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61 すき焼きの思い出
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「あんたの部屋に、お客さん用の布団出しといたから」
「ありがとう」
「今日は、灯里たちも夜ご飯食べに来るって言ってたよ」
「え、なんで?」
「あんたの顔が見たいって。あんたが、夏休みに一度も帰ってこなかったから」
「いきなりそんな大勢いて、いっちゃん大丈夫かな……」
「知らない人ばかりじゃなし、夜ご飯食べるだけだから大丈夫でしょ」
人の話し声が心地好い。好きな人の声なら尚更だ。何だか、トントンとか、ぐつぐつとか、聞いていてとても嬉しくなるような音も聞こえている気がする。一太は、ふわふわする意識の中で幸せに微睡んでいた。良い夢だな。夢の中でまで晃くんの声が聞こえる……。もう一人の声も、知っている声だ……。
「ただいまー」
「お邪魔します」
知らない二つの声が大きく響いて、一太は、びくっと目を開けた。目の前に見覚えのない座卓や絨毯、広い空間が広がっていて目を瞬かせる。きょろ、と辺りを伺うと晃の顔を見上げる形になった。
「あ。いっちゃん、おはよ。うるさくてごめんね」
一太が、がばりと身を起こすのと、目の前の扉が開いて見知らぬ女の人と男の人が入って来るのが同時くらいだった。いきなり起き上がったので、目の前が真っ暗になる。
ぐ、と目をつぶって堪えてながら、
「ご、ごめん、晃くん」
と、小声で謝った。
「え、何が?」
「俺、まさか寝ちゃうなんて……」
「いいじゃん。歩き回って疲れてたし。僕もさっきまで一緒に寝てたよ」
晃は自分の家なんだから、寝てようが起きていようが自由だろう。だが、一太は客なのだ。初めてお邪魔した友だちの家でうっかり寝てしまうのは、普通じゃないんじゃないか。一太には友だちの家に遊びに行った経験が無い、いや、そもそも友だちがいたことがないからよく分からないのだが。
「大丈夫? 頭痛い?」
「あ、いや。急に動くといつもこうだから……」
心配されることにはまだ慣れないが、嬉しい。こうして、どんどん甘えん坊になっていくのはよくないな、と一太は気を引き締めた。目眩のようなものが治まって目を開けると、座卓を挟んだ先に、居間に入ってきた二人の男女が立っている。
一太はまた慌てて立ち上がってしまい、くらりとした。
「いっちゃん、慌てなくていいから」
晃が、一緒に立ち上がって一太を支えてくれながら言うけれど、すっかり失礼なことをしてしまって、気ばかりが焦る。
「こんにちは。はじめまして。晃の姉の灯里です」
「灯里の夫の木橋学です」
普通の挨拶なら大丈夫だ、と一太は安堵の息を吐いた。
「はじめまして、こんにちは。お邪魔しております。村瀬一太です。晃くんと同じ大学に通っています。あの、晃くんにはいつもお世話になっています」
そうして頭を下げて挨拶をしてから改めて家の様子を見渡し、一太はカウンターの向こう側に晃の母、陽子がぱたぱたと動いているのを見つけた。
「あ、陽子さん!」
「ああ、いっちゃん。おはよう」
「あの、あの。ご挨拶もいたしませず、申し訳ありませんでした」
「いいのよ、そんなの」
「手伝います!」
「いいから、寛いでて」
「いえ。充分です。本当に、充分寛ぎました」
「そう? なら、こちらに来てもらおうかな?」
「はいっ」
ご飯作りの手伝いには間に合っただろうか、と思いながら、頭をもう一度目の前の二人にぺこりと下げて、一太はカウンターの向こう側へと早足で向かった。
「今日はね、すき焼きだから。本当にすることないのよ」
「すき焼き」
カウンターになっているキッチンに一太が入り込むと、陽子が手早く野菜を切りながら言った。
「そう。晃の好物なの。帰って来たら作ってあげようと思ってたんだけど、やっぱり夏の白菜は高いわねえ。あ、そうだ。いっちゃんは、すき焼きは好き? 苦手な物とかあったりする?」
「あの、食べられれば何でも……」
「そう。なら良かった」
この会話は、晃くんともしたことがあるな、と一太は思った。食べ物の好き嫌いを聞かれたのは生まれて初めてだったから、とてもよく覚えている。好きも嫌いも言っていられなかった一太の好きなものは、本当は、少量で腹がふくれて傷みにくいもの、なのだが、そんな事を聞かれているのではないことくらいは分かっている。苦肉の策が、食べられれば何でも、という答えなのだ。
「いっちゃんは甘いもの好きだし、お肉も好きだし、とろっとした感触のものも好きだから、すき焼きは絶対好きだと思う」
一太に付いてキッチンにきた晃が陽子に告げた。今日の病院でもそうだったな、と一太は思う。晃はどうも、一太本人よりも一太のことを知っている可能性が高い。おかしなことだ。
ふふ、と一太は笑った。
「え? 何?」
戸惑う晃が更におかしくて、またくすくす笑った。
「俺のこと、俺より知ってる」
「え? 甘いもの好きでしょ?」
「うん。好きかも」
「いや、絶対好きだよ。プリンとかクッキーとかケーキとか、作ってたじゃん」
「あー、うん。あー、好きだね」
「違うの? 味が好きなんじゃないの?」
「んー。味も好き」
「え?」
「あー、うん。その、何か、生きていくのに絶対必要って訳じゃないものを作って食べているっていう贅沢が、嬉しくて。それに晃くんが、作りたいなら作ったらいいって材料買ってくれたのが嬉しくて。だから、作ってた。その、晃くんも喜んで食べてくれるし……」
「あ、うん。美味しかったし」
一太は、晃が喜んで食べてくれるのが嬉しい、と言ってから気恥しくなって視線を彷徨わせる。晃もつられて、照れたようにもごもごと答えた。
「新婚さんの会話?」
荷物を置いてキッチンを覗きにきた晃の姉、灯里の突っ込みに、二人はますます挙動不審になった。何だ、それ。新婚さんって……。
「灯里、あんたこそ手伝いなさい。あそこの食卓に、ガスコンロ置いて」
「うわ、覗きに来るんじゃなかった」
「いっちゃん。すき焼きはあっちで焼くから、お皿とか卵、運ぼう」
食卓で焼く、卵を運ぶと言われて不意に一太は思い出す。
すき焼き。
弟の父親が好きだった鍋か。
彼が家を出ていくまでの間、給料日には必ず机の上にガスコンロを出して準備がされていた。一太が一緒に食べたことは、もちろん無い。キッチンで完成しないのでおこぼれがなく、夜ご飯抜きが決定されている日だった。
すき焼きか……。
その日は、三人が仲良く肉を焼いている音や話し声がよく聞こえてきた。
食べられるものなら何でも好きだと言ったけれど、その料理を普通に食べられるだろうか、と少しだけ一太は不安になった。
「ありがとう」
「今日は、灯里たちも夜ご飯食べに来るって言ってたよ」
「え、なんで?」
「あんたの顔が見たいって。あんたが、夏休みに一度も帰ってこなかったから」
「いきなりそんな大勢いて、いっちゃん大丈夫かな……」
「知らない人ばかりじゃなし、夜ご飯食べるだけだから大丈夫でしょ」
人の話し声が心地好い。好きな人の声なら尚更だ。何だか、トントンとか、ぐつぐつとか、聞いていてとても嬉しくなるような音も聞こえている気がする。一太は、ふわふわする意識の中で幸せに微睡んでいた。良い夢だな。夢の中でまで晃くんの声が聞こえる……。もう一人の声も、知っている声だ……。
「ただいまー」
「お邪魔します」
知らない二つの声が大きく響いて、一太は、びくっと目を開けた。目の前に見覚えのない座卓や絨毯、広い空間が広がっていて目を瞬かせる。きょろ、と辺りを伺うと晃の顔を見上げる形になった。
「あ。いっちゃん、おはよ。うるさくてごめんね」
一太が、がばりと身を起こすのと、目の前の扉が開いて見知らぬ女の人と男の人が入って来るのが同時くらいだった。いきなり起き上がったので、目の前が真っ暗になる。
ぐ、と目をつぶって堪えてながら、
「ご、ごめん、晃くん」
と、小声で謝った。
「え、何が?」
「俺、まさか寝ちゃうなんて……」
「いいじゃん。歩き回って疲れてたし。僕もさっきまで一緒に寝てたよ」
晃は自分の家なんだから、寝てようが起きていようが自由だろう。だが、一太は客なのだ。初めてお邪魔した友だちの家でうっかり寝てしまうのは、普通じゃないんじゃないか。一太には友だちの家に遊びに行った経験が無い、いや、そもそも友だちがいたことがないからよく分からないのだが。
「大丈夫? 頭痛い?」
「あ、いや。急に動くといつもこうだから……」
心配されることにはまだ慣れないが、嬉しい。こうして、どんどん甘えん坊になっていくのはよくないな、と一太は気を引き締めた。目眩のようなものが治まって目を開けると、座卓を挟んだ先に、居間に入ってきた二人の男女が立っている。
一太はまた慌てて立ち上がってしまい、くらりとした。
「いっちゃん、慌てなくていいから」
晃が、一緒に立ち上がって一太を支えてくれながら言うけれど、すっかり失礼なことをしてしまって、気ばかりが焦る。
「こんにちは。はじめまして。晃の姉の灯里です」
「灯里の夫の木橋学です」
普通の挨拶なら大丈夫だ、と一太は安堵の息を吐いた。
「はじめまして、こんにちは。お邪魔しております。村瀬一太です。晃くんと同じ大学に通っています。あの、晃くんにはいつもお世話になっています」
そうして頭を下げて挨拶をしてから改めて家の様子を見渡し、一太はカウンターの向こう側に晃の母、陽子がぱたぱたと動いているのを見つけた。
「あ、陽子さん!」
「ああ、いっちゃん。おはよう」
「あの、あの。ご挨拶もいたしませず、申し訳ありませんでした」
「いいのよ、そんなの」
「手伝います!」
「いいから、寛いでて」
「いえ。充分です。本当に、充分寛ぎました」
「そう? なら、こちらに来てもらおうかな?」
「はいっ」
ご飯作りの手伝いには間に合っただろうか、と思いながら、頭をもう一度目の前の二人にぺこりと下げて、一太はカウンターの向こう側へと早足で向かった。
「今日はね、すき焼きだから。本当にすることないのよ」
「すき焼き」
カウンターになっているキッチンに一太が入り込むと、陽子が手早く野菜を切りながら言った。
「そう。晃の好物なの。帰って来たら作ってあげようと思ってたんだけど、やっぱり夏の白菜は高いわねえ。あ、そうだ。いっちゃんは、すき焼きは好き? 苦手な物とかあったりする?」
「あの、食べられれば何でも……」
「そう。なら良かった」
この会話は、晃くんともしたことがあるな、と一太は思った。食べ物の好き嫌いを聞かれたのは生まれて初めてだったから、とてもよく覚えている。好きも嫌いも言っていられなかった一太の好きなものは、本当は、少量で腹がふくれて傷みにくいもの、なのだが、そんな事を聞かれているのではないことくらいは分かっている。苦肉の策が、食べられれば何でも、という答えなのだ。
「いっちゃんは甘いもの好きだし、お肉も好きだし、とろっとした感触のものも好きだから、すき焼きは絶対好きだと思う」
一太に付いてキッチンにきた晃が陽子に告げた。今日の病院でもそうだったな、と一太は思う。晃はどうも、一太本人よりも一太のことを知っている可能性が高い。おかしなことだ。
ふふ、と一太は笑った。
「え? 何?」
戸惑う晃が更におかしくて、またくすくす笑った。
「俺のこと、俺より知ってる」
「え? 甘いもの好きでしょ?」
「うん。好きかも」
「いや、絶対好きだよ。プリンとかクッキーとかケーキとか、作ってたじゃん」
「あー、うん。あー、好きだね」
「違うの? 味が好きなんじゃないの?」
「んー。味も好き」
「え?」
「あー、うん。その、何か、生きていくのに絶対必要って訳じゃないものを作って食べているっていう贅沢が、嬉しくて。それに晃くんが、作りたいなら作ったらいいって材料買ってくれたのが嬉しくて。だから、作ってた。その、晃くんも喜んで食べてくれるし……」
「あ、うん。美味しかったし」
一太は、晃が喜んで食べてくれるのが嬉しい、と言ってから気恥しくなって視線を彷徨わせる。晃もつられて、照れたようにもごもごと答えた。
「新婚さんの会話?」
荷物を置いてキッチンを覗きにきた晃の姉、灯里の突っ込みに、二人はますます挙動不審になった。何だ、それ。新婚さんって……。
「灯里、あんたこそ手伝いなさい。あそこの食卓に、ガスコンロ置いて」
「うわ、覗きに来るんじゃなかった」
「いっちゃん。すき焼きはあっちで焼くから、お皿とか卵、運ぼう」
食卓で焼く、卵を運ぶと言われて不意に一太は思い出す。
すき焼き。
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彼が家を出ていくまでの間、給料日には必ず机の上にガスコンロを出して準備がされていた。一太が一緒に食べたことは、もちろん無い。キッチンで完成しないのでおこぼれがなく、夜ご飯抜きが決定されている日だった。
すき焼きか……。
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