C×C 〜クラウンxクラウン〜

九月生

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 シンパンと同様の力を持つ殺人鬼と鬼ごっこ。

「勝てる未来が無いんだが?」

「相手が力を使い出したら、こっちも使うから勝ち目がないわけじゃあ無いんだけどね」

 お互いがお互いを認識できない状態での戦闘は、時間がかかる上に確実に倒せる確証がない。

 どうにか先にシンパンの隠者を当てる方法は無いのだろうか? 

 アドバンテージを得る方法を考えていると、

紋章クラウンNo.9隠者」

模造コピーNo.9隠者』

 俺の後方で、力の掛け合いが始まってしまった。

 これでアドバンテージが無くなったと考えるべきだよな。

「………チッ」

 シンパンの舌打ちと同時に、殺人鬼の姿や声が消えていく。

 ………なるほど、これが隠者の力か。

 怪物の姿が認識できない今、どう倒すか考えるべき。

 俺の正義クラウンは、相手を認識しないと発揮しない力。

 隠者の力で認識出来ないのなら使おうにも使えない。

 どうする?

 隠者の力の弱点は以前聞いた。

 視覚や聴覚、嗅覚などの5つの感覚全てに認識阻害が掛かる。ただし、第六感は5つの感覚に頼らないため、勘の鋭い者には感知されてしまうとの事。

 考えろ。

 シンパンも俺も多分、勘がいい方ではない。考えて行動するタイプの人間。

 勘がいい奴といえば、京介なのだが。

「京介のクラウンがどういう能力かが鍵なんだよな」

 俺の時はシンパンの力があってのぶっつけ本番だった。支援のない力の発動は、リスクが高い。でも、これしか、

「………帰るよ、慎二君」

 考えが纏まる前にシンパンからの帰還の指示。

「ここで倒さないと被害が出るんじゃあないのか?」

「それはない。アイツはこの世界に獲物を1体ずつしか呼び寄せないんだ。僕達が居るかもという可能性がある限り被害者は出ないよ」

 討伐を早々に諦め、俺達は現実世界へと帰る。帰ってくる場所は、移動した時と同じ場所。

「僕は帰って策を考えてくるよ。慎二君も何かいい案が思い付いたら、会ったときにでも教えてくれ」

 そう言い、シンパンは路地裏から大通りへと消えて行った。

「………策ねぇ。ひとまず会場に戻るか。戻って相談だな」

 来た道を戻り、会場に入ろうとするが、

「すみませんが招待状を提示してください」

 口元は笑っているが目が笑っていない西園寺家の執事に止められる。

 外の空気を吸いに出ただけだ、と言ってもダメだった。

 俺はため息をつき両肩をくすめながら、

「ここで待ちます」

 京介達が出てくるのを待つしか無かった。

 シンパン、お前を恨むよ。

 美味しいご馳走を逃した恨みは怖いからな。

 


 





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