C×C 〜クラウンxクラウン〜

九月生

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「なんで、ここに、貴方達が、いるの!」

 思った通り、俺達は会場の別室へと連れて来られ、地べたに正座させられている。

「もう、最悪。こんな姿見られて」

「綺麗っすよ、先輩」

「………(ギロッ)」

「………すみません」

 美妃先輩のドレス姿を褒めた京介は、一睨みで一蹴された。

 あの目は人を何人か殺しているだろう。

「もう1度言うわね。なんでここにいるの?」

「京介に訳も分からず無理矢理連れて来られました」

 名前を呼ばれ、ビクッと身体を震わす京介。

「いや、それは………先輩の誕生日って聞いたんでお祝いに」

「誰から聞いたのかしら?」

「それは、その」

 招待してくれたのは真珠さんなのだが、京介はそれを何故か隠している。

 そして真珠さんも隠したい様で、美妃先輩の死角から首を横に振って、俺達だけに見えるようにアピールをしていた。

 どう考えても接点のある人物は真珠さんしかいない。どのみちバレるのだから白状した方が楽だと思うのだが。

 ジリジリと距離を詰める美妃先輩。

 ほら、白状しろ、京介。

「ああ、それは」

 白状をするんだ、京介!

「それは「私めに御座います、美妃様」っ⁉︎」

 この状況に助け舟を出したのは、俺達を迎えに来た執事さんだった。

「酒井が? なんで?」

「以前、美妃お嬢様が、このお二人と仲良くお話ししているのを見かけまして。ご友人ならお呼びしておくのが、といらぬお世話を焼いてしまいました。申し訳ございません」

 腰を90度曲げ、頭を下げる。

「………事情は分かりました。次回からは私に相談する様に」

「承知いたしました」

 自分のためを思っての行った行為に、こんな綺麗な謝罪を受けては許すしかないか。

 と言っても、真珠さんと京介が真犯人。執事の酒井さんは、真珠さんのお願いを聞いただけなんだろうけどね。

「はあ、まあいい………ちょっと待って? この会場には招待状が無いと入れないわよね?」

「はい、その通りで御座います」

「招待状が書けるのは、西園寺家の者だけよね。お父様とお母様は書かないだろうし、私も書いてない。てことは………2人の招待状「ここに御座います」」

 懐からこの会場に入る際に見た招待状を素早く渡す。

 美妃先輩が見せろと言う前に渡す執事に、真珠さんの顔が青ざめる。

「うん、やっぱりこの字は———真珠?」

 声のトーンと比例して、別室の空気が2段階ほど下がる。

 東京駅の怪物と対面した時よりも、緊張感が走る。

 この空間は美妃先輩が支配している、と言っても過言ではないほど、誰も動けないでいた。

 冷や汗さえ拭けないほど。

 後ろを振り向く美妃先輩の顔は、俺と京介の位置からは見れないが、真珠さんの顔を見ればどんな顔なのか想像がつく。

「あっ、ううう、ち、ちが」

「何が違うのかしら、真珠?」

「あっ、そ、その」

 恐怖により涙を溜める真珠さんに、容赦なく問い詰める美妃先輩。

 助け舟を出すために京介に肘打ちをする。

 今回俺は助けるつもりはない。助けるなら、共犯の京介が適任なのだ。

 酷いのかもしれないが、俺も美妃先輩同様の被害者。無理矢理連れてこられ、正座までさせられている。

 だから、助け舟を出し、巻き添えを喰らうなら京介だけが喰らえばいい。

「あ、あの!」

「………」

 京介が声を掛けるも、一切こっちを向かない美妃先輩。この時点で恐怖なのだが?

 もう1人の共犯者である執事は手を出さないの………ん? どこに行った、執事の酒井さんは?

 目だけを動かして周囲を見渡すが、執事の酒井さんが何処にも見当たらない。

 まさか!

 上半身だけを動かし、後ろを向くと、

「………いつに間に逃げたんだ」

 ドアが半開きになっていた。

「美妃先輩、真珠ちゃんは悪くないんだ! 悪いのは」

「悪いのは?」

「悪いのは………俺と慎二です」

「はあ⁉︎」

「俺と慎二が真珠ちゃんを誑かして、このパーティに参加しました! 目当ては美味しい食べ物です!」

「ま、待て! 俺関係な」

 関係を否定するよりも早く動いたのは美妃先輩。

「そう………ごめんね、真珠。もうこの部屋から出て行って良いわよ。その代わり、決して中を覗かないこと。分かったわね?」

 コクン、コクンと頷きながら早歩きで外へと出て行った。

「おま、何で」

「てへ、悪い。俺1人じゃあどう足掻いても無理そうだから、一緒に怒られてくれ」

「————————ッ!」

 声にならない程の怒りが込み上げてくる。

 ギギギィ、と人から出てはいけない音を出しながら振り向き、その形相は般若の様で、目に見えるほどの怒気を身に纏っていた。

「さあ、お話をしましょうか。私の可愛い妹を誑かしたお二人さん?」

 どんな力があろうとも、どんな困難を乗り越えた者だろうと、彼女から逃げることはできないだろうと、俺は悟ったのだった。

 


 







 
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