった。
「実は・・・そうなんだ。俺は昔尊人の事が好きだった。尊人は俺を友人としては好きでいてくれたけど、結婚したいのは健斗の方だったんだな。あの二人は今でも幸せそうだな。」
そう言って、未来が遥貴を見ると、遥貴もニッコリして頷いた。パパとダディが幸せそう。それは、子供にとっても幸せな事だ。
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