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単車

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 ロックは軟禁状態だった。小屋の外へ出て、周りの地形を確かめる。
「小麦が出来ない、か。山間部は水はけが良いから、小麦は出来ると思っていたのだが。」
ロックは土を触ってみた。
「ん?ああ、そうか。山は雨が多いのか。湿った風が斜面に当たるから・・・。なるほど。」
ブロブロ、ブロロロー
 激しい爆音が響いた。ロックが振り返ると、斜面をでっかいオートバイが上ってきた。そこに乗っていたのは、
「レインさん!?」
レインだった。ロックの目の前に乗り付けたが、当然ロックを見張っていた軍人達に捕まる。
「ちょっ、放せよ!何でいきなり捕まえるんだよ!」
レインがもがくも、どうにもならず。
「どうして来たんですか?っていうか、どうしてここが分かったんですか?いや、この単車は何ですか?」
ロックは動揺して早口でまくしたてる。だが、レインは捕まって連れて行かれた。

 「将軍殿!あの生物学者の元へ、絶世の美男が現れました!」
将軍の元へ、そんな知らせが届いた。
「何?絶世の美男だと?連れてこい。」
レインはさっきロックが連れて行かれた大広間へ、やはり後ろ手に縛られて連れていかれた。そして将軍の前に跪かされた。
「ほお、確かに美しいな。」
将軍はレインに近づいて片膝をつき、その顔を触った。
「ムサシノ国にはこんな美男がたくさんいるのか?」
将軍が言うと、
「たくさん居てたまるか。」
レインが吐き捨てるように言った。そこへ、ロックが連れてこられ、レインよりも少し後ろに跪かされた。
「あ、レインさん!おい!レインさんに触るな!」
ロックがわめく。
「レインと言うのか。もしかして、君たちは恋人同士なのかな?へえ、流石生物学界の第一人者だけある。こんな美男を恋人にするとはな。」
将軍がそう言ったので、
「は?生物学界?第一人者?」
レインの頭はハテナだらけになった。
「誰の事?」
レインがそう呟くと、
「お前、あの男が学者だという事を知らんのか?」
将軍がロックを指さして言った。
「え?だって、ロッキーは畑仕事とカフェの経営をしていて、たまに研究とかしてるけど・・・。」
レインは急に自信なさげに小さい声になって、ロックの事を振り返った。
「あははは!知らなかったのか。ロックは我が国でも有名な学者だよ。論文もたくさん発表している。だが、それを知らずして、なぜあんな地味な男とつき合っているのだ?」
将軍がまだレインの顔に手を添えながら言った。
「ロッキーは優しいもん・・・。」
レインはそう言ったが、先ほどまでの威勢が無くなってしまった。ロックの本当の姿を知らなかった事に、多少なりともショックを受けているのだ。
「お前、ここにとどまって私のものにならないか?そうすれば、望む限りの贅沢をさせてやるぞ。なんなら、ロックを家来にしてもいい。そうだな、ロックをうちで雇っておけば、色々便利だな、うん。」
将軍はそう言うと、立ち上がって椅子に戻った。
「ロック、こちらで話し合った結果、君の提案に乗ろうと思う。トレードの話だ。」
将軍がそう言った。
「ラブフラワーの殖やし方を教えてくれるのか?」
ロックが言うと、
「いや、君とのトレードではない。ムサシノ国とのトレードの方だ。やはり、ラブフラワーの殖やし方は教えられないというのが我が国の専門家の意見だ。」
将軍が言った。
「そうか。それなら仕方がない。俺はこのまま帰らせてもらう。」
ロックはそう言うと、右と左に立ってロックの腕を押さえつけている軍人の手を、無理矢理振り払って立ち上がった。
「そうか。だが、この美しい青年は置いていってもらおう。せっかく来てくれたのだ。すぐ返しては勿体ない。」
将軍が言う。
「何!?バカなことを言うな。レインさんは絶対に連れて帰る。」
ロックがそう言うと、
「ロッキー・・・。」
レインが呟いた。
「レイン、お前はどうする?ここにいる方が、贅沢が出来て良いと思うぞ。」
将軍が言う。
「バカにするな。僕はロッキーを迎えに来たんだ。ずっとロッキーと一緒にいる!」
レインが断言すると、将軍は溜息を一つ吐き、
「レインよ、お前ほどの男が、どうしてあんな男とつき合っているのだ。たとえ頭脳はもう少し普通でも、もっと顔の良い男はたくさんいるだろう?そういう男とつき合おうとは思わないのか?」
将軍はそう言うと、
「顔の良い男?そんなのはな、鏡があれば十分、間に合ってるんだよ。」
レインはそう言って、ぷいっとそっぽを向いた。
 一瞬その場がシーンとなった。だが、次の瞬間、ロックがぷっと吹き出した。
「ぷっ、あははは。流石レインさんだ。」
ロックが笑って言うと、周りの軍人も何となく笑う。
「そこ、笑うとこじゃないんだけど!」
レインはそう言った勢いで、押さえつけられている手を振り解き、立ち上がった。そして、それを見たロックが、レインの元へ素早く歩いていき、レインの肩を抱いた。
「将軍、俺たちを無事に帰してくれたら、良い事を教えてやろう。それが、俺との新しいトレードだ。」
ロックは将軍に向かってそう言った。
「良い事?それが何なのか、聞いてから判断してもよいのかな?」
将軍が言う。
「いいけどな、あの扉の前で言う。」
ロックが入って来た扉を指さす。そして、そこへレインを連れて歩いて行った。
「まあいいだろう。言ってみろ。」
将軍が言う。ロックとレインは扉の前へ歩いて行き、近くにいた軍人にしっしっと手で払いのけるような仕草をした。
「良い事とは何だ?」
将軍が椅子に座ったまま言うと、ロックは、
「将軍、この国の土は、確かに小麦には向いていない。だから、米を作るといい。では。」
そう言うと、扉を開けてレインと共に出て行った。
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