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生配信31 1人サバイバル part1

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「はい、どうも! 今日もゲーム配信、配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です!」

『すっかり元気になったな』
『チッ、長引けばいいのに』
『元気になって良かったね!』
『発熱よ、こい!』

 正真正銘の病み上がり状態の俺に対して、打っていいコメントではないだろ。

 正気の人間はこんなコメントを打ったりはしないはず。

 ということは、リスナーさん達は正気ではない?

「———まあ、いつもコメント欄で馬鹿みたいに荒らしているリスナーさん達だもんな。もちろん、中には俺のファンリスナーさんもいるわけで、一緒くたんにしたらファンリスナーさん達が可哀想って、もしかして全て言葉に出てましたかね!」

 もちろん、ワザと声に出したわけですが、

『全て声に出てますよ』
『滝にファンリスナーいるの?』
『全てアンチじゃない?』
『まだ熱があって妄想と現実の区別がつかないのでは?』

 リスナーさん達は相変わらず平気な様子。

 逆に、打ち返してくる元気まであるようだ。

「はい、皆さんご心配をお掛けしました。友達が看病してくれたおかげで、無事治ることが出来ました。友達については言及してこないでね!」

 コメント欄が爆速で流れ始める。

 1人1人が短い暴言で連続投稿しているらしい。

「ううん、そんなに早く投稿すると他のリスナーさんのコメント読めないから、繋げて打ってもらってもいい?」

 今度は長文コメントが流れてくる。しかも内容はさっきと同じで短い暴言。

 まともなコメントを探していると、

『元気で何よりです』
『治って良かったね』
『配信楽しいです』

 等々、応援コメントを見つけると、ほっこりするね。

 荒地に咲くお花、砂漠地帯にあるオアシスみたいで。

 さて、心に余裕のないリスナーさん達は放置して、今日のゲーム配信の内容を説明していく。

「ええ、今日プレイしていくゲームは『Ark』というサバイバルゲームになるのかな? このゲームをプレイしていきます」

『Ark』———このゲームは恐竜や絶滅した生物がいる世界で、物資を集めて建築したり、恐竜やその他の生物をテイムして野良の生物と戦わせたりする。

 今回はシングルモードを行うので、俺1人。

「さて、始めていきますか」

 まずはキャラクリ。

「屈強な戦士しかサバイバルで生き残ることはできないため、ガチムチの男でプレイしていこうと思います。もちろん、俺の持論であって反論は認めます」

『ガチムチでも1人は無理やろ』
『滝がガチムチになっても無理』
『道具があったらワンチャン誰でもいけそう』
『サバイバル知識があればなんとか生き残れるんじゃない』

 等々、コメント欄で述べられている。

 そのうちにガチムチの屈強な男を作っていく。

「さて、キャラクリも終わったし、ゲームをプレイしていきますか」

 コメント欄ではまだ論争中だが、気にせずゲームを始めていく。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 さてゲームを開始したわけだが、何から始めていくべきだろうか。

 ここはリスナーさん達に聞いた方が早いので、素直に聞く。

「まずは何をすればいいと思う?」

 こういう時は頼りになるんですよ、リスナーさん達は。

『まずは目の前のデカい亀を殴りにいく』
『木を素手で殴るとか?』
『家を建てよう、家を』
『寝床作るところからじゃね?』

 まずはコメント通りに全てを行なっていく。

「亀を殴ればいいんだっけ?」

 こっそり近づいていく。すると、コメント欄が騒ぎ出す。

『やめとけ、冗談だぞ』
『殺されるぞ』
『戦闘力0が勝てる相手じゃない』
『斧とか槍を作ってからの方がいいぞ!』

 とのことなので、まずは

『おい!』
『なにしてんの』
『バカだよ!』
『これは殺されたな』

 殴った途端に戦闘用のBGMが変わり、亀とのバトルが始まる。

 そして一瞬で終わる。

「マジか。屈強な男でも亀に負けるんだな」

 殺されたのは、もちろん俺。

 リスポーンをし、今度は冗談ではないコメントを実行していく。

「地面に落ちている石や木を拾う、のね」

 リスナーさん達の助言を頼りに進めていく。

 こっからはゴミ拾いを行なっていく。

「おっ、石が落ちてるやん。こっちには木か。ここのゴミは良い物ばっかだな」

「あっちにも石が!」

「おい、何だよ。何もしてないだろう、追いかけてくんな!」

 石を5個に木を8本見つけることができた。途中、小さな恐竜達に追いかけられるも、何とか逃げ延びた。

「ふぅ。………あいつら、俺が雑魚だからって複数体で虐めてこようとしやがって」

 装備が整ったらぶっ飛ばしてやっかんな。

「んで、石と木を集めましたけど、どうすんの?」

『今度は木を殴る』
『わら、を取りに行くとピッケルが作れる』
『わらは木から取れる』
『ひたすら殴れ』

 ということなので、ひたすら殴ります。

 木をひたすら殴ること5分。

「わらって藁のことなのね。手に入りましたよ、15束ほど」

 何本の木を殴ったのか分からないほど殴った。

『じゃあ、クラフトしよう』
『クラフトで作れるはず』
『クラフトしよう』
『クラフトで石のピッケルが作れる』

「作業台はいらないの?」

『いらん』
『いらん』
『いらないよ』
『いらん』

 要らないらしいので、クラフトの仕方を教えてもらいながら、石のピッケルを作ってみることに。

「出来た」

 石1つに木が1つ、藁が10束で作ることが出来た。

「これでどうするの?」

『あとはひたすら石や木をピッケルで叩く』
『石を叩いて火打ち石をゲットしよう』
『繊維が先の方がいいと思う』
『寝袋のための素材を集める』

 ピッケルはどうやら素材を効率よく集められるらしい。

 そのことを聞き、俺はまたひたすら何かを殴るのであった。


 









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