ちょっと事故った人魚姫

ラズ

文字の大きさ
上 下
30 / 73
第4章 お城に着きました!

お城は…広かった……

しおりを挟む
(…ここはどこ?)
その時私は、シーツのカゴを抱えながら途方に暮れていた。

ことは1時間前に遡る。
私はベッドメイクのためにシーツを一階から取りに行っていた。
行きはシェハルが案内してくれた。
けど、途中で青年に声をかけられて行ってしまった…。

「すぐ戻る!だから待ってて」

そう言われて待っていたが、10分たっても来ない。
とはいえ、とっても広いお城の中。
変に歩き回れば迷子になるし、下手すれば入ってはいけない場所に入る確率だってある。(宝物庫とか、地下牢の入り口とか…)
待っているしか選択肢のない私は、邪魔にならないように端っこによってひたすら待っていた。
しかし、そんな時のこと……

「あら!あなたなんでそんなとこにいるのよ!サボり?!メイド長に言いつけるわよ!」

ツリ目の勝気そうな女性が大声で怒鳴ってきた。
驚いて目を丸くするが、私はとっさに反論ができない。
図星とかではなく、声が出ないから。
とりあえず、首を横に振ることで意思表示をする。

「声に出して否定しない時点でおかしいのよ!メイド長を呼ばれたくなかったら早く仕事に戻りなさいよ!」

彼女の言っていることはおそらく正しいのだと思う。
でも、私はここで待つように言われた。勝手に動くのは良くないだろう。

「ちょっとお嬢さん。彼女は…」

「はぁ?何?下働きごときが私に意見するの!?私はアリフィスタ公爵令嬢よ!声をかけることすらおこがましいわ!」

助け舟を出そうとしてくれたであろう女性にも食ってかかる、アリフィスタ公爵令嬢。
その大声は耳に障りその場のみんなが迷惑をしているようだ。

(私がここからいなくなればおさまるの?)

正直ここから出てどこをどう行けばいいのかさっぱりわからない。
だけど、目の前の女性の声は止まることはなく、眉をひそめている人たちが多い。
思わずため息をつきたくなるのをこらえて少しだけ考えた。
そして、助け舟を出そうとしてくれた女性に二つのメモを託す。
そして、用意してあったカゴを抱えてその場から立ち去った。

しかし、やはりというべきか…迷った。
廊下は長く、ほぼ同じ景色なので方向感覚は狂うし…誰かに道をきこうにも誰も出会わない。
たぶん階は同じだと思うけど、現在地すらわからない。

(やっぱり一人で歩くのではなかった…)

わかりきっていたことだけど、後悔してしまう。

(殿下の部屋の前には必ず兵士がいるはず…)

とはいえ、兵士も交代するはずなので顔は頼りにならない。
同じような景色の中、どうしようもなくなってうずくまりそうになった時…

「お前…こんなところで何しているんだ?」

聞きなれない声がした。
しおりを挟む

処理中です...