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「——きろ。起きろ、慎二!」
「んな?」
「いつまで寝てんだよ。ほら行くぞ!」
京介に起こされ、寝惚け眼で外へと連れて行かれる。
ここは何処だ?
外を見回すが、ここが何処か分からない。何でここに俺がいるのかも理解できていない。
寝起きで頭の回転が遅いせいか、状況を飲み込むのに時間が掛かる。
確か………ああ、そうだ。補習の後、京介に連れられて、ええっと、車に乗ったんだっけ? ってか、この車、リムジンじゃないのか?
補習の後の記憶が曖昧になっている。
「京介様、慎二様。こちらになります」
見覚えのある執事なのだが、何処で見たのか思い出せない。
「少し待ってくれ」
状況整理のため少し時間が欲しい俺は、そう執事に伝え、脳を起こすために深呼吸をする。
3度ほど深呼吸をし、脳が目覚めたところで状況を把握。
確か、この執事は西園寺家の者だったはず。となると、執事が向かう場所には美妃先輩達がいるのか?
京介は事情を知っているな。帰ろうとした俺を引き止め、車にも理由を聞かずに乗ったのだから。
「慎二様、もう宜しいでしょうか?」
まだここが何処なのか、どうして連れてきたのか知りたいところだが、これ以上待たせるわけにも行かない。
首を縦に振り、歩き出した執事の後を追う。
「悪いな、慎二。隠してて」
執事の後ろを並びながら歩く俺と京介。
「お前に今日のこと伝えたら、断るだろう? だから、黙ってた方がいいと思ってな」
「………はあ」
俺と京介の付き合いは長い。京介の性格を理解しているということは、京介も俺の性格をよく理解しているということ。
「何で俺達が西園寺家の人に案内されているのか、簡単に説明してくれるのなら許そう」
「御安い御用で」
………
……
…
「つまり、美妃先輩の誕生日会に学校の後輩として呼ばれたってことか? しかも、会場は横浜中華街のレストラン貸切」
「そうらしい! 真珠ちゃんに聞いた」
ワクワクするよな、と目を輝かせているアホが1人。
つまり、今俺達が歩いているこの道は、横浜中華街ってことか?
周囲の風景に目を配る。
何処もかしこも煌びやかでいて、大きな看板や幟が自己主張しているかのように数多く存在していた。
通り過ぎる店舗からは、確かに香ばしい匂いや甘い食べ物の匂いがしてきてはいた。
「………何で気が付かなかったんだ」
分かりやすいヒントなんて、そこら中に有ったというのに。
それよりも一般人である俺達が、西園寺家主催のパーティに参加して良いわけない。
しかも、制服で。
浮くのが目に見えている。
参加を辞退すべく、執事にそれとなく理由をつけて話す。
「執事さん、すまないが正装を持ち合わせていない」
「それなら問題ございません。美妃お嬢様も真珠お嬢様も制服で御参加なさる様なので、気にしなくても大丈夫です」
「………それなら安心なのだが、パーティの参加者達はそれなりの人物達なんだろう? 一般人の俺達には場違いじゃあないのかな?」
「確かに参加者の皆様は、西園寺家と懇意にしていただいている方々です。ですか、慎二様達と何ら変わりはありません、同じ人間ですしね」
「同じ人間って………うっ、ゴホゴホ。ちょっと体調が悪く」
「ありません。慎二様の体調は絶好調であります」
ニコッと笑いかけてくる執事。
こいつ、俺を逃がすつもりないな。
「ああ、そういえばパーティに参加するには招待状が必要でした」
「えっ、マジで。俺、そんなの貰ってないけど」
これは———好機なのでは?
「招待状が無ければ参加することは出来ないんだな」
「その通りで御座います。どんなに親しい間柄でも招待状をお持ちになられなかった方は御帰りして頂くことになっております」
「よし、では帰ろう。学校まで送って行ってくれ」
踵を返したところで、肩を掴まれる。
「ですが、ここに2枚招待状がございます。もちろん、招待者の名前は京介様と慎二様の分です。安心してください、御ふたりは丁重にもてなす様に申し付けられております故」
この執事、わざと招待状を俺と京介に渡さなかったんだな。
もし俺が貰っていたら、
「慎二様は聡明なお方だと聞き及んでおります。招待状をお渡ししたらどうするか、想像がつきますから」
落としていた。1番後ろを歩き、さりげなく招待状を落としていただろう。それを見越して渡さなかったのか。
流石、西園寺家の執事だ。
それからは黙って歩く事にした。無駄な抵抗はしない方が疲れない。
「さあ、こちらになります。招待状は確認いたしました。どうぞ御入りください」
優秀な執事は俺と京介をパーティ会場へと案内し、役目を果たしたのだ。
「んな?」
「いつまで寝てんだよ。ほら行くぞ!」
京介に起こされ、寝惚け眼で外へと連れて行かれる。
ここは何処だ?
外を見回すが、ここが何処か分からない。何でここに俺がいるのかも理解できていない。
寝起きで頭の回転が遅いせいか、状況を飲み込むのに時間が掛かる。
確か………ああ、そうだ。補習の後、京介に連れられて、ええっと、車に乗ったんだっけ? ってか、この車、リムジンじゃないのか?
補習の後の記憶が曖昧になっている。
「京介様、慎二様。こちらになります」
見覚えのある執事なのだが、何処で見たのか思い出せない。
「少し待ってくれ」
状況整理のため少し時間が欲しい俺は、そう執事に伝え、脳を起こすために深呼吸をする。
3度ほど深呼吸をし、脳が目覚めたところで状況を把握。
確か、この執事は西園寺家の者だったはず。となると、執事が向かう場所には美妃先輩達がいるのか?
京介は事情を知っているな。帰ろうとした俺を引き止め、車にも理由を聞かずに乗ったのだから。
「慎二様、もう宜しいでしょうか?」
まだここが何処なのか、どうして連れてきたのか知りたいところだが、これ以上待たせるわけにも行かない。
首を縦に振り、歩き出した執事の後を追う。
「悪いな、慎二。隠してて」
執事の後ろを並びながら歩く俺と京介。
「お前に今日のこと伝えたら、断るだろう? だから、黙ってた方がいいと思ってな」
「………はあ」
俺と京介の付き合いは長い。京介の性格を理解しているということは、京介も俺の性格をよく理解しているということ。
「何で俺達が西園寺家の人に案内されているのか、簡単に説明してくれるのなら許そう」
「御安い御用で」
………
……
…
「つまり、美妃先輩の誕生日会に学校の後輩として呼ばれたってことか? しかも、会場は横浜中華街のレストラン貸切」
「そうらしい! 真珠ちゃんに聞いた」
ワクワクするよな、と目を輝かせているアホが1人。
つまり、今俺達が歩いているこの道は、横浜中華街ってことか?
周囲の風景に目を配る。
何処もかしこも煌びやかでいて、大きな看板や幟が自己主張しているかのように数多く存在していた。
通り過ぎる店舗からは、確かに香ばしい匂いや甘い食べ物の匂いがしてきてはいた。
「………何で気が付かなかったんだ」
分かりやすいヒントなんて、そこら中に有ったというのに。
それよりも一般人である俺達が、西園寺家主催のパーティに参加して良いわけない。
しかも、制服で。
浮くのが目に見えている。
参加を辞退すべく、執事にそれとなく理由をつけて話す。
「執事さん、すまないが正装を持ち合わせていない」
「それなら問題ございません。美妃お嬢様も真珠お嬢様も制服で御参加なさる様なので、気にしなくても大丈夫です」
「………それなら安心なのだが、パーティの参加者達はそれなりの人物達なんだろう? 一般人の俺達には場違いじゃあないのかな?」
「確かに参加者の皆様は、西園寺家と懇意にしていただいている方々です。ですか、慎二様達と何ら変わりはありません、同じ人間ですしね」
「同じ人間って………うっ、ゴホゴホ。ちょっと体調が悪く」
「ありません。慎二様の体調は絶好調であります」
ニコッと笑いかけてくる執事。
こいつ、俺を逃がすつもりないな。
「ああ、そういえばパーティに参加するには招待状が必要でした」
「えっ、マジで。俺、そんなの貰ってないけど」
これは———好機なのでは?
「招待状が無ければ参加することは出来ないんだな」
「その通りで御座います。どんなに親しい間柄でも招待状をお持ちになられなかった方は御帰りして頂くことになっております」
「よし、では帰ろう。学校まで送って行ってくれ」
踵を返したところで、肩を掴まれる。
「ですが、ここに2枚招待状がございます。もちろん、招待者の名前は京介様と慎二様の分です。安心してください、御ふたりは丁重にもてなす様に申し付けられております故」
この執事、わざと招待状を俺と京介に渡さなかったんだな。
もし俺が貰っていたら、
「慎二様は聡明なお方だと聞き及んでおります。招待状をお渡ししたらどうするか、想像がつきますから」
落としていた。1番後ろを歩き、さりげなく招待状を落としていただろう。それを見越して渡さなかったのか。
流石、西園寺家の執事だ。
それからは黙って歩く事にした。無駄な抵抗はしない方が疲れない。
「さあ、こちらになります。招待状は確認いたしました。どうぞ御入りください」
優秀な執事は俺と京介をパーティ会場へと案内し、役目を果たしたのだ。
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