完璧な薬

秋川真了

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こんにちは。悪魔さん。

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アール氏は床に寝そべっていた。ここはアール氏の借りているアパート。
学生の頃に就職活動が上手くいかなった彼の職場は勿論いいわけがなかった。
彼は今、少ない休日を過ごしていたところだった。
そんな時彼の足元から醜い何かがひょっこりと顔を出す。
「あ、悪魔!」
「ええ、私は悪魔です」
その顔は一般人が思い描く悪魔そのものだった。
「今日はアール様に有益な取り引きのお話をしようと思いまして」
「私は取り引きなんぞしないぞ。それに、悪魔と取り引きをする時は命を奪われることは有名だからな」
アール氏は悪魔と出会ったことなんぞより、自分の休日を害されたことの方が気にかかった。
「いえいえ、最近では契約する時に命を奪われることはありませんよ」
「そんな嘘をついても、無駄だぞ。俺は契約なんてしない。帰ってくれ」
「いえ、本当に命を奪われることはありません。そのかわり叶えられる願いの規模も小さくなってしまいますが、これ以上ない話ですよ」
「そもそも命を奪えないとなると、君たちに何のメリットがあるんだ。ますます怪しいぞ」
「いえ、それはですね、ええーと」
そういい悪魔は狡猾な笑みを浮かべる。
「なんだその笑みは。もう帰ってくれ。寝たいんだ」
「そんな、しかしですね。あなたにとって」
「そもそも」
アール氏は鬱陶しそうに大声で悪魔の声を遮る。
「悪魔など存在するわけないだろう。いくら仕事が辛いからといって、こんな幻覚を見るようになるとは、もう寝よう」
「あの…ちょっと、はあ」
悪魔は大きなため息をつき消えていった。


「おいお前、どうだった」
どうだったとは営業のことだろう。
「あの…すいません」
「すいません。じゃねえだろ」
「はい」
先ほどアール氏のもとにいた悪魔はひたすら俯き上司からのお叱りに耐えている。
悪魔が神に慈善活動をするように警告を受けから早数年。未だにその業績は伸び悩んでいる。人間の悪魔に対する印象を変えるには後何千年かかるだろうか。
末端である悪魔には頭を抱えることくらいしかできなかった。


神は遠くから悪魔の住む世界と、人間の住む世界を見ていた。
神はアール氏と末端の悪魔を見て一瞬区別がつかなかった。
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