ちょっと事故った人魚姫

ラズ

文字の大きさ
上 下
26 / 73
第3章 姫(?)からメイドになりました

それから…(のち、4日間)

しおりを挟む
サイスにベッドから出ることを許された私は、遅れた分頑張った。
…いや、頑張ろうとした。

寝込んだのが悪かったのか…というより悪かったのだろう。
とても心配されて仕事も礼儀作法も1時間ずつ、休憩が設けられることになってしまった。
心配してくれるのは嬉しいが、寝込んでいて遅れているのにこれ以上遅れる要素を増やしたくない。
そう伝えたのだが…

レナードの場合
「だめです。男である私の体力が違うのを私は忘れていました。また何かあれば困ります。休憩時間はしっかりとります」

アリアナの場合
「あらあら、休憩するのはお嫌い?でも、私もあまり長時間続けて教えるのは大変なの。私が休みたいから付き合ってくれないかしら?」

そう言われてしまえば何も言えなくなる。
レナードの方はきっぱりと、アリアナの方はやんわりと。
言い方は違えどやっていることは同じだった。

雇い主であるサイスにも相談してみた。
しかし、雇い主である本人は止めるどころか、当然の措置だと言う。

それでも私はできることをできるだけやった。
昼メモをしたことを、夜寝るまでの時間で復習したり…休憩時間でも他の人の仕事姿を見てやり方を覚えたり…。

そのおかげで6日目になるとあまり叱られなくなった。それどころか、ものすごく褒められた。
7日目には1人でやっても問題なしと言われて、ホッとした。

「よく頑張ったな」

そう言ってサイスは撫でてくれる。

「1週間でよく覚えましたね。素晴らしいです」

そう言ってレナードは笑ってくれる。

「ふふ。リシアさんはとっても優秀な生徒さんだったわ」

そう言ってアリアナは手を優しく握ってくれる。

他の使用人達も「すごいね」「頑張ったね」笑顔で声をかけてくれる。

明日から王城に行く。もちろんサイスも一緒だ。
不安もあるけど、私は頑張れる。

それでも不安そうなのが伝わったのか、最後の夜に景気付けとしてパーティーが開かれた。
普通は止めるものだろうけど、サイスは無礼講だと言って容認する。

ポカポカと心があったかくなって涙が出た。
泣いたことでまた心配されたけど、私が笑顔を見せたらアリアナが抱きしめてくれた。

(ねぇ、おばあさん。ここはあったかいよ。海の底のキラキラよりこっちのキラキラのほうが、私は好きだよ)

抱きしめられる腕の暖かさに涙が止まらない。
私は見ず知らずの赤の他人だ。
それでも、手を差し伸べてくれる人たちがいる。

それはとても幸せなことだと思った。
しおりを挟む

処理中です...