嘘と熱に沈む夜

ひな

文字の大きさ
5 / 9

5

しおりを挟む
午後のキャンパス、昼休み。

ユウマは購買の前で、同じゼミの後輩に声をかけられていた。
たわいもない会話。笑いあうだけの、なんでもない時間――のはずだった。

「先輩、今日のシャツ、似合ってますね」

「……え? あ、ありがと……」

何気ないその言葉に、ユウマは照れくさく笑ってみせた。
だが――その背後から、地を這うような視線を感じた。

「ユウマ」

振り向けば、そこにはハヤトが立っていた。
笑っていない。声も低い。目も、どこまでも冷たい。

「今の、誰?」

「えっ……あぁ、ゼミの後輩で……たまたま会って、少し話しただけで……」

「話しただけ?」

ハヤトが一歩、近づいてきた。後輩の目が驚きに揺れる。
その時、ユウマのシャツの首元から――あの首輪が、ちらりと覗いた。

「…………!」

ハヤトの目が一瞬で変わった。まるで理性の糸がプツンと切れる音が、聞こえた気がした。

「見た? 今、お前……ユウマの首元、見た?」

「えっ、い、いえ……別に――」

バンッ。

ハヤトが壁を強く殴った。周囲が一瞬静まり返る。

「他のやつが見るような場所に、痕を残したつもりじゃない。
……でも、お前が油断するなら、意味ないよな、ユウマ?」

ユウマの手首を掴んで、そのまま引き寄せる。
怒りと嫉妬が入り混じったその目は、何よりも本気だった。

「お前は俺のだって、何度言わせれば気が済むんだ。
他のやつの前で、気安く笑うな。……優しくされるな。……“奪われそう”になるのが、どれだけ怖いか、わかってるのかよ。」

そのまま、ユウマの耳元に唇を寄せて囁く。

「……今すぐ、帰ろう? 誰にも見せたくない。
ユウマの泣き顔も、感じてる声も、首につけたこの印も……俺だけが知ってればいい。」

「……ハヤト……」

「帰ったら、罰だからね。」

耳元でそう囁いたその声は――甘くて、恐ろしくて、でも確かに愛だった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

花香る人

佐治尚実
BL
平凡な高校生のユイトは、なぜか美形ハイスペックの同学年のカイと親友であった。 いつも自分のことを気に掛けてくれるカイは、とても美しく優しい。 自分のような取り柄もない人間はカイに不釣り合いだ、とユイトは内心悩んでいた。 ある高校二年の冬、二人は図書館で過ごしていた。毎日カイが聞いてくる問いに、ユイトはその日初めて嘘を吐いた。 もしも親友が主人公に思いを寄せてたら ユイト 平凡、大人しい カイ 美形、変態、裏表激しい 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

Original drug

佐治尚実
BL
ある薬を愛しい恋人の翔祐に服用させた医薬品会社に勤める一条は、この日を数年間も待ち望んでいた。 翔祐(しょうすけ) 一条との家に軟禁されている 平凡 一条の恋人 敬語 一条(いちじょう) 医薬品会社の執行役員 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

幼馴染みが屈折している

サトー
BL
「どの女もみんな最低だったよ。俺がちょっと優しくしただけで、全員簡単に俺なんかと寝てさ」 大学生の早川 ルイは、幼馴染みのヒカルに何をやっても勝てないといつも劣等感を感じていた。 勉強やスポーツはもちろんヒカルの方ができる、合コンはヒカルのオマケで呼ばれるし、好みの女子がいても皆ヒカルの方にとられてしまう。 コンプレックスを拗らせる日々だったが、ある日ヒカルの恋愛事情に口を挟んだことから急速に二人の関係は変化していく。 ※レオとルイが結ばれるIFエピソードについては「IF ROOT」という作品で独立させました。今後レオとのエピソードはそちらに投稿します。 ※この作品はムーンライトノベルズにも投稿しています。

短編集

ミカン
BL
一話完結のBL小説の短編集です

イケメン幼馴染に執着されるSub

ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの… 支配されたくない 俺がSubなんかじゃない 逃げたい 愛されたくない  こんなの俺じゃない。

慶ちゃんの言うとおり

カミヤルイ
BL
完璧な優等生を演じるド執着攻めが、見た目ふわふわ系可愛い受けを「自分はひ弱」と思い込ませて、囲い込んでいくお話。 (囲い込みBLでゾワゾワしたい方がおられたら…同志がおられるといいなと)

甘味食して、甘淫に沈む

箕田 はる
BL
時は大正時代。 老舗の和菓子店の次男である井之口 春信は、幼馴染みである笹倉 明臣と恋仲にあった。 だが、母の葬儀を終えた早々に縁談が決まってしまい、悲嘆に暮れていた。そんな最中に、今度は何故か豪商から養子の話が持ち上がってしまう。 没落寸前の家を救う為に、春信はその養子の話を受け入れることに。 そこで再会を果たしたのが、小学校時代に成金と呼ばれ、いじめられていた鳴宮 清次だった。以前とは違う変貌を遂げた彼の姿に驚く春信。 春信の為にと用意された様々な物に心奪われ、尊敬の念を抱く中、彼から告げられたのは兄弟としてではなく、夫婦としての生活だった。

処理中です...