ちょっと事故った人魚姫

ラズ

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第7章 パーティーは荒れ模様

パーティー本番(最初の関門)

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「サイス・グランチェリム伯爵及び、パートナーのリシア様入場」

名前を呼ばれて緊張しながら場内に入る。
自分でもわかるほど顔が引きつっている気がする。
足がもつれて転ばないかかなり心配だ。
まずは国王陛下にご挨拶…

(作法は…大丈夫。笑って礼。後は…サイスがなんとかしてくれる…ハズ)

緊張に気づいてくれたのか、さりげなく手を握ってくれるサイス。少しだけ落ち着けたような気がした。

国王陛下方の前に来たら最敬礼。許しがあるまで顔をかげてはならない。

「国王陛下。ご機嫌麗しく存じます」

「うむ。おもてを上げよ」

許しが出たのでスッと顔をあげれば、そこには王族の方々が…。(当たり前)

中央の玉座にいる男性が国王陛下で隣の女性が王妃様だろう。
クロウギリア殿下はいるが、アルフィリード殿下は来ていない。
主役であるのだから当たり前なのだが…。

「そちらの娘、たいそう美しいが見ぬ顔だな…」

「私が後見をつとめております。リシアです」

紹介をされたので、軽めの礼をする。

「アルフィリードの侍女であったな。仕事には慣れたか?」

ここで頷くのは容易いが、かなり不敬に当たる。声が出ないのはこういうところで困ってしまうのだ。
あわあわしていると、サイスが助け舟を出してくれた。

「陛下、恐れながら…リシアは声を失っております」

「おお、そうか。それはすまなかった。さぞ不便であろう」

国王陛下は眉を下げてすまなそうにする。
しかし、私はどう返したらいいのかわからない。
そんななか会話はどんどん進んでいく。

「アルフィリードの侍女になった者はほとんどが一週間ももたなかった。そなたには期待している」

了承の意を礼をすることで伝えると、次に口を開いたのは王妃様だった。

「本当にお人形のような美しさね。今度お茶会に参加してくれるかしら?」

ピシリ

固まってしまったのはしょうがないと思う。
ミリュエンヌ様だけでもまだ緊張が抜けないのに、王妃様までなんて…。

「たしか、ミリュエンヌ様とも仲良くしているのでしょう?私とも仲良くしてほしいわ」

(ぎこちなく礼をするほか、道はあったのかな?)

王妃様の笑顔がとっても眩しいと感じた今日のこの頃なのでした。

そのあと下がってよし、とお許しが出たので御前を失礼させていただいたが…そろそろ気絶しそうだ。

ボーイから飲み物をもらって、しばし待機。
しているのだけど、ご令嬢方の殺気がザクザク刺さっている。

本当はその美しさに見惚れて紳士方も視線を送っていたのだが、リシアはガンスルー。
そこまでじっと見られたことがないので、気づかなかったということもある。

結果、二人は男女それぞれの嫉妬を受けることになったのだった。
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