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宇宙人対策会議
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「では会議を始める」
その議長の言葉がこの重苦しい空気の辺り一面に響く。各国首脳が集まり、重要な議題について対策するこの会議は始まって以来初の事が起きていた。それは「議題が一つだということ」
本来二年に一度行われるこの協議が急遽行われたのもそのためであり、議題こそ伏せてあるが全世界のメディアが発信しこの星の全ての生命体が固唾を飲んで見守っている。
そしてその議題こそが宇宙人に対する待遇についてである。
といってもこの星はできてまだ五十億年にも満たない星であり、未だ宇宙への進出は困難とされていた。
そこにやってきたのが宇宙人であり、彼らは宇宙船を無断で止め、あろうことか一部の民と交流までしてしまった。
そうとなれば一大事である。交流した民には口封じをし、こうして彼らの目的を探るため大規模な会議まで開かなければならない。非常に厄介な話である。首脳たちの顔もあまり浮かばれない。
すると世界一の大国の首脳A氏が先陣をきって話し始めた。
「我々は今まで宇宙に対し、目立った威嚇行為をしてきませんでした。それなのにも関わらず宇宙人はこのような強硬手段に出ました。これは一重にこの星の侵略が目的に他なりません」
そう力強く断言するA氏に待ったが入る。
「そうとも限らないのでは」
そう反論したのは二番目の大国首脳B氏であった。この二大国は主義の違いから国際問題において対立することがよくあった。これを見るなり発言権がないに等しい小国の首脳たちは「またか」と肩をすくめた。
「我々にとって威嚇行為でも彼らにとっては律儀な行動なのかもしれません。すぐに自分たちの価値観で相手を判断するなど、そもそも産まれた星ですら違う彼らにとっても不愉快極まりないでしょう。」
「それに彼らには宇宙船をつくるほどの技術力があります。上手く誘致して彼らとの交流を深めればこの星はますます発展していくでしょう。」
その意見にすかさずA氏は返す。
「確かに彼らから技術をもらえるとなればそれは嬉しい話です。しかしだからといって彼らが侵略目的ではないとは言い切れないでしょう」
そこでA氏は一息ついた。そして先程の荒い声とは一転、落ち着いてあくまで冷静さを装いながらこう言った。
「彼らとの交流もしたいが最低限の安全も確保したいのは皆さん同じでしょう。そこで我が国から各国に対し最新鋭の武器を配備します。」
一見すると耳心地のいい話。しかしここにもA氏の思惑があった。この星では軍縮がもう始まっており新たな武器を大量につくる、買うなどもってのほかだった。軍事大国として台頭したA氏の国は軍縮によって最新鋭の武器を大量に破棄せねばならず、できればこの武器を金に変えたいのであった。しかしそのことは各国も承知済み。まるでそのことを代弁するかのようにB氏が話す。
「貴国の武器が役にたつとは決して断言できないでしょう。それにその行為はやっと足並みの揃ってきた国際情勢を揺るがすものです。私は断固反対です。それより我が国が発明している素晴らしいものが二つあります。一つ目はいざという時に対抗できる兵器…」
「貴国も同じようなものではないかっ」
会議は平行線。といっても何百人といる会場のうち喋っているのは二人だけだが。次第に議題は「宇宙人をどうするか」ではなく「宇宙人をどうするかという議題の覇権をどちらがとるのか」という風に変わっていった。二人とも喋ることが少なくなり各々時計を確認しだした頃会議場のドアが勢いよく開けられた。何事かと全員がそちらを向く。
「例のものやっと完成しました。」
そう息を切らしながら何かを抱えているのはB国の有名な科学者。
「おお。やっとか。皆さんこれが先程のべた我が国の二つ目の発明です。」
「それはなんだね。」
首脳に変わって科学者が説明する。
「これは危険度測定器です。ある程度の知能を持つ生命体の身体の一部をスキャンすることによってその生命体の危険度がわかります。」
一同おおーと声をあげる。B氏はどうだと言わんばかりの顔でA氏を見ている。
「それが信用できるという証拠はあるのかね」
「ええ試しにこの星の生命体でいくつか試しましたがこの測定器の出す結果を生物学者に見せてみましたが納得いくものだと言っていました」
「しかし相手は宇宙から来た生命体だぞ」
「そうですが参考にはなるかと。もしこの機会でさえ危険信号を出すようでしたら流石に交流できませんし。」
「ふむまあそうだな。」
この発想自体奇抜であるが、大して打つ手もないこの状況なので機械を使うことは容認された。数分後厳重に保管された宇宙人の毛を取り出し機械に入れた。すると…
ピュイーンピュイーンピュイーンとサイレンが何度もなる。科学者は機械を覗き込み結果を見た。すると科学者の顔が青ざめる。「なんてことだ」と小声で呟いたのをA氏は聞き逃さなかった。
「どういう結果なのだ。」
科学者は真っ白い顔をしながら恐る恐る読み上げる。
「この生命体は頭が良く、社交性に優れているがそれらは全て自分の権益のために動いており心はとても冷たい。自分が勝つためなら敵味方関係なく徹底的に攻撃する。」
B氏もこれには苦笑いだ。思わず立ち上がっていた二人の腰もストンと落ちる。議題に対する結論はもう出ただろう。
先程までこの宇宙人を擁護していたB氏が呟く。彼は宇宙人が民間人に名乗った宇宙人の名を思い出していた。
「そんなに恐ろしいのか。この「ニンゲン」という生命体は」
その言葉がこの重苦しい空気の辺り一面に響いている…
その議長の言葉がこの重苦しい空気の辺り一面に響く。各国首脳が集まり、重要な議題について対策するこの会議は始まって以来初の事が起きていた。それは「議題が一つだということ」
本来二年に一度行われるこの協議が急遽行われたのもそのためであり、議題こそ伏せてあるが全世界のメディアが発信しこの星の全ての生命体が固唾を飲んで見守っている。
そしてその議題こそが宇宙人に対する待遇についてである。
といってもこの星はできてまだ五十億年にも満たない星であり、未だ宇宙への進出は困難とされていた。
そこにやってきたのが宇宙人であり、彼らは宇宙船を無断で止め、あろうことか一部の民と交流までしてしまった。
そうとなれば一大事である。交流した民には口封じをし、こうして彼らの目的を探るため大規模な会議まで開かなければならない。非常に厄介な話である。首脳たちの顔もあまり浮かばれない。
すると世界一の大国の首脳A氏が先陣をきって話し始めた。
「我々は今まで宇宙に対し、目立った威嚇行為をしてきませんでした。それなのにも関わらず宇宙人はこのような強硬手段に出ました。これは一重にこの星の侵略が目的に他なりません」
そう力強く断言するA氏に待ったが入る。
「そうとも限らないのでは」
そう反論したのは二番目の大国首脳B氏であった。この二大国は主義の違いから国際問題において対立することがよくあった。これを見るなり発言権がないに等しい小国の首脳たちは「またか」と肩をすくめた。
「我々にとって威嚇行為でも彼らにとっては律儀な行動なのかもしれません。すぐに自分たちの価値観で相手を判断するなど、そもそも産まれた星ですら違う彼らにとっても不愉快極まりないでしょう。」
「それに彼らには宇宙船をつくるほどの技術力があります。上手く誘致して彼らとの交流を深めればこの星はますます発展していくでしょう。」
その意見にすかさずA氏は返す。
「確かに彼らから技術をもらえるとなればそれは嬉しい話です。しかしだからといって彼らが侵略目的ではないとは言い切れないでしょう」
そこでA氏は一息ついた。そして先程の荒い声とは一転、落ち着いてあくまで冷静さを装いながらこう言った。
「彼らとの交流もしたいが最低限の安全も確保したいのは皆さん同じでしょう。そこで我が国から各国に対し最新鋭の武器を配備します。」
一見すると耳心地のいい話。しかしここにもA氏の思惑があった。この星では軍縮がもう始まっており新たな武器を大量につくる、買うなどもってのほかだった。軍事大国として台頭したA氏の国は軍縮によって最新鋭の武器を大量に破棄せねばならず、できればこの武器を金に変えたいのであった。しかしそのことは各国も承知済み。まるでそのことを代弁するかのようにB氏が話す。
「貴国の武器が役にたつとは決して断言できないでしょう。それにその行為はやっと足並みの揃ってきた国際情勢を揺るがすものです。私は断固反対です。それより我が国が発明している素晴らしいものが二つあります。一つ目はいざという時に対抗できる兵器…」
「貴国も同じようなものではないかっ」
会議は平行線。といっても何百人といる会場のうち喋っているのは二人だけだが。次第に議題は「宇宙人をどうするか」ではなく「宇宙人をどうするかという議題の覇権をどちらがとるのか」という風に変わっていった。二人とも喋ることが少なくなり各々時計を確認しだした頃会議場のドアが勢いよく開けられた。何事かと全員がそちらを向く。
「例のものやっと完成しました。」
そう息を切らしながら何かを抱えているのはB国の有名な科学者。
「おお。やっとか。皆さんこれが先程のべた我が国の二つ目の発明です。」
「それはなんだね。」
首脳に変わって科学者が説明する。
「これは危険度測定器です。ある程度の知能を持つ生命体の身体の一部をスキャンすることによってその生命体の危険度がわかります。」
一同おおーと声をあげる。B氏はどうだと言わんばかりの顔でA氏を見ている。
「それが信用できるという証拠はあるのかね」
「ええ試しにこの星の生命体でいくつか試しましたがこの測定器の出す結果を生物学者に見せてみましたが納得いくものだと言っていました」
「しかし相手は宇宙から来た生命体だぞ」
「そうですが参考にはなるかと。もしこの機会でさえ危険信号を出すようでしたら流石に交流できませんし。」
「ふむまあそうだな。」
この発想自体奇抜であるが、大して打つ手もないこの状況なので機械を使うことは容認された。数分後厳重に保管された宇宙人の毛を取り出し機械に入れた。すると…
ピュイーンピュイーンピュイーンとサイレンが何度もなる。科学者は機械を覗き込み結果を見た。すると科学者の顔が青ざめる。「なんてことだ」と小声で呟いたのをA氏は聞き逃さなかった。
「どういう結果なのだ。」
科学者は真っ白い顔をしながら恐る恐る読み上げる。
「この生命体は頭が良く、社交性に優れているがそれらは全て自分の権益のために動いており心はとても冷たい。自分が勝つためなら敵味方関係なく徹底的に攻撃する。」
B氏もこれには苦笑いだ。思わず立ち上がっていた二人の腰もストンと落ちる。議題に対する結論はもう出ただろう。
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