怒涛のソロ活(末っ子4)

夏目碧央

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お怒り?

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 それからも、毎日歌の練習とダンスの練習を重ねた。俺のアメリカ行きの日が2日後に迫った日の夜、テツヤ兄さんがパリから帰って来た。
(レイジ、家にいるか?)
テツヤ兄さんからメッセージが来た。そろそろ空港に到着した頃だろうか。
(いるよ)
そう返すと、
(今から行く)
と来た。
(え?荷物を持ったままで?)
と返したら、
(もう着く)
と、いつにも増してシンプルな返事。って、もう着く?
「ピンポーン!」
来た!玄関を開けると、サングラスをかけ、スーツケースを持ったテツヤ兄さんがいた。そして、すぐにぐいぐいと入って来る。どうしたんだ?トイレにでも行きたいのか?
 いや、違うらしい。サングラスを取ったテツヤ兄さんは、ちょっと、いやかなり、鋭い目で俺を見ている。
「あ、迎えに行けなくてごめん。洗濯物が溜まっててさ。今2回目回してるところで。」
何しろ、明後日海外に飛び立つのに、持っていく下着などがちゃんと乾いていないと困るから。
 だが、テツヤ兄さんは何も言わない。俺をにらみつけている。カッコいいけど、迫力があってちょっと怖い。俺、何か悪い事したのかな。
「あの、テツヤ兄さん、どうしたの?」
テツヤ兄さんは何も言わずにこちらへ歩いて来て、そのままダン!と壁ドンされた。
「お前、俺がいない間に何浮気してんだよ。」
すごまれる。
「え?何?浮気?そんな事、してないよ。するわけないじゃん!」
慌てる。
「夜中にここで、イチャイチャしてただろ。」
すぐ横のテーブルを指さすテツヤ兄さん。でも、目は俺の目を見据えたままだ。
「イチャイチャ?そんなの、してないよ。一体誰の事を言ってんの?」
必死に言い返す俺。テツヤ兄さんは何を怒ってるんだろう。うちに誰か来たんだっけ?そうだ、ミツルが来たな。
「ミツルの事?ミツルが飲もうって言ってうちに来たけど、イチャイチャなんて、してないよ?当たり前じゃん。」
「してただろ。見たぞ、ライブ放送で。」
ん?ああ、あの放送か。深夜の。酔っぱらっての……何かしたっけ?俺が首をかしげていると、
「あいつが、お前の肩に頭を乗っけてただろ!」
テツヤ兄さんが言った。そうだっけ?
「あいつ、前にも同じ事してただろ。いや違う、前はお前があいつの肩に頭を乗っけてた!」
「前って、なんのこと?」
「インスタに載せた写真だよ!」
アカウントを削除する前、確かに一枚ミツルとの写真を載せたような気がする。……っていうか、これって嫉妬だよな?テツヤ兄さんが、ミツルに嫉妬してるんだよな。
「もしかして、妬いてくれてんの?」
俺、思わず頬が緩む。怒られてるのに、にらまれてるのに、ニヤけるのを止められない。
「おまっ、何を笑ってるんだよ。」
と言いながら、テツヤ兄さんもちょっと笑ってしまっている。俺がニヤニヤして見ていると、
「嫉妬して悪いか!」
笑いながら、テツヤ兄さんが言った。俺は思わず、テツヤ兄さんを抱きしめた。
「分かってるでしょ?ミツルはただの友達だよ。ん?いや待てよ。あいつ何しに来たんだっけ。そうだ、テツヤ兄さんがどこにいるかって聞いてたんだよな。そうだよ、むしろ俺じゃなくてテツヤ兄さんに気があるんじゃないか、あいつ?」
でも、今はそんな事はどうでもいい。テツヤ兄さんが俺にキスをしてきて、話は終わり。会えない間の空白を埋めるように、俺たちはしばらく情熱的なキスを続けたのだった。嫉妬は愛のスパイス、だな。
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