超老介護

white love it

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「どうしますか? 葛葉さんの誕生祝い」

 介護主任は一瞬首を傾げたが、すぐに思い出した様子だった。

「ああ、100歳の誕生日か。まあ、いいんじゃないの、別にやらなくても」
「そうですね。まあ、今さらですしね」

 私はそう返事すると、自分の仕事に戻った。
 ここ、浜村老人ホームには、100人の入居者と35人の職員がいる。
 私は介護士になって10年目だが、入居者のオムツ交換や入浴の手伝い以外に、施設内での新年会やら運動会、さらには職員の募集や家族との打ち合わせの仕事まであるのだ。これ以上余分な仕事を増やされずにすんだことに、内心ほっとしていた。
 事務所を出ると、ちょうどその葛葉さんがいた。
 私を見るとにこやかな笑顔で話しかけてきた。

「高木さん、今日もおつかれ様でした」
「おつかれ様でした」

 その曲がった背中を見ながら、私はやっかみ半分、感心半分のため息をついた。
 今や日本の高齢化社会は、完全に限界を超えていた。元気な超々高齢者が、病気やケガが原因で寝たきりになった超々高齢者を介護するのが現状だった。私も今年で80歳。平均年齢84歳のこの職場ではまだ若造なのだ。それにしても、100
 
               Fin
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