地球を守れ-Save The Earth-

夏目碧央

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段階を踏んで

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   そうしてSTEは無事に家に帰って来た。
篤:「あー、疲れた。早くベッドで寝たいよ。」
瑠偉:「一日で帰って来られてよかったねー。」
涼:「人生、何が起こるか分からないねー、ほんとに。」
碧央:「また、フェローのありがたみを強く感じたよね。」
大樹:「ああ。これからもいい歌を作って、いいパフォーマンスをして行かないと
  な。」
碧央:「うん。」
  ソファにぐったり座り込んでいた面々だったが、大樹の言葉によってまたやる気
  がみなぎる。
内海:「また明日から仕事だからね。今日はゆっくり休んで。」
メンバー:「はーい。」
  お開き、の雰囲気になった時、流星が無言で立ち上がり、
流星:「光輝、ちょっと俺の部屋に来て。」
  と、言ってすぐに自分の部屋に向かって歩き出した。
光輝:「うん。」
  光輝がその後を歩いて行った。
涼:「なんだ?2人して深刻な顔しちゃって。まさか、別れ話?」
大樹:「もしかして、今更告白だったりして?」
涼:「まっさかー。」
  涼と大樹は、あはははと大笑いした。瑠偉は苦笑い。みんなにバレてるじゃない
  か、と。だが、実際あの2人に何があったのか、心配でもあった。

 光輝:「あの、流星くん?どうしたの?」
  流星の部屋に入り、ドアを閉めると、光輝が不安そうに尋ねた。
流星:「光輝、俺は気づいたんだ。」
光輝:「何を?」
流星:「俺たちの時間は無限ではない。明日、どうなるかも分からない。」
光輝:「そうだね。明日も同じ明日が来るとは限らないよね。」
流星:「だから、大事な事を先延ばしにしてはいけない、と気づいたんだ。」
光輝:「なるほど。それで、大事な事って?」
流星:「それは・・・。」
  流星は突然、光輝を突き飛ばした。光輝はすっとんで、ベッドの上でバウンドし
  た。すかさず、その上に流星が乗っかって来た。
光輝:「うわー、ちょっと待って!流星くん!」
流星:「待てない!今しないと後悔するかもしれない!」
光輝:「いや、待って!ダメだって!いくらなんでも、段階ってもんがあるでし
  ょ!」
流星:「光輝!」
光輝:「やーだっ!」
  しばらくもみ合ったが、光輝があまりにジタバタするので、流星も諦めざるを得
  ず、光輝の上からどいた。光輝が涙目になって流星を睨んでいる。それを見た流
  星は、ハッとして、急に冷や汗をかいた。熱に浮かされていたのが、突然目が覚
  めたような、冷や水を浴びせられたような感覚。
流星:「こ、光輝、ごめん。その・・・焦り過ぎたよ。」
  流星が光輝の方に手を伸ばすと、光輝はその手をぴしゃりと叩いた。
流星:「あ・・・俺、嫌われた?ど、どうしよう、光輝、ほんとごめん!何やってん
  だろ、俺。光輝に嫌がられたら元も子もないのに。ただ、大切だからっていつま
  でも手を出さずにいたら、後で後悔するって思って、それで・・・。」
  しばし沈黙し、2人は見つめ合った。
光輝:「・・・もう、分かったよ。」
  光輝はお山座りになって、膝をぎゅっと抱いた。
流星:「光輝?」
光輝:「嫌いになんて、なってないよ。」
流星:「でも、怒った?」
光輝:「うーん、怒ってはいないよ。びっくりしただけ。でも、ああいうの、流星く
  んらしくない。ちょっと怖かったもん。だから、嫌だ。」
流星:「うん、ごめん。」
光輝:「僕も、同じことを思っていたよ。明日何が起こるか分からないから、後回し
  にしていちゃいけないって。だから、昨日は僕から・・・しようと思っていたん
  だ。」
  光輝の最後の言葉は、消え入りそうな程小さくなった。
流星:「え?何?」
  よく聞こえなかったので、流星が顔を近づけた。その時、光輝は流星に、キスを
  した。
光輝:「まずは、ここからでしょ?」
  流星は、一瞬面食らって目をパチパチさせたが、その後でふっと笑った。
流星:「そうだよな。」
  2人はふふふ、と笑い合った。そして、流星は光輝の肩に手をかけ、2人はもう
  一度口づけを交わした。

 碧央:「まぁた、ここにいるし。」
  碧央が呆れてそう言った。流星の部屋のドアに、瑠偉がへばりついていた。
碧央:「そんなに、あいつらの事が気になるわけ?」
  瑠偉は、そうっとドアから離れ、碧央の所へ行った。
瑠偉:「だってぇ、気になるよぅ。碧央くんは気にならないの?」
碧央:「別に、気にならないね。」
瑠偉:「碧央くんはクールだねえ。」
  そう言われて、碧央は顔を曇らせた。碧央は、昔からあまり人に関心がなく、何
  度も友達から「冷たい人」だと言われてきた。瑠偉には特別な関心があるのだか
  ら、今は「冷たい人」ではないと思っていたのに、その瑠偉からクールだと言わ
  れてしまった。胸に冷たいものが降りて来た。
瑠偉:「碧央くん、どうしたの?クールでかっこいいって意味だよ?」
  瑠偉は碧央の表情を見て不安になり、碧央の腰に手を回して、ぎゅっと引き寄せ
  た。そして顔を覗き込む。
碧央:「俺は冷たい人間か?」
瑠偉:「え?そんな事ないよ、全然。碧央くんは温かい人だよ。」
碧央:「でも、今クールだって言ったじゃないか。」
瑠偉:「冷たいんじゃなくて、涼しいんだよ。暑苦しくないの。」
碧央:「は?何それ。」
瑠偉:「もう、その言い方は冷たいよ。人の事を詮索するのはカッコ悪いし、暑苦し
  いよね。反省します。」
碧央:「いや、お前は下世話な興味じゃなくて、あいつらの事を心配しているんだよ
  な。」
瑠偉:「まあ、心配もしているけど・・・興味もあるんだよね。」
  瑠偉はそう言って、ペロッと舌を出した。
瑠偉:「まあ、後で光輝くんに聞けばいいや。行こう行こう。」
  瑠偉はそう言うと、今度は碧央の肩に手を置き、自分の部屋の方へ促した。
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