【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ

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128 ◇次は何を贈ろうか

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 そっと、丁寧に包装紙のテープを剥がす一太を見守りながら、晃は大きく伸びをする。時計を確認すると、まだ六時にもなっていなかった。
 本当に、早起きなんだなあ。
 一太が、毎日六時頃に起きているのは気付いていて、寒くないようにと暖房のタイマーを六時にセットした。でもこの様子では、本当はそれより前に起きて六時になるのを待っていたのかもしれない。だとしたら、もっと前から部屋を暖めておかないと寒いだろう。
 でも……。
 一太は晃の布団で寝ていた。今、腕の中にいた。洗濯終了の音が聞こえていたから、すでにひと仕事終えて、晃の布団に入ったのだ。
 どうしてそうなったのかは分からない。けれど、幸せ、という一太の呟きの声が夢ではないのだとしたら、温めてあげたらまだ寝られるってことだ。なのに、長年の習慣で早くに目が覚めて、しなくちゃいけない事があるからと、眠くても寝直せない……?
 むむ、と晃は眉を寄せてしまう。どうしたら、いっちゃんはもっとたくさん寝ることができるだろうか。

「……泡立て器?」

 丁寧に剥がした包装紙を綺麗に畳んでから箱を開けた一太が、すぐに説明書を取り出して読み始めた。家電好きだよね。
 一緒に住み始めてから、晃の家にある電化製品の説明書を片っ端から読んでいた一太。そして既に晃より使いこなしている。この小さな機械の使い方も、すぐにマスターするに違いない。

「電動の泡立て器。プレゼントっていうより、お菓子をまた作って欲しいってお願いしてるだけなんだけどね」

 母が言っていた。これを考えた人は天才だ、と。これが松島家へ導入される前は、卵六個分の白身の泡立てを子どもたち総出で手伝ってケーキを作っていたのだ。腕がだるくなったら交代しながら、ふわふわのメレンゲができるまでかき混ぜるのは、そりゃもう大変だった。まだ小さくて大した戦力になれなかった晃の記憶にも残っているくらいだ。ケーキが手早く簡単に出来るようになったと大喜びした母が、連日、様々な種類のケーキを作ってはおやつに出してくれた。姉たちは、太るからほどほどにしてくれと文句を垂れていた。
 電動の泡立て器を見るだけで、楽しい思い出が溢れてくる。
 一太が作るケーキの卵は松島家の半分の三個だ。それでも、一人で作るのは大変だっただろう。昨日のふわふわに膨らんだケーキを思い出して、晃は頬が緩む。頑張ってくれたこと、分かってる。嬉しい。

「おお。すごい……」

 呟いた一太は、本体を手に持った。外してあった泡立て部品をカチリと付けて、右に左に傾けて……。夢中なの、可愛いな。次は何をプレゼントしようか。絶対に一太は言わないと分かっているけれど、欲しいものがあれば言ってくれたらいいのに、と思ってしまう。
 晃は、喜んでいる一太を見るのが楽しかった。欲しいものはないか、と毎年聞いてくる母の気持ちがようやく分かった気がした。
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