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結婚しようよ
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赤ん坊の成長は目覚ましい。次に朝陽の家に行った時には、里奈がベビーベッドの中で立っていた。ベッドの柵に手を掛け、
「いえい、いえい、いえい」
と言いながら、膝を曲げたり伸ばしたりしていた。
「おお、里奈、ダンスしてるのか?」
そう言って頭を撫でてやると、
「いえい!」
ひときわ大きな声で言った。
「そろそろ歩くはずなんだけどね。もう1歳1か月を過ぎたから。」
朝陽が言った。そうか、もう抱っこバンドではなく、靴を履かせて歩かせるのか。それもまた、大変そうだ。
「まんまんま」
里奈が言った。
「はいはい、今出来るからね。」
朝陽は何やら料理をしているのだった。土曜日の昼だ。
「祐作さん、里奈をここに座らせて。」
朝陽に言われて、里奈を抱っこしてベッドから降ろし、赤ちゃん用の椅子に座らせた。シートベルトのようなものが付いている。それを締めてやると、朝陽は前掛けを里奈に掛けた。そして、お皿とスプーンをテーブルに置いた。
「はい、あーん。」
朝陽がスプーンで食べ物をすくってそう言うと、
「あー」
里奈がそう言って口を開けた。口に食べ物が入ると、里奈はもぐもぐとやっている。
「美味しい?」
朝陽が聞くと、
「おいち、おいち」
里奈はそう言いながら、手のひらで頬っぺたをペシペシと叩いた。
「おぉ、可愛い!」
思わずスマホを取り出した。
「もう一回やって、もう一回。」
「何?」
「美味しい美味しいをやらせて。」
「しょうがないな。」
朝陽は笑って、もう一度食べさせ、美味しい?と聞いてくれた。里奈がおいち、おいち、とやるのを、動画で撮った。
「ねえ、その動画俺にも送って。」
朝陽に言われ、すぐに送った。
「両親に送ってあげよう。」
朝陽がそう言った。
「なあ、これからも里奈を育てるのか?」
「そのつもりだけど?」
「そっか。なあ、俺と結婚しない?」
「何言ってんの。結婚できないでしょ。」
「いや、パートナーシップ制度とかあるじゃないか。とりあえず、一緒に住もうよ。」
実は、何度も誘っている。今日で5回目くらいか。だが、いつもはぐらかされる。現実的ではないとか、考えておくとか。
「あのさ、祐作さんはきっと、女の人と結婚すると思うんだよね。だから、俺とそういうの、しない方がいいと思うよ。」
だが、今日はもう少し具体的な事を言われた。そうか、それを気にしていたのか。
「男とか女とか、そういうのは関係ないよ。俺は朝陽の事が好きで、ずっと一緒にいたいと思ってるんだから。」
「俺はまだ若いからいいけどさ。祐作さん、そろそろ本気で将来の事考えないと、ダメなんじゃない?」
言われてしまった。歳の差。朝陽はまだ二十歳を過ぎたばかりだが、こっちはそろそろ三十路だ。確かに、本当の自分の子供を持つなら、そろそろ潮時だろう。
「でも、好きな女がいないのに、女と結婚しようと思ったって無理だろ。朝陽以外の人と一緒になる気はないんだって。どうして分かってくれないかなあ。」
だが、朝陽は何も言わず、
「はい、あーん。」
と、里奈にご飯を食べさせる。
「ねえ、里奈のご飯が終わったら、外に食べに出ようよ。」
「えー、いいよ。食材ならあるし。」
「それは夕飯にすればいいだろ。ご馳走するからさ。」
朝陽は平日、コンビニでバイトをしている。夜や休日にダンスのリハーサルや本番がある時には、ベビーシッターを利用している。それほどリッチな生活をしているとは思えない。
「祐作さん、金遣い荒いよねー。そういえば、祐作さんてどんな仕事してんの?」
「ああ、言ってなかったか。建設会社に勤めてるんだ。インテリアのコーディネートなんかを主にやってるんだけど……ピンと来ないか。」
笑ってそう言ったら、朝陽が少し顔を曇らせた。
「どうした?」
「え?ううん、別に、何も。」
朝陽は曇らせた顔をすぐに笑顔に戻した。そして、
「俺の姉ちゃんも、建設会社に勤めてたからさ。ちょっと思い出しただけ。」
そう、言ったのだった。
「いえい、いえい、いえい」
と言いながら、膝を曲げたり伸ばしたりしていた。
「おお、里奈、ダンスしてるのか?」
そう言って頭を撫でてやると、
「いえい!」
ひときわ大きな声で言った。
「そろそろ歩くはずなんだけどね。もう1歳1か月を過ぎたから。」
朝陽が言った。そうか、もう抱っこバンドではなく、靴を履かせて歩かせるのか。それもまた、大変そうだ。
「まんまんま」
里奈が言った。
「はいはい、今出来るからね。」
朝陽は何やら料理をしているのだった。土曜日の昼だ。
「祐作さん、里奈をここに座らせて。」
朝陽に言われて、里奈を抱っこしてベッドから降ろし、赤ちゃん用の椅子に座らせた。シートベルトのようなものが付いている。それを締めてやると、朝陽は前掛けを里奈に掛けた。そして、お皿とスプーンをテーブルに置いた。
「はい、あーん。」
朝陽がスプーンで食べ物をすくってそう言うと、
「あー」
里奈がそう言って口を開けた。口に食べ物が入ると、里奈はもぐもぐとやっている。
「美味しい?」
朝陽が聞くと、
「おいち、おいち」
里奈はそう言いながら、手のひらで頬っぺたをペシペシと叩いた。
「おぉ、可愛い!」
思わずスマホを取り出した。
「もう一回やって、もう一回。」
「何?」
「美味しい美味しいをやらせて。」
「しょうがないな。」
朝陽は笑って、もう一度食べさせ、美味しい?と聞いてくれた。里奈がおいち、おいち、とやるのを、動画で撮った。
「ねえ、その動画俺にも送って。」
朝陽に言われ、すぐに送った。
「両親に送ってあげよう。」
朝陽がそう言った。
「なあ、これからも里奈を育てるのか?」
「そのつもりだけど?」
「そっか。なあ、俺と結婚しない?」
「何言ってんの。結婚できないでしょ。」
「いや、パートナーシップ制度とかあるじゃないか。とりあえず、一緒に住もうよ。」
実は、何度も誘っている。今日で5回目くらいか。だが、いつもはぐらかされる。現実的ではないとか、考えておくとか。
「あのさ、祐作さんはきっと、女の人と結婚すると思うんだよね。だから、俺とそういうの、しない方がいいと思うよ。」
だが、今日はもう少し具体的な事を言われた。そうか、それを気にしていたのか。
「男とか女とか、そういうのは関係ないよ。俺は朝陽の事が好きで、ずっと一緒にいたいと思ってるんだから。」
「俺はまだ若いからいいけどさ。祐作さん、そろそろ本気で将来の事考えないと、ダメなんじゃない?」
言われてしまった。歳の差。朝陽はまだ二十歳を過ぎたばかりだが、こっちはそろそろ三十路だ。確かに、本当の自分の子供を持つなら、そろそろ潮時だろう。
「でも、好きな女がいないのに、女と結婚しようと思ったって無理だろ。朝陽以外の人と一緒になる気はないんだって。どうして分かってくれないかなあ。」
だが、朝陽は何も言わず、
「はい、あーん。」
と、里奈にご飯を食べさせる。
「ねえ、里奈のご飯が終わったら、外に食べに出ようよ。」
「えー、いいよ。食材ならあるし。」
「それは夕飯にすればいいだろ。ご馳走するからさ。」
朝陽は平日、コンビニでバイトをしている。夜や休日にダンスのリハーサルや本番がある時には、ベビーシッターを利用している。それほどリッチな生活をしているとは思えない。
「祐作さん、金遣い荒いよねー。そういえば、祐作さんてどんな仕事してんの?」
「ああ、言ってなかったか。建設会社に勤めてるんだ。インテリアのコーディネートなんかを主にやってるんだけど……ピンと来ないか。」
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「どうした?」
「え?ううん、別に、何も。」
朝陽は曇らせた顔をすぐに笑顔に戻した。そして、
「俺の姉ちゃんも、建設会社に勤めてたからさ。ちょっと思い出しただけ。」
そう、言ったのだった。
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