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第1章 虚像の輝きと冷たい光
ひとりぼっちの人魚姫
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パァンッ!
破裂するような音があたりに響いた。
それと同時にほおに強い衝撃が走る。
「目障りだわ。あんたみたいなものがなんでここにいるの?」
目の前にいる女性は私を鋭く睨みつけながら、扇を弄んでいる。私はその扇で叩かれたようだ。
かなり固い扇だったようで、すぐにほおが腫れて熱をもつ。
ジンジン痛むほおを無視して、私は女性を見た。
「文句がおありでしたら王様におっしゃってください。私は王様の招待を受けてこの宴に来たのです」
姉姫の瞳には隠し切れない憎悪と嫉妬が浮かんでいる。
どこにいたって視界に入れば難癖つけて叩いてくる女性は姉姫だ。
彼女には何を言っても道理の通らない言葉で返される。
説得なんてできるはずがない。
「私は教養を持たない者は宴に出る資格はないと親切に教えてあげたのよ。もっとも、言ってもわからないようだから、その体に教えこんでいるのだけど」
彼女はそう言って私を嗤った。
(この国で持つべき教養を与えないようにしたのは誰よ…)
心の中で思ったそれを私は必死に飲み込んだ。
彼女に言っても意味がない。もしかしたら、また扇で叩かれるかもしれない。
(これ以上ほおが腫れていたら、お婆さんが泣いてしまうかもしれない)
私はただ一人、私を大切にしてくれるしわくちゃの老婆を思い浮かべた。
これは宴の中で行われている騒ぎであるが、誰も仲裁に入ろうとはしない。
それはある意味日常茶飯事なことで、姉姫に同意している者も少なくない。この国では美しきものは妬まれ、虐げられる。
私は泣きもせずただ暴言を吐く姉の声を聞き流していた。少し周りを見れば、憎しみ、妬み、恨み、嫉みなど負の視線が突き刺さる。
普通なら、怒ったり、泣いたり、取り乱すところだろうが、私は何も感じない。
十数年言われ続けられれば嫌でも慣れて、何も感じなくなる。
無駄だと知っていても私は言葉を続ける。
「私はこの国の姫です。姫は王に従うが定め。私ではどうにもできません」
「身の程をわきまえなさい。誰もあんたなんか姫だと認めていないわ」
(父王から儀礼的にも招待状が届いている時点で認められているも同然。それをなぜわからないのだろうか…)
心の中で毒を吐きながら、私はままならない状況に頭を痛めた。
誰かの手を求めるのは愚の骨頂だろう。きっと誰も手を差し伸べてはくれないのだから。
(早くお婆さんの家に行きたいなぁ。きっと…いや、絶対この宴より楽しいに決まっている)
私は言い返す事をやめて現実逃避する事にした。
これ以上は無駄なことを知っていたからだ。
聞いているようで聞いていない、心を守るために必要な事だけど知りたくなかった技術。
その後、ワインをかけられてドレスを台無しにされ、宴から退場する事になった。
宴から退場できてホッとしている。あの場にいても事態が悪いことになりこそすれ、よくはならないのだから。
私の心は疲れ果てていた。
破裂するような音があたりに響いた。
それと同時にほおに強い衝撃が走る。
「目障りだわ。あんたみたいなものがなんでここにいるの?」
目の前にいる女性は私を鋭く睨みつけながら、扇を弄んでいる。私はその扇で叩かれたようだ。
かなり固い扇だったようで、すぐにほおが腫れて熱をもつ。
ジンジン痛むほおを無視して、私は女性を見た。
「文句がおありでしたら王様におっしゃってください。私は王様の招待を受けてこの宴に来たのです」
姉姫の瞳には隠し切れない憎悪と嫉妬が浮かんでいる。
どこにいたって視界に入れば難癖つけて叩いてくる女性は姉姫だ。
彼女には何を言っても道理の通らない言葉で返される。
説得なんてできるはずがない。
「私は教養を持たない者は宴に出る資格はないと親切に教えてあげたのよ。もっとも、言ってもわからないようだから、その体に教えこんでいるのだけど」
彼女はそう言って私を嗤った。
(この国で持つべき教養を与えないようにしたのは誰よ…)
心の中で思ったそれを私は必死に飲み込んだ。
彼女に言っても意味がない。もしかしたら、また扇で叩かれるかもしれない。
(これ以上ほおが腫れていたら、お婆さんが泣いてしまうかもしれない)
私はただ一人、私を大切にしてくれるしわくちゃの老婆を思い浮かべた。
これは宴の中で行われている騒ぎであるが、誰も仲裁に入ろうとはしない。
それはある意味日常茶飯事なことで、姉姫に同意している者も少なくない。この国では美しきものは妬まれ、虐げられる。
私は泣きもせずただ暴言を吐く姉の声を聞き流していた。少し周りを見れば、憎しみ、妬み、恨み、嫉みなど負の視線が突き刺さる。
普通なら、怒ったり、泣いたり、取り乱すところだろうが、私は何も感じない。
十数年言われ続けられれば嫌でも慣れて、何も感じなくなる。
無駄だと知っていても私は言葉を続ける。
「私はこの国の姫です。姫は王に従うが定め。私ではどうにもできません」
「身の程をわきまえなさい。誰もあんたなんか姫だと認めていないわ」
(父王から儀礼的にも招待状が届いている時点で認められているも同然。それをなぜわからないのだろうか…)
心の中で毒を吐きながら、私はままならない状況に頭を痛めた。
誰かの手を求めるのは愚の骨頂だろう。きっと誰も手を差し伸べてはくれないのだから。
(早くお婆さんの家に行きたいなぁ。きっと…いや、絶対この宴より楽しいに決まっている)
私は言い返す事をやめて現実逃避する事にした。
これ以上は無駄なことを知っていたからだ。
聞いているようで聞いていない、心を守るために必要な事だけど知りたくなかった技術。
その後、ワインをかけられてドレスを台無しにされ、宴から退場する事になった。
宴から退場できてホッとしている。あの場にいても事態が悪いことになりこそすれ、よくはならないのだから。
私の心は疲れ果てていた。
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