88 / 134
第8章 闇の襲撃
6話
しおりを挟む
朝、優は三次の声で目を覚ました。
「優! 優! 起きて」
「ん……」
寝ぼけてかすむ視界の先で、三次が目を丸くして優のことを見下ろしている。
「もしかして、一晩中ここにいたの? ドラゴンと添い寝している人、僕生まれて初めて見たけど。大丈夫?」
優は両手を広げて大きく欠伸をした。グルエリオーサの傍はとても温かいが、それに加えてついさっきまで、とても心地のいい温もりが自分を包んでくれていたような気がして、優はドラゴン小屋を見回した。
「あれ、朱雀は?」
見ると、石窯の台座に座っていたはずの朱雀がすっかり居なくなっている。優が眠っているうちに、寮に戻ってしまったのだろうか。
「高円寺くん? 僕が来たときには君しかいなかったけど、彼もここに来てたのかい?」
ドラゴンたちの見回りをして、昨晩あげた餌を食べ残していないかをチェックするのが、食糧係の三次の日課だ。
「うん、昨日の夜、グルエリオーサの呪いを……って、グルエリオーサはもう産んだ!?」
優が慌てて背中のドラゴンを振り返ると、黒く光沢のある温かい皮膚が静かに上下していた。
どうやらまだ赤ちゃんは生まれていないようだ。グルエリオーサの容態は安定していて、今は静かに眠っている。
そのとき、ミルトスの扉が勢いよく開き、ムートンチョッキ姿の大柄な熊骸先生が入って来た。
「おお、おお、二人とも。もう来とったか!」
熊骸先生の声は、朝でもすごく大きい。
「おはようございます」
「異常はないか、三次」
「異常なしです。優がファイヤー・ストームを焚くようになって、ドラゴンたちの食欲は出過ぎ、って感じですけど」
「先生、グルエリオーサが昨日の夜から産気づいているんです! 今は静かに眠っているけど、朝方に一度苦しそうに力むような素振りを見せて、それが一時間くらい続いたんです」
優が起きあがって説明すると、熊骸先生は皮の手袋をはめて、ドラゴンの骨盤の辺りを注意深く触って調べ始めた。
「胎道が大分開いてるな、骨盤の形が変わっとる。この調子だとおそらく今日中には確実に生むだろう。もしかするとあと2、3時間かもしれんわ。明王児、生まれて来る子どもは寒さに弱いから、炎を絶やすなよ」
「わかりました!」
それから熊骸先生は給餌係の三次に向き、指示を出した。
「三次、分かってると思うが、今朝はいつもの餌に加えて、山羊の乳も忘れるな。搾りたての温かいやつが一番いい」
「はい、わかってます」
三次はいつもの荷車に麻袋や鉄鍋、それから新たにミルク缶を積み込むと、背中にも大きな革袋を背負った。
最近のドラゴンたちはいっぱい食べるので、三次の食糧調達量も以前より増えている。
「今日はグルエリオーサが無事に出産するまで、お前たちドラゴン飼育員は授業はなしだ。業校長の許可を得て、他の先生らにも事情は話してある。今日は忙しい日になるから、お前たちしっかり頼むぞ」
「わかりました」
「はい!」
熊骸先生の迅速な指示を受けて、三次はいつものように無駄のない動きで荷車を引いて出かけて行った。
優は銀のスコップとバケツを掴み、石窯から魔法の石炭を取り出す作業にかかった。普通の石炭は優の紅炎ですぐに燃え尽きてしまうから、グルエリオーサの周囲で燃やすには魔法の石炭が適しているということを、熊骸先生が最初に突き止めたのだ。
優が危なっかしくよろめきながら石炭を運んでいるうちに、熊骸先生は三輪車に山盛りに積んだ藁を小屋の中に運び入れて来た。
「わあ、すごい」
優が思わず声を上げたのは、その藁がキラキラと金色に光っていたからだ。
熊骸先生が作業を止めることなく優に教えてくれる。
「これは黄金の藁だ。魔法植物係がこの日のために太陽の光をいっぱい浴びさせて育てた、魔法の敷き藁だぞ。これならお前さんの炎にあてられてもしばらくは燃え尽きんだろう」
「ふわふわで綺麗」
グルエリオーサの周りにどんどん積み上げられていく敷き藁は、本当に黄金のようにキラキラ光っている。
待ち望まれて生まれ来る子に、優の胸はワクワクした。
生まれて来る子どもには、ちゃんとお母さんもいるのだ。朱雀が呪いを解いてくれたからだ。
それまでの2日間、優が泣き暮らしたのが嘘みたいに、朱雀はいとも手早く優を助けてくれた。
一体、朱雀にどんな感謝が返せるだろう。言葉や物では伝えきれないほどの感謝が、優の胸に溢れてくる。
グルエリオーサのゴツゴツした頭を優しく撫でてから、優は祈るように両手を組み合わせた。
そしてその手が開かれるのと同時に、紅色の炎がふわりと優の周りに噴き上がり、たちまちグルエリオーサを包みこんで円を描きながら天高くまで立ち上って行く。
すでにダイナモン魔法学校では、早朝のドラゴン小屋に立つ火の柱は恒例の日常となっていた。
今ではその炎を目覚まし代わりに朝を迎える者もいるほどだ。
その日の朝も、ダイナモンにいるすべての者が優の炎を感じとったが、いつもとは一味違うその炎に気づいたのは、ごくわずかの魔法使いだけだ。
―― 朱雀への深い感謝と喜び。
優の心そのものが、炎の熱となり、香りとなり、そして輝きとなる。
紅色の炎の中で優は思っていた。
もし、優に朱雀を助けられるときがくるなら、その時は恩返しがしたいと。朱雀が優を助けてくれたように、今度は優が朱雀の助けになるのだ。
これまで怠けてばかりいたから全然まともに魔法を使えない優だけれど、もしこんな優のことを朱雀が本当に必要としてくれるなら、どうしてその朱雀の期待を裏切ることができるだろうか。
だからこの日のことを絶対に忘れないようにしよう、朱雀が優の涙を払い、助けてくれたことを。優は自分の心の中で固く誓った。
――「絶対に、あなたを助けるよ」
試しの門で見た未来の朱雀が、闇に引き込まれて行く姿を思い出し、優は一人囁いた。
その頃、東の塔では猿飛業校長と桜坂教頭が窓から外を見つめていた。
「今朝はいつにも増して、見事な炎じゃ。あの子をドラゴン飼育員に任命したのは、やはり正しい判断じゃったのう、桜坂先生」
「なぜでしょう。私はあの子の炎を見ていると、なんだか、涙が出てきますわ。あんなに優しい炎が、この世にあるのですね」
「まさしく。あれは命の輝き、そのものじゃ」
南西の塔では、流和と永久が紅茶を入れながら優の炎を見つめている。
二人は毎朝この時間、紅茶を飲みながら優の火柱を眺めることを日課にしているのだった。
「優、何かいいことがあったのかしらね。炎がすごく、喜んでるみたいに見える」
「本当に綺麗。朱雀くんが言ってた通りね」
同じ頃、北東の塔では空と吏紀が少し早めの朝食に出かける途中で足を止め、テラスから西のドラゴン小屋を眺めていた。
「なあ吏紀、ナジアスの炎って、あんな感じだったのかな」
空が問う。
「そうかもな」
「伝説のシュコロボヴィッツが愛した炎、か……」
空は優の炎を遠くに見つめながら何やら物思いにふけり、そしてかすかに頬をゆるめた。きっと、親友のことを考えているのだろう、と吏紀は察する。
「というより、あんな炎を燃やせるナジアス自身をきっとシュコロボヴィッツは愛していたんだろうな」
と、空が結論した。
「その見解には俺も賛成だ。そして、朱雀もおそらく」
吏紀は最後まで言わずに言葉を切り、空を見やった。すると空も訳知り顔で頷いた。
「幸いなことだ」
「まさしく。幸いなこと」
ドラゴン小屋から一人で戻ってきた朱雀は今、誰もいない庭園で白い朝日に目を細めながら、紅く染まる西の方の空を見上げていた。自分がドラゴン小屋に行ったことを三次や熊骸先生には知られたくなかったので、朱雀は早めに姿を消すことにしたのだった。
炎を見上げた朱雀が、何とも言えぬ困った表情で、小さく笑った。優の気持ちは、ちゃんと朱雀に伝わっている。
悲しいときの炎も、嬉しいときの炎も、全部。けれどあまりに自分が優のことを感じすぎてしまうので、朱雀は少し戸惑っていた。今まで朱雀の心にこんなに奥深くまで入り込んできた人はいなかったように思う。炎の魔法使いとして日々戦いの孤独に直面してきた朱雀は、人と深く関わりすぎることがないように心に城壁を築いてきたのだ。それなのに、優はおそらく当の本人でさえ意図せずして簡単にその城壁を越えて入りこんできた。
「 『愛しい』 今の君の心を一言で表現するとすれば、それがふさわしいかな」
突然背後から声をかけられ、朱雀は思い切り眉をしかめて嫌な顔をした。
「気配を消して背後に立つの、やめてもらえませんか」
「それは失礼」
左目に眼帯をつけた播磨先生は、にこにこしながら朱雀に並び、上空の炎を見上げた。
「火の魔法使いは不思議だな。最も強く、最も弱い」
「その目、本当に心を覗くことができるんですか」
「驚くほどにね」
「だとしたら、封印しているのはどうしてですか」
「人の心には闇が満ちてる。この目は、僕を闇に誘い込むための罠なんだよ。人の心の醜さや闇を見せつけて、ほら、光なんてないだろうって、誘いかけるんだ」
「闇に堕ちるのが恐いですか」
「ああ。死ぬことより恐いな」
播磨先生の灰色の目が優しく、だがどこか意地悪に朱雀を見下ろした。
「だから、あの子みたいな魔法使いを見るとホッとさせられる。多分、君もそうだろう。でも、それだけじゃない。じゃなきゃ、呪いを一つ増やすほどのことまでしないはずだ」
「首をつっこまないでもらえますか。っていうか、アイツに余計なことを言ったら承知しない」
「おやおや、教師に向かってその口のきき方はないだろうに。まあ、いいだろう。僕は口出しはしないさ。けど、あの子には興味がある」
まるで朱雀を挑発するように耳もとで怪しく囁いて、播磨先生はその場から姿を消した。
朱雀の炎の熱気が、播磨先生の含み笑いの残響音に呼応して燃え上がった。
その日の昼過ぎ、ちょうどダイナモンの生徒たちが昼食を終えて午後の授業に向かおうとしているときに、ドラゴン飼育員たちが城に駆けこんできた。
皮のエプロンを身につけ、炭に汚れた優と三次の二人は、手に手に鉄鍋を抱え、それをいきなりひしゃくで叩きながら大声を出した。
「生まれたぞおオオオオオオ!!」
「グルエリオーサが無事に出産したわ! 男の子よ!」
エントランスから中央広間、それから食堂の入口までやって来て、二人は鍋を狂ったみたいに叩きまくった。
「フィアンマ・インテンサ・ドラゴンの赤ちゃんが、ついに生まれたぞおオオオ!! 幸福の印だ!」
希少種である炎のドラゴン、フィアンマ・インテンサ・ドラゴンの出産はとても珍しくて、魔法界で未だかつてその出産に立ち会った者はない。炎の魔法使いが数百年に一度生まれるか、生まれないかの希少種であるのと同じくらい、炎のドラゴンの誕生は魔法史に影響する大事件だった。だから、闇の魔法使いたちは炎のドラゴンを忌み嫌い、虐殺しようとしているのだ。
まさに暗闇の時代に炎のドラゴンの赤ちゃんが無事に生まれたことは、『幸福の印』だった。
「元気な男の子よ! まだこんなに小さいの! 卵で生まれるかと思ったら、生で生まれたのよ! もうビックリよ!」
優は鍋とひしゃくを持った両手を胸の前で広げて、およそ50センチくらいのドラゴンの大きさを、聞かれてもいないのにみんなに報告してまわった。
ダイナモンの生徒たちは飼育員があまりにハイテンションで騒々しいのと、彼らが煙突掃除人みたいに汚れているのを見て、やや遠巻きに見過ごしている。
けれど、珍しいドラゴンの出産に誰も興味がないわけはなく、皆口々に小さな歓声を上げたり、口笛を吹いたりしてお祝いしてくれた。
昼食を終えた流和と永久が、優に駆け寄ってきた。
「優、お疲れ様!」
「ドラゴンのために昼夜を問わず図書室にこもってただけあるわね。やる~」
「うん! 最後は朱雀が助けてくれたんだけどね」
「え、朱雀が? 一体なんのこと」
「グルエリオーサにかけられていた、のろ……」
「無事に生まれて何よりだったな、ドラゴン飼育員」
「朱雀!」
優の話を途中で遮って、朱雀が近付いて来た。
いつもと変わらない、近寄りがたくて不機嫌な様子の朱雀に、優が思い出したように言う。
「そうだ朱雀、グルエリオーサが、子どもの名前を朱雀につけてもらいたい、って言ってたよ」
「はあ? 何で俺が。嫌だ」
「どうして?」
「簡単に言うけど、名前をつけるのは大変なことなんだぞ。名前をつけられた者の生涯を決める問題だ。それだけで呪いをかけることもできるほど、重要なことだ」
「呪いではなくて、祝福をあげてほしいの、あの子に。できるでしょう? 昔飼ってたドラゴンに名前をつけたって言ってたじゃん」
「朱雀が昔ドラゴンを飼ってた!? 嘘でしょう」
優の言葉を聞きつけた流和が、口元をすぼめ、怪しげに朱雀を見つめる。
「本当だよ、この人はドラゴンに詳しいの」
優がミルトス材のひしゃくで朱雀を差す。
「へ~」
「ねえ、どんな名前がいいと思う?」
「お前が決めろよ」
「ダメだよ! グルエリオーサの希望なんだから。夜までに考えておいてよね」
珍しく優が上から目線で朱雀に命じている姿が、流和や永久にはなんだか微笑ましく見えた。
「優、午後からの授業は?」
「変身術で私たち、ウサギと猫になるのよ」
「俺は虎になる」
朱雀が意味深に永久と流和に目配せし、ニヤリとした。
それを見咎めて優が口を挟む。
「永久も流和も、食べられないように気をつけてね」
「優は何になりたい? なりたいって最初に頭に浮かんだものが、その人にピッタリの変身動物なんだって」
「そうなんだ。私はドラゴンとかユニコーンになりたいよ!」
優が即答する。
「それはまた、随分と難易度の高いものを言ったわね。変身術は大きな動物になるほど難しくて、ドラゴンやユニコーンみたいな魔法生物や幻獣になるのは、それよりもっと難しいのよ」
「だから初心者は小さい動物から練習するらしいの」
「へえ~、そうなんだ。じゃあ、ハリネズミ!」
「ハリネズミ!? なんでまた」
「針があるからだよ!」
冗談で言っているのかと思いきや、優はなかなかに本気らしい。その口調に迷いはない。
「針があれば、小さくても身を守れるでしょ!」
そこへ優と同じ皮のエプロンをした三次が近寄って来た。
「優、僕たちそろそろ戻らないと」
「あ、うん、そうだね。ねえ三次は変身するとしたら何になりたい?」
優の突然の質問にも動じず、三次がすぐに答える。
「僕? 僕は亀になりたいな」
「亀!?」
「へえ、どうして?」
「甲羅があるからさ」
「ああ~」
優は納得顔で頷いている。が、他の三人は納得のいかない顔で優と三次の二人を見つめている。変身術で変身するのに人気なのはうさぎや猫などの可愛い動物だ。上級者になればもっと強い肉食系動物になりたがるのが普通で、あとは、偵察用として鳥類がある。
優や三次のようにハリネズミや亀になりたいと考える生徒は極めて珍しかった。
「午後からは小屋の片づけをして、もう少しグルエリオーサの側に居ることになってるんだ。明日からは授業に復帰できるし、今夜の特訓にも間に合うから」
「わかった」
最後の部分を朱雀に向かって言って、優は三次と一緒に小走りにドラゴン小屋に戻って行った。
その姿を見送りながら、永久が残念そうに呟く。
「あの二人って、仲がいいのね。私たちのことなんて、忘れちゃったりして、優」
「きっと気が合うのよ。良さそうな子じゃないの。ドラゴンのことが落ちついたら、また三人でぱーっとやりましょうよ」
「ぱーっとやるって、何をだ」
「朱雀はダメよ。女子には女子だけの集まりがあるんだから」
「優! 優! 起きて」
「ん……」
寝ぼけてかすむ視界の先で、三次が目を丸くして優のことを見下ろしている。
「もしかして、一晩中ここにいたの? ドラゴンと添い寝している人、僕生まれて初めて見たけど。大丈夫?」
優は両手を広げて大きく欠伸をした。グルエリオーサの傍はとても温かいが、それに加えてついさっきまで、とても心地のいい温もりが自分を包んでくれていたような気がして、優はドラゴン小屋を見回した。
「あれ、朱雀は?」
見ると、石窯の台座に座っていたはずの朱雀がすっかり居なくなっている。優が眠っているうちに、寮に戻ってしまったのだろうか。
「高円寺くん? 僕が来たときには君しかいなかったけど、彼もここに来てたのかい?」
ドラゴンたちの見回りをして、昨晩あげた餌を食べ残していないかをチェックするのが、食糧係の三次の日課だ。
「うん、昨日の夜、グルエリオーサの呪いを……って、グルエリオーサはもう産んだ!?」
優が慌てて背中のドラゴンを振り返ると、黒く光沢のある温かい皮膚が静かに上下していた。
どうやらまだ赤ちゃんは生まれていないようだ。グルエリオーサの容態は安定していて、今は静かに眠っている。
そのとき、ミルトスの扉が勢いよく開き、ムートンチョッキ姿の大柄な熊骸先生が入って来た。
「おお、おお、二人とも。もう来とったか!」
熊骸先生の声は、朝でもすごく大きい。
「おはようございます」
「異常はないか、三次」
「異常なしです。優がファイヤー・ストームを焚くようになって、ドラゴンたちの食欲は出過ぎ、って感じですけど」
「先生、グルエリオーサが昨日の夜から産気づいているんです! 今は静かに眠っているけど、朝方に一度苦しそうに力むような素振りを見せて、それが一時間くらい続いたんです」
優が起きあがって説明すると、熊骸先生は皮の手袋をはめて、ドラゴンの骨盤の辺りを注意深く触って調べ始めた。
「胎道が大分開いてるな、骨盤の形が変わっとる。この調子だとおそらく今日中には確実に生むだろう。もしかするとあと2、3時間かもしれんわ。明王児、生まれて来る子どもは寒さに弱いから、炎を絶やすなよ」
「わかりました!」
それから熊骸先生は給餌係の三次に向き、指示を出した。
「三次、分かってると思うが、今朝はいつもの餌に加えて、山羊の乳も忘れるな。搾りたての温かいやつが一番いい」
「はい、わかってます」
三次はいつもの荷車に麻袋や鉄鍋、それから新たにミルク缶を積み込むと、背中にも大きな革袋を背負った。
最近のドラゴンたちはいっぱい食べるので、三次の食糧調達量も以前より増えている。
「今日はグルエリオーサが無事に出産するまで、お前たちドラゴン飼育員は授業はなしだ。業校長の許可を得て、他の先生らにも事情は話してある。今日は忙しい日になるから、お前たちしっかり頼むぞ」
「わかりました」
「はい!」
熊骸先生の迅速な指示を受けて、三次はいつものように無駄のない動きで荷車を引いて出かけて行った。
優は銀のスコップとバケツを掴み、石窯から魔法の石炭を取り出す作業にかかった。普通の石炭は優の紅炎ですぐに燃え尽きてしまうから、グルエリオーサの周囲で燃やすには魔法の石炭が適しているということを、熊骸先生が最初に突き止めたのだ。
優が危なっかしくよろめきながら石炭を運んでいるうちに、熊骸先生は三輪車に山盛りに積んだ藁を小屋の中に運び入れて来た。
「わあ、すごい」
優が思わず声を上げたのは、その藁がキラキラと金色に光っていたからだ。
熊骸先生が作業を止めることなく優に教えてくれる。
「これは黄金の藁だ。魔法植物係がこの日のために太陽の光をいっぱい浴びさせて育てた、魔法の敷き藁だぞ。これならお前さんの炎にあてられてもしばらくは燃え尽きんだろう」
「ふわふわで綺麗」
グルエリオーサの周りにどんどん積み上げられていく敷き藁は、本当に黄金のようにキラキラ光っている。
待ち望まれて生まれ来る子に、優の胸はワクワクした。
生まれて来る子どもには、ちゃんとお母さんもいるのだ。朱雀が呪いを解いてくれたからだ。
それまでの2日間、優が泣き暮らしたのが嘘みたいに、朱雀はいとも手早く優を助けてくれた。
一体、朱雀にどんな感謝が返せるだろう。言葉や物では伝えきれないほどの感謝が、優の胸に溢れてくる。
グルエリオーサのゴツゴツした頭を優しく撫でてから、優は祈るように両手を組み合わせた。
そしてその手が開かれるのと同時に、紅色の炎がふわりと優の周りに噴き上がり、たちまちグルエリオーサを包みこんで円を描きながら天高くまで立ち上って行く。
すでにダイナモン魔法学校では、早朝のドラゴン小屋に立つ火の柱は恒例の日常となっていた。
今ではその炎を目覚まし代わりに朝を迎える者もいるほどだ。
その日の朝も、ダイナモンにいるすべての者が優の炎を感じとったが、いつもとは一味違うその炎に気づいたのは、ごくわずかの魔法使いだけだ。
―― 朱雀への深い感謝と喜び。
優の心そのものが、炎の熱となり、香りとなり、そして輝きとなる。
紅色の炎の中で優は思っていた。
もし、優に朱雀を助けられるときがくるなら、その時は恩返しがしたいと。朱雀が優を助けてくれたように、今度は優が朱雀の助けになるのだ。
これまで怠けてばかりいたから全然まともに魔法を使えない優だけれど、もしこんな優のことを朱雀が本当に必要としてくれるなら、どうしてその朱雀の期待を裏切ることができるだろうか。
だからこの日のことを絶対に忘れないようにしよう、朱雀が優の涙を払い、助けてくれたことを。優は自分の心の中で固く誓った。
――「絶対に、あなたを助けるよ」
試しの門で見た未来の朱雀が、闇に引き込まれて行く姿を思い出し、優は一人囁いた。
その頃、東の塔では猿飛業校長と桜坂教頭が窓から外を見つめていた。
「今朝はいつにも増して、見事な炎じゃ。あの子をドラゴン飼育員に任命したのは、やはり正しい判断じゃったのう、桜坂先生」
「なぜでしょう。私はあの子の炎を見ていると、なんだか、涙が出てきますわ。あんなに優しい炎が、この世にあるのですね」
「まさしく。あれは命の輝き、そのものじゃ」
南西の塔では、流和と永久が紅茶を入れながら優の炎を見つめている。
二人は毎朝この時間、紅茶を飲みながら優の火柱を眺めることを日課にしているのだった。
「優、何かいいことがあったのかしらね。炎がすごく、喜んでるみたいに見える」
「本当に綺麗。朱雀くんが言ってた通りね」
同じ頃、北東の塔では空と吏紀が少し早めの朝食に出かける途中で足を止め、テラスから西のドラゴン小屋を眺めていた。
「なあ吏紀、ナジアスの炎って、あんな感じだったのかな」
空が問う。
「そうかもな」
「伝説のシュコロボヴィッツが愛した炎、か……」
空は優の炎を遠くに見つめながら何やら物思いにふけり、そしてかすかに頬をゆるめた。きっと、親友のことを考えているのだろう、と吏紀は察する。
「というより、あんな炎を燃やせるナジアス自身をきっとシュコロボヴィッツは愛していたんだろうな」
と、空が結論した。
「その見解には俺も賛成だ。そして、朱雀もおそらく」
吏紀は最後まで言わずに言葉を切り、空を見やった。すると空も訳知り顔で頷いた。
「幸いなことだ」
「まさしく。幸いなこと」
ドラゴン小屋から一人で戻ってきた朱雀は今、誰もいない庭園で白い朝日に目を細めながら、紅く染まる西の方の空を見上げていた。自分がドラゴン小屋に行ったことを三次や熊骸先生には知られたくなかったので、朱雀は早めに姿を消すことにしたのだった。
炎を見上げた朱雀が、何とも言えぬ困った表情で、小さく笑った。優の気持ちは、ちゃんと朱雀に伝わっている。
悲しいときの炎も、嬉しいときの炎も、全部。けれどあまりに自分が優のことを感じすぎてしまうので、朱雀は少し戸惑っていた。今まで朱雀の心にこんなに奥深くまで入り込んできた人はいなかったように思う。炎の魔法使いとして日々戦いの孤独に直面してきた朱雀は、人と深く関わりすぎることがないように心に城壁を築いてきたのだ。それなのに、優はおそらく当の本人でさえ意図せずして簡単にその城壁を越えて入りこんできた。
「 『愛しい』 今の君の心を一言で表現するとすれば、それがふさわしいかな」
突然背後から声をかけられ、朱雀は思い切り眉をしかめて嫌な顔をした。
「気配を消して背後に立つの、やめてもらえませんか」
「それは失礼」
左目に眼帯をつけた播磨先生は、にこにこしながら朱雀に並び、上空の炎を見上げた。
「火の魔法使いは不思議だな。最も強く、最も弱い」
「その目、本当に心を覗くことができるんですか」
「驚くほどにね」
「だとしたら、封印しているのはどうしてですか」
「人の心には闇が満ちてる。この目は、僕を闇に誘い込むための罠なんだよ。人の心の醜さや闇を見せつけて、ほら、光なんてないだろうって、誘いかけるんだ」
「闇に堕ちるのが恐いですか」
「ああ。死ぬことより恐いな」
播磨先生の灰色の目が優しく、だがどこか意地悪に朱雀を見下ろした。
「だから、あの子みたいな魔法使いを見るとホッとさせられる。多分、君もそうだろう。でも、それだけじゃない。じゃなきゃ、呪いを一つ増やすほどのことまでしないはずだ」
「首をつっこまないでもらえますか。っていうか、アイツに余計なことを言ったら承知しない」
「おやおや、教師に向かってその口のきき方はないだろうに。まあ、いいだろう。僕は口出しはしないさ。けど、あの子には興味がある」
まるで朱雀を挑発するように耳もとで怪しく囁いて、播磨先生はその場から姿を消した。
朱雀の炎の熱気が、播磨先生の含み笑いの残響音に呼応して燃え上がった。
その日の昼過ぎ、ちょうどダイナモンの生徒たちが昼食を終えて午後の授業に向かおうとしているときに、ドラゴン飼育員たちが城に駆けこんできた。
皮のエプロンを身につけ、炭に汚れた優と三次の二人は、手に手に鉄鍋を抱え、それをいきなりひしゃくで叩きながら大声を出した。
「生まれたぞおオオオオオオ!!」
「グルエリオーサが無事に出産したわ! 男の子よ!」
エントランスから中央広間、それから食堂の入口までやって来て、二人は鍋を狂ったみたいに叩きまくった。
「フィアンマ・インテンサ・ドラゴンの赤ちゃんが、ついに生まれたぞおオオオ!! 幸福の印だ!」
希少種である炎のドラゴン、フィアンマ・インテンサ・ドラゴンの出産はとても珍しくて、魔法界で未だかつてその出産に立ち会った者はない。炎の魔法使いが数百年に一度生まれるか、生まれないかの希少種であるのと同じくらい、炎のドラゴンの誕生は魔法史に影響する大事件だった。だから、闇の魔法使いたちは炎のドラゴンを忌み嫌い、虐殺しようとしているのだ。
まさに暗闇の時代に炎のドラゴンの赤ちゃんが無事に生まれたことは、『幸福の印』だった。
「元気な男の子よ! まだこんなに小さいの! 卵で生まれるかと思ったら、生で生まれたのよ! もうビックリよ!」
優は鍋とひしゃくを持った両手を胸の前で広げて、およそ50センチくらいのドラゴンの大きさを、聞かれてもいないのにみんなに報告してまわった。
ダイナモンの生徒たちは飼育員があまりにハイテンションで騒々しいのと、彼らが煙突掃除人みたいに汚れているのを見て、やや遠巻きに見過ごしている。
けれど、珍しいドラゴンの出産に誰も興味がないわけはなく、皆口々に小さな歓声を上げたり、口笛を吹いたりしてお祝いしてくれた。
昼食を終えた流和と永久が、優に駆け寄ってきた。
「優、お疲れ様!」
「ドラゴンのために昼夜を問わず図書室にこもってただけあるわね。やる~」
「うん! 最後は朱雀が助けてくれたんだけどね」
「え、朱雀が? 一体なんのこと」
「グルエリオーサにかけられていた、のろ……」
「無事に生まれて何よりだったな、ドラゴン飼育員」
「朱雀!」
優の話を途中で遮って、朱雀が近付いて来た。
いつもと変わらない、近寄りがたくて不機嫌な様子の朱雀に、優が思い出したように言う。
「そうだ朱雀、グルエリオーサが、子どもの名前を朱雀につけてもらいたい、って言ってたよ」
「はあ? 何で俺が。嫌だ」
「どうして?」
「簡単に言うけど、名前をつけるのは大変なことなんだぞ。名前をつけられた者の生涯を決める問題だ。それだけで呪いをかけることもできるほど、重要なことだ」
「呪いではなくて、祝福をあげてほしいの、あの子に。できるでしょう? 昔飼ってたドラゴンに名前をつけたって言ってたじゃん」
「朱雀が昔ドラゴンを飼ってた!? 嘘でしょう」
優の言葉を聞きつけた流和が、口元をすぼめ、怪しげに朱雀を見つめる。
「本当だよ、この人はドラゴンに詳しいの」
優がミルトス材のひしゃくで朱雀を差す。
「へ~」
「ねえ、どんな名前がいいと思う?」
「お前が決めろよ」
「ダメだよ! グルエリオーサの希望なんだから。夜までに考えておいてよね」
珍しく優が上から目線で朱雀に命じている姿が、流和や永久にはなんだか微笑ましく見えた。
「優、午後からの授業は?」
「変身術で私たち、ウサギと猫になるのよ」
「俺は虎になる」
朱雀が意味深に永久と流和に目配せし、ニヤリとした。
それを見咎めて優が口を挟む。
「永久も流和も、食べられないように気をつけてね」
「優は何になりたい? なりたいって最初に頭に浮かんだものが、その人にピッタリの変身動物なんだって」
「そうなんだ。私はドラゴンとかユニコーンになりたいよ!」
優が即答する。
「それはまた、随分と難易度の高いものを言ったわね。変身術は大きな動物になるほど難しくて、ドラゴンやユニコーンみたいな魔法生物や幻獣になるのは、それよりもっと難しいのよ」
「だから初心者は小さい動物から練習するらしいの」
「へえ~、そうなんだ。じゃあ、ハリネズミ!」
「ハリネズミ!? なんでまた」
「針があるからだよ!」
冗談で言っているのかと思いきや、優はなかなかに本気らしい。その口調に迷いはない。
「針があれば、小さくても身を守れるでしょ!」
そこへ優と同じ皮のエプロンをした三次が近寄って来た。
「優、僕たちそろそろ戻らないと」
「あ、うん、そうだね。ねえ三次は変身するとしたら何になりたい?」
優の突然の質問にも動じず、三次がすぐに答える。
「僕? 僕は亀になりたいな」
「亀!?」
「へえ、どうして?」
「甲羅があるからさ」
「ああ~」
優は納得顔で頷いている。が、他の三人は納得のいかない顔で優と三次の二人を見つめている。変身術で変身するのに人気なのはうさぎや猫などの可愛い動物だ。上級者になればもっと強い肉食系動物になりたがるのが普通で、あとは、偵察用として鳥類がある。
優や三次のようにハリネズミや亀になりたいと考える生徒は極めて珍しかった。
「午後からは小屋の片づけをして、もう少しグルエリオーサの側に居ることになってるんだ。明日からは授業に復帰できるし、今夜の特訓にも間に合うから」
「わかった」
最後の部分を朱雀に向かって言って、優は三次と一緒に小走りにドラゴン小屋に戻って行った。
その姿を見送りながら、永久が残念そうに呟く。
「あの二人って、仲がいいのね。私たちのことなんて、忘れちゃったりして、優」
「きっと気が合うのよ。良さそうな子じゃないの。ドラゴンのことが落ちついたら、また三人でぱーっとやりましょうよ」
「ぱーっとやるって、何をだ」
「朱雀はダメよ。女子には女子だけの集まりがあるんだから」
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる