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沼へ
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客席の一番後ろに座っていると、そのうち開場になり、お客さんが続々と入って来た。皆、チケットを出し、お金を出してドリンク券を買い、バーカウンターでドリンクを注文していた。それからパイプ椅子にめいめい座る。客席には小さめに音楽が流されている。カップル客や女性客が多い。
「祐作さん、何か飲む?」
後ろから声を掛けられ、振り返ると朝陽がいた。だが、先ほどとは違って、バッチリ衣装を着ていた。黒いダボダボの服だが、リハーサルの時にはTシャツだったので、それとはだいぶ違う。髪の毛も、ナチュラルないつもの髪とは違って、テカテカと光っていて、所々立ち上がっている。
「何?」
「え、いや、いつもと違うと思って。」
「そう?ああ、衣装だから?それより、何か飲むなら買って来るよ。」
「えっと、じゃあ……ジンジャーエールで。」
ビール、と言おうとして辞めた。赤ん坊の近くで酒臭くなったらダメだろう。朝陽はバーカウンターへ行き、お金を出してジンジャーエールを買ってきてくれた。
「はい、どうぞ。」
「どうも。」
ジンジャーエールを受け取り、飲んだ。美味い。何しろ、赤ん坊と接触している部分が汗ばんでいて、暑い。飲んでみて、初めて喉が渇いている事に気づいた。
「それじゃ、あともう少し、頼むね。」
朝陽がそう言って、拝むような仕草をした。
「おう、頑張れよ。」
そう声を掛けると、朝陽はニコッと笑って去って行った。
開演時間になった。音楽が止み、客席が暗くなった。そして、ステージにスポットライトが当たる。そこにMCの男性がマイクを持って立っていて、挨拶を始めた。ひとしきり笑いを取った後、どうぞ、の声掛けと共に音楽が大音量で流れた。
ビックリした。ビックリしたと同時に、里奈が起きるのでは、と思った。だが、起きない。すごい。
「お前、こういう所に慣れてるのか?」
里奈に向かって小さい声で呟いた。
グループ毎にダンスパフォーマンスが披露されていった。3つ目のグループに朝陽が現れた。あの衣装の人たちが出てきたからすぐにピンと来た。ヒップホップというのだろうか。
朝陽が踊っている。生き生きとしていて、キレッキレで、決めのポーズでは歓声が起こる。俺も、歓声を上げていたと思う。いや、声も出なかっただろうか。鼓動がやけに速い。気づけば胸に抱いた赤ん坊を抱きしめていた。
「里奈、お前のおじさんは、なんてカッコいいんだ。あんなにカッコいいのに、あんなに可愛いのは何故なんだ。」
「あう、ああう。」
これまたビックリした。里奈がしゃべった。里奈はいつの間にか目を覚ましていて、ちゃんと返事をしてくれたのだ。
「そうか、お前もおじさんがカッコいいと思うのか、そうか。」
里奈の頭を撫でた。
「祐作さん、何か飲む?」
後ろから声を掛けられ、振り返ると朝陽がいた。だが、先ほどとは違って、バッチリ衣装を着ていた。黒いダボダボの服だが、リハーサルの時にはTシャツだったので、それとはだいぶ違う。髪の毛も、ナチュラルないつもの髪とは違って、テカテカと光っていて、所々立ち上がっている。
「何?」
「え、いや、いつもと違うと思って。」
「そう?ああ、衣装だから?それより、何か飲むなら買って来るよ。」
「えっと、じゃあ……ジンジャーエールで。」
ビール、と言おうとして辞めた。赤ん坊の近くで酒臭くなったらダメだろう。朝陽はバーカウンターへ行き、お金を出してジンジャーエールを買ってきてくれた。
「はい、どうぞ。」
「どうも。」
ジンジャーエールを受け取り、飲んだ。美味い。何しろ、赤ん坊と接触している部分が汗ばんでいて、暑い。飲んでみて、初めて喉が渇いている事に気づいた。
「それじゃ、あともう少し、頼むね。」
朝陽がそう言って、拝むような仕草をした。
「おう、頑張れよ。」
そう声を掛けると、朝陽はニコッと笑って去って行った。
開演時間になった。音楽が止み、客席が暗くなった。そして、ステージにスポットライトが当たる。そこにMCの男性がマイクを持って立っていて、挨拶を始めた。ひとしきり笑いを取った後、どうぞ、の声掛けと共に音楽が大音量で流れた。
ビックリした。ビックリしたと同時に、里奈が起きるのでは、と思った。だが、起きない。すごい。
「お前、こういう所に慣れてるのか?」
里奈に向かって小さい声で呟いた。
グループ毎にダンスパフォーマンスが披露されていった。3つ目のグループに朝陽が現れた。あの衣装の人たちが出てきたからすぐにピンと来た。ヒップホップというのだろうか。
朝陽が踊っている。生き生きとしていて、キレッキレで、決めのポーズでは歓声が起こる。俺も、歓声を上げていたと思う。いや、声も出なかっただろうか。鼓動がやけに速い。気づけば胸に抱いた赤ん坊を抱きしめていた。
「里奈、お前のおじさんは、なんてカッコいいんだ。あんなにカッコいいのに、あんなに可愛いのは何故なんだ。」
「あう、ああう。」
これまたビックリした。里奈がしゃべった。里奈はいつの間にか目を覚ましていて、ちゃんと返事をしてくれたのだ。
「そうか、お前もおじさんがカッコいいと思うのか、そうか。」
里奈の頭を撫でた。
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