ジェラsickリレー

夏目碧央

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将来の選択に自由が欲しい男子

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 机に突っ伏して眠っていた保は、授業が始まってもうつらうつらとしていた。保は大学受験をしないつもりだ。勉強はそこそこ頑張ればいい。卒業さえできればいいのだ。
 保の父は2年前に他界し、母親が一家の家計を支えていた。とはいえ、長く専業主婦をしていた母親が、いきなりたくさん稼げるはずもない。保は夜にはコンビニでバイトをし、自分の小遣いくらいは稼いだが、とうてい大学に行く金はなかった。自分は国立の大学へ行けるほど優秀ではないし、奨学金をもらって私大に行くにしても、塾・予備校代が出せない。自力で受験を勝ち抜けるとは思えなかった。それよりも、早くちゃんと稼ぐようになって、母親を楽にしてやりたかった。
 保には弟と妹がいた。中学生の弟と、小学生の妹だ。母親の帰りが遅いので、夕飯は保が用意した。食うに困るという程ではない。だが、学校で友達の話を耳にすると、みじめな気分になる事も多い。
 どこで遊んだ、何を買った、そういう話はまだいい。一番保の気分を落としたのは、進路の話だった。友達はみな、大学へ進学する予定だ。どんな大学があるか、どんな学部があるか、オープンキャンパスがいつだ、どこのオープンキャンパスに行くか。そんな話は日常茶飯事だ。
 大学に行きたい、という程でもない。だが、どこへ行きたいか、という希望を語り合う友達を見ていると、自分にはない「選択肢」がある事に羨ましさ、妬ましさを感じてしまう。なぜ自分には将来の選択肢がないのか。もちろん、どんな職業を選ぶかという選択肢はあるのだが、高校に来る求人情報は少ない。そして、その中から選ぶしかないという事も知っている。出世も望めない。大企業などもってのほか。どう考えても、高卒の自分には、本来の自分が望むような未来が見えない。
(いいなあ、あいつらには自由があって。)
保は、大学のパンフレットを見比べて笑う松本叶絵を見て、進路相談室から借りてきた赤本を手に話をしている金田灯里を見て、勉強に余念がない杉橋右京を見て、ため息をついた。

 みんな幸せそうなのに、自分だけが辛い。みんな幸せそうなのに……本当に、自分だけ?
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