Snow Burst~出逢ったのは、大学構内でもなくライブ会場でもなく、雪山だった~

夏目碧央

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なぜスキーが上手いのか

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 俺は自分のサークルにさっさと別れを告げ、スキー部が泊まっている宿へ引っ越した。いつも何となく、で生きている俺にしては、今回の判断力と実行力は驚愕の境地だ。
 サークルの方はホテルだったのに、スキー部の宿は合宿所。だいぶレベルが下がった。だが仕方ない。宿泊日数が違うのだ。サークルの方は2泊3日だが、スキー部は一週間泊まるそうだ。やばい、俺パンツない。
「き、急に入部とは・・・奇特な人がいるもんだね。」
スキー部の部長である山縣さんが、メガネを片手で押し上げながら言った。
「すみません。俺、サークルじゃ物足りなくて。俺もスキー部の人達みたいに上手くなりたくて。」
俺がそう言うと、神経質そうな顔から、まんざらでもない感じに変化した山縣部長。
「まあ、そうだろうね。いいだろう。宿の人には了解を得ておくから、君は他の2年生と同じ部屋に泊まってくれ。」
「はい!あっざーす。」
というわけで、2年生の部屋を教えてもらい、入って行った。
 今日の活動を終えた夕方。みんながスキー道具を乾燥室に置いて、続々と部屋に戻っている。続々と、とは言っても、一学年5人もいればいい方だ。4年生は2人しかいないので、3年生と合同の部屋だそうだ。
 2年生は4人だったが、俺が入って5人になった。部屋は10畳ほどの広さで、布団も余っていたし、一人増えたところで特に問題ないようだ。
 夕食は食堂で一斉に済ませ、お風呂は思い思いに大浴場で済ませ、部屋で布団を敷いた。さてさて、ちゃんと自己紹介をしないとな。
「あの、俺三木って言います。経済学部です。今日からよろしくお願いします。」
すると、4人が俺の周りに丸くなって座り、一人一人自己紹介してくれた。
「俺は鷲尾。俺も経済学部です。よろしく。」
「牧谷です。法学部です。よろしく。」
「井村です。情報学部です。よろしく。」
「僕は鈴城です。文学部です。よろしく。」
へえ、雪哉君文学部か。
「ユッキー、学科は?」
「心理学科だよ。」
ユッキー?雪哉だから?鷲尾が雪哉をそう呼んだ。それにしても、同じ部でも学科までは知らなかったようだ。こいつら、まだそれほど深い付き合いじゃないんだな。
「そうなんだ。知らなかったなあ。」
牧谷が言う。
「あの、ユッキーって・・・。」
俺は一応確認してみた。すると、
「ああ、鈴城君は雪哉だからユッキー。鷲尾はワッシーで、牧谷はマッキー。」
井村が説明してくれた。そのネーミングは分かるけど、じゃあ井村は?
「それで、井村はイムラなんだよ。」
雪哉が補足してくれた。何だかなぁ。
「あ、三木君はミッキー?!」
鷲尾が言う。
「うっ、それは・・・。いや、俺は名前が涼介だから、リョウスケって呼んでくれよ。」
小学生の時のあだ名は、確かにミッキーだったんだよ。もうやめてくれ。
「そういえば、三木、じゃない、涼介はどこ出身なの?」
井村に聞かれた。
「俺?東京だよ。みんなは?」
俺が言うと、それぞれ長野、群馬、新潟と答えてくれた。なるほど、皆さん雪国育ちかな。だが雪哉は、
「僕は東京だよ。」
と言った。うそ、雪国じゃないの?あんなにスキーが上手いのに?
「東京なの?東京のどこ?」
俺が聞くと、
「多摩。」
「ああ。」
やっぱり山か。
「ちょっとぉ、それどういう意味だよー。」
雪哉は笑ってそう言った。あ、可愛い。
「いや、山、じゃない坂が多そうだから、足腰鍛えられて、スキーも上手くなったのかなーって。」
苦し紛れのフォロー。
「涼介は?東京のどこ?」
雪哉に聞かれたので、
「目黒。」
と言ったら、
「め、目黒!?」
雪哉ではなく、他の3人が声をそろえて言った。
「な、何おしゃれな所に住んでんだよ。ま、そうだよな。涼介はそういう感じだよな、うん。」
それは無視して、俺は雪哉にもっと聞きたい事があった。
「それで、雪国出身じゃないのに、なんでそんなにスキーが上手いの?」
すると、雪哉は言った。
「小学生の時に体操教室に通ってて、毎年スキーキャンプに参加してたから、かな。」
「なるほど。」
スキーキャンプか。それであんなに格好良く滑れるようになるのかは若干疑問だが、特に雪国に住んでいたとか、親がオリンピック選手だとか、そういう事ではないらしい。
 それにしても、だ。最初は俺を囲んで座っていた面々が、いつの間にか雪哉を中心に丸くなっていた。3人とも、雪哉の顔ばかり見ているような気がする。みんな、雪哉の顔に夢中なんだな、こりゃ。こいつはやたらとイケメンだから・・・なのかな。
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