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第3章 姫(?)からメイドになりました
息子に紹介されたお嫁さん(希望的観測)〔side・アリアナ〕
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久しぶりに息子から連絡が来た。
なんでも礼儀作法を指導してほしい娘がいるから、引き受けてくれないかということだ。
「これはきっと建前で、やっと気になる令嬢ができたのね!」
浮名を流しすぎるのはいけないと思うが、浮いた話一つない息子に危機感を持っていたアリアナ。
お嫁さんはどんな子だろうと嬉々としてすぐ向かうことにした。
屋敷についてさっそく会おうと思ったが、その前にサイスに呼ばれる。
自分は母であるが、家主はサイス。ここにいる以上従わなければならない。
渋々執務室に行くと相変わらず無表情で何を考えているかわからないサイスがいた。
「ようこそいらっしゃいました。母上」
「もちろんくるに決まっているわ!だって、あなたのお嫁さんなのでしょう?ねぇ、どんな子?かわいい?綺麗?それとも……」
「母上、落ち着いてください」
「いい子なのかしら?優しい子なのかしら?悪女なわけないわよね。女性に厳しいあなたが選んだのだもの…」
「………」
サイスが途中で何か言ったようだけど、聞こえなかったわ。
口を閉じたし、あまり重要なことではないのね。
「サイス!こんなところで待たせないで早く会わせてちょうだい。早くお話ししたいわ」
「はぁ……」
なんで私はため息をつかれたのかしら?
納得がいかないわ。
「まずは、俺の話を聞いてくれ。礼儀作法を教えて欲しいのは、リシアという若い娘だ。今度、城のメイドになるから宮廷作法を学ばせたい」
「あら?お嫁さんをメイドにするの?」
「そもそも、彼女は嫁じゃない。海を漂流していたところを助けた見知らぬ娘だ」
「あらあら、素直じゃないわね。お嫁さんでしょう?」
「違う。彼女は身寄りがないからここに保護しただけだ」
(でも…サイス。あなたは身寄りないからといってここに保護する必要はなかったのに気づいているでしょう?)
この国には当然孤児院というものがある。
事故、病気、経済状況、家庭環境、様々な要因から子供が家族といられなくなった場合、成人して仕事を見つけるまで孤児院にいられるのだ。
もちろん、成人しても仕事をいつまでも見つけない場合は放り出されてしまうが。
リシアは海を漂流していて、身寄りがないという。つまり、十分国の保護対象になりうるのだ。
それを王子の側近であるサイスが気づかないはずがない。
「母上、彼女は声が出ないし、保護する前はろくな環境にいなかった。それは身体中にある傷と彼女の様子からわかったことだ。頼むから、彼女を混乱させる言動だけはやめてくれ」
正直その言葉に驚いた。
息子から女性を気遣う言葉を聞いたのは、血縁である私を除いて誰もいない。
屋敷のメイドですら業務のような言葉だけだ。
午後になり、お嫁さん(希望的観測)を待っていると、1人の女性が入ってきた。
彼女は綺麗で儚くて…瞳の綺麗な女性だった。
言われていた通り、声ではなく手記で会話していたけど…とってもいい子だということはわかった。
けれど、少しだけ注意して肌を見れば首元に傷跡があった。
(こんないい子を酷い目にあわせるなんて…信じられないわ!)
話し始めると夫にさえ呆れられてしまう私だけど、彼女はニコニコと聞いてくれる。それがどれだけ嬉しいのかわからないのだろう。
(あ~あ。この子がお嫁さんならいいのに。令嬢じゃないとかどこの子かわからないとかどうでもいいわ。他の自分本位な令嬢よりずっといい)
ニコニコと笑う彼女をすでに娘のように思っているアリアナ。
その時、サイスは嫌な予感に身を震わせたとか震わせなかったとか…。
なんでも礼儀作法を指導してほしい娘がいるから、引き受けてくれないかということだ。
「これはきっと建前で、やっと気になる令嬢ができたのね!」
浮名を流しすぎるのはいけないと思うが、浮いた話一つない息子に危機感を持っていたアリアナ。
お嫁さんはどんな子だろうと嬉々としてすぐ向かうことにした。
屋敷についてさっそく会おうと思ったが、その前にサイスに呼ばれる。
自分は母であるが、家主はサイス。ここにいる以上従わなければならない。
渋々執務室に行くと相変わらず無表情で何を考えているかわからないサイスがいた。
「ようこそいらっしゃいました。母上」
「もちろんくるに決まっているわ!だって、あなたのお嫁さんなのでしょう?ねぇ、どんな子?かわいい?綺麗?それとも……」
「母上、落ち着いてください」
「いい子なのかしら?優しい子なのかしら?悪女なわけないわよね。女性に厳しいあなたが選んだのだもの…」
「………」
サイスが途中で何か言ったようだけど、聞こえなかったわ。
口を閉じたし、あまり重要なことではないのね。
「サイス!こんなところで待たせないで早く会わせてちょうだい。早くお話ししたいわ」
「はぁ……」
なんで私はため息をつかれたのかしら?
納得がいかないわ。
「まずは、俺の話を聞いてくれ。礼儀作法を教えて欲しいのは、リシアという若い娘だ。今度、城のメイドになるから宮廷作法を学ばせたい」
「あら?お嫁さんをメイドにするの?」
「そもそも、彼女は嫁じゃない。海を漂流していたところを助けた見知らぬ娘だ」
「あらあら、素直じゃないわね。お嫁さんでしょう?」
「違う。彼女は身寄りがないからここに保護しただけだ」
(でも…サイス。あなたは身寄りないからといってここに保護する必要はなかったのに気づいているでしょう?)
この国には当然孤児院というものがある。
事故、病気、経済状況、家庭環境、様々な要因から子供が家族といられなくなった場合、成人して仕事を見つけるまで孤児院にいられるのだ。
もちろん、成人しても仕事をいつまでも見つけない場合は放り出されてしまうが。
リシアは海を漂流していて、身寄りがないという。つまり、十分国の保護対象になりうるのだ。
それを王子の側近であるサイスが気づかないはずがない。
「母上、彼女は声が出ないし、保護する前はろくな環境にいなかった。それは身体中にある傷と彼女の様子からわかったことだ。頼むから、彼女を混乱させる言動だけはやめてくれ」
正直その言葉に驚いた。
息子から女性を気遣う言葉を聞いたのは、血縁である私を除いて誰もいない。
屋敷のメイドですら業務のような言葉だけだ。
午後になり、お嫁さん(希望的観測)を待っていると、1人の女性が入ってきた。
彼女は綺麗で儚くて…瞳の綺麗な女性だった。
言われていた通り、声ではなく手記で会話していたけど…とってもいい子だということはわかった。
けれど、少しだけ注意して肌を見れば首元に傷跡があった。
(こんないい子を酷い目にあわせるなんて…信じられないわ!)
話し始めると夫にさえ呆れられてしまう私だけど、彼女はニコニコと聞いてくれる。それがどれだけ嬉しいのかわからないのだろう。
(あ~あ。この子がお嫁さんならいいのに。令嬢じゃないとかどこの子かわからないとかどうでもいいわ。他の自分本位な令嬢よりずっといい)
ニコニコと笑う彼女をすでに娘のように思っているアリアナ。
その時、サイスは嫌な予感に身を震わせたとか震わせなかったとか…。
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