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「なんで、ここに、貴方達が、いるの!」
思った通り、俺達は会場の別室へと連れて来られ、地べたに正座させられている。
「もう、最悪。こんな姿見られて」
「綺麗っすよ、先輩」
「………(ギロッ)」
「………すみません」
美妃先輩のドレス姿を褒めた京介は、一睨みで一蹴された。
あの目は人を何人か殺しているだろう。
「もう1度言うわね。なんでここにいるの?」
「京介に訳も分からず無理矢理連れて来られました」
名前を呼ばれ、ビクッと身体を震わす京介。
「いや、それは………先輩の誕生日って聞いたんでお祝いに」
「誰から聞いたのかしら?」
「それは、その」
招待してくれたのは真珠さんなのだが、京介はそれを何故か隠している。
そして真珠さんも隠したい様で、美妃先輩の死角から首を横に振って、俺達だけに見えるようにアピールをしていた。
どう考えても接点のある人物は真珠さんしかいない。どのみちバレるのだから白状した方が楽だと思うのだが。
ジリジリと距離を詰める美妃先輩。
ほら、白状しろ、京介。
「ああ、それは」
白状をするんだ、京介!
「それは「私めに御座います、美妃様」っ⁉︎」
この状況に助け舟を出したのは、俺達を迎えに来た執事さんだった。
「酒井が? なんで?」
「以前、美妃お嬢様が、このお二人と仲良くお話ししているのを見かけまして。ご友人ならお呼びしておくのが、といらぬお世話を焼いてしまいました。申し訳ございません」
腰を90度曲げ、頭を下げる。
「………事情は分かりました。次回からは私に相談する様に」
「承知いたしました」
自分のためを思っての行った行為に、こんな綺麗な謝罪を受けては許すしかないか。
と言っても、真珠さんと京介が真犯人。執事の酒井さんは、真珠さんのお願いを聞いただけなんだろうけどね。
「はあ、まあいい………ちょっと待って? この会場には招待状が無いと入れないわよね?」
「はい、その通りで御座います」
「招待状が書けるのは、西園寺家の者だけよね。お父様とお母様は書かないだろうし、私も書いてない。てことは………2人の招待状「ここに御座います」」
懐からこの会場に入る際に見た招待状を素早く渡す。
美妃先輩が見せろと言う前に渡す執事に、真珠さんの顔が青ざめる。
「うん、やっぱりこの字は———真珠?」
声のトーンと比例して、別室の空気が2段階ほど下がる。
東京駅の怪物と対面した時よりも、緊張感が走る。
この空間は美妃先輩が支配している、と言っても過言ではないほど、誰も動けないでいた。
冷や汗さえ拭けないほど。
後ろを振り向く美妃先輩の顔は、俺と京介の位置からは見れないが、真珠さんの顔を見ればどんな顔なのか想像がつく。
「あっ、ううう、ち、ちが」
「何が違うのかしら、真珠?」
「あっ、そ、その」
恐怖により涙を溜める真珠さんに、容赦なく問い詰める美妃先輩。
助け舟を出すために京介に肘打ちをする。
今回俺は助けるつもりはない。助けるなら、共犯の京介が適任なのだ。
酷いのかもしれないが、俺も美妃先輩同様の被害者。無理矢理連れてこられ、正座までさせられている。
だから、助け舟を出し、巻き添えを喰らうなら京介だけが喰らえばいい。
「あ、あの!」
「………」
京介が声を掛けるも、一切こっちを向かない美妃先輩。この時点で恐怖なのだが?
もう1人の共犯者である執事は手を出さないの………ん? どこに行った、執事の酒井さんは?
目だけを動かして周囲を見渡すが、執事の酒井さんが何処にも見当たらない。
まさか!
上半身だけを動かし、後ろを向くと、
「………いつに間に逃げたんだ」
ドアが半開きになっていた。
「美妃先輩、真珠ちゃんは悪くないんだ! 悪いのは」
「悪いのは?」
「悪いのは………俺と慎二です」
「はあ⁉︎」
「俺と慎二が真珠ちゃんを誑かして、このパーティに参加しました! 目当ては美味しい食べ物です!」
「ま、待て! 俺関係な」
関係を否定するよりも早く動いたのは美妃先輩。
「そう………ごめんね、真珠。もうこの部屋から出て行って良いわよ。その代わり、決して中を覗かないこと。分かったわね?」
コクン、コクンと頷きながら早歩きで外へと出て行った。
「おま、何で」
「てへ、悪い。俺1人じゃあどう足掻いても無理そうだから、一緒に怒られてくれ」
「————————ッ!」
声にならない程の怒りが込み上げてくる。
ギギギィ、と人から出てはいけない音を出しながら振り向き、その形相は般若の様で、目に見えるほどの怒気を身に纏っていた。
「さあ、お話をしましょうか。私の可愛い妹を誑かしたお二人さん?」
どんな力があろうとも、どんな困難を乗り越えた者だろうと、彼女から逃げることはできないだろうと、俺は悟ったのだった。
思った通り、俺達は会場の別室へと連れて来られ、地べたに正座させられている。
「もう、最悪。こんな姿見られて」
「綺麗っすよ、先輩」
「………(ギロッ)」
「………すみません」
美妃先輩のドレス姿を褒めた京介は、一睨みで一蹴された。
あの目は人を何人か殺しているだろう。
「もう1度言うわね。なんでここにいるの?」
「京介に訳も分からず無理矢理連れて来られました」
名前を呼ばれ、ビクッと身体を震わす京介。
「いや、それは………先輩の誕生日って聞いたんでお祝いに」
「誰から聞いたのかしら?」
「それは、その」
招待してくれたのは真珠さんなのだが、京介はそれを何故か隠している。
そして真珠さんも隠したい様で、美妃先輩の死角から首を横に振って、俺達だけに見えるようにアピールをしていた。
どう考えても接点のある人物は真珠さんしかいない。どのみちバレるのだから白状した方が楽だと思うのだが。
ジリジリと距離を詰める美妃先輩。
ほら、白状しろ、京介。
「ああ、それは」
白状をするんだ、京介!
「それは「私めに御座います、美妃様」っ⁉︎」
この状況に助け舟を出したのは、俺達を迎えに来た執事さんだった。
「酒井が? なんで?」
「以前、美妃お嬢様が、このお二人と仲良くお話ししているのを見かけまして。ご友人ならお呼びしておくのが、といらぬお世話を焼いてしまいました。申し訳ございません」
腰を90度曲げ、頭を下げる。
「………事情は分かりました。次回からは私に相談する様に」
「承知いたしました」
自分のためを思っての行った行為に、こんな綺麗な謝罪を受けては許すしかないか。
と言っても、真珠さんと京介が真犯人。執事の酒井さんは、真珠さんのお願いを聞いただけなんだろうけどね。
「はあ、まあいい………ちょっと待って? この会場には招待状が無いと入れないわよね?」
「はい、その通りで御座います」
「招待状が書けるのは、西園寺家の者だけよね。お父様とお母様は書かないだろうし、私も書いてない。てことは………2人の招待状「ここに御座います」」
懐からこの会場に入る際に見た招待状を素早く渡す。
美妃先輩が見せろと言う前に渡す執事に、真珠さんの顔が青ざめる。
「うん、やっぱりこの字は———真珠?」
声のトーンと比例して、別室の空気が2段階ほど下がる。
東京駅の怪物と対面した時よりも、緊張感が走る。
この空間は美妃先輩が支配している、と言っても過言ではないほど、誰も動けないでいた。
冷や汗さえ拭けないほど。
後ろを振り向く美妃先輩の顔は、俺と京介の位置からは見れないが、真珠さんの顔を見ればどんな顔なのか想像がつく。
「あっ、ううう、ち、ちが」
「何が違うのかしら、真珠?」
「あっ、そ、その」
恐怖により涙を溜める真珠さんに、容赦なく問い詰める美妃先輩。
助け舟を出すために京介に肘打ちをする。
今回俺は助けるつもりはない。助けるなら、共犯の京介が適任なのだ。
酷いのかもしれないが、俺も美妃先輩同様の被害者。無理矢理連れてこられ、正座までさせられている。
だから、助け舟を出し、巻き添えを喰らうなら京介だけが喰らえばいい。
「あ、あの!」
「………」
京介が声を掛けるも、一切こっちを向かない美妃先輩。この時点で恐怖なのだが?
もう1人の共犯者である執事は手を出さないの………ん? どこに行った、執事の酒井さんは?
目だけを動かして周囲を見渡すが、執事の酒井さんが何処にも見当たらない。
まさか!
上半身だけを動かし、後ろを向くと、
「………いつに間に逃げたんだ」
ドアが半開きになっていた。
「美妃先輩、真珠ちゃんは悪くないんだ! 悪いのは」
「悪いのは?」
「悪いのは………俺と慎二です」
「はあ⁉︎」
「俺と慎二が真珠ちゃんを誑かして、このパーティに参加しました! 目当ては美味しい食べ物です!」
「ま、待て! 俺関係な」
関係を否定するよりも早く動いたのは美妃先輩。
「そう………ごめんね、真珠。もうこの部屋から出て行って良いわよ。その代わり、決して中を覗かないこと。分かったわね?」
コクン、コクンと頷きながら早歩きで外へと出て行った。
「おま、何で」
「てへ、悪い。俺1人じゃあどう足掻いても無理そうだから、一緒に怒られてくれ」
「————————ッ!」
声にならない程の怒りが込み上げてくる。
ギギギィ、と人から出てはいけない音を出しながら振り向き、その形相は般若の様で、目に見えるほどの怒気を身に纏っていた。
「さあ、お話をしましょうか。私の可愛い妹を誑かしたお二人さん?」
どんな力があろうとも、どんな困難を乗り越えた者だろうと、彼女から逃げることはできないだろうと、俺は悟ったのだった。
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