【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ

文字の大きさ
221 / 252

221 お酒を飲んでみようの会

しおりを挟む
「酒の強い弱いってさ」
「ん?」

 安倍と二人で残りのお酒をちまちま飲んで、料理をちまちま食べる。たまに、それぞれの膝の上にある大好きな人の頭を撫でる。
 一太は、によによと笑った。
 何だこれ。
 すっごく楽しい。

「全部、遺伝なんだって。アルコールを分解する何かが体にたくさんあれば、お酒をたくさん飲んでも分解してくれて酔いにくいし、体にあんまり無かったら、アルコールを分解できないからすぐ酔っちゃうらしい。それか、体からアルコールを出そうとして吐いちゃうって」
「ふーん」
「その、アルコールを分解する何かを、たくさん持っているか持っていないかってのが遺伝で決まってるから、酒に強いか弱いかはもう生まれつき決まってるんだってさ」
「そっか」
「うちはどっちも飲めるから、俺は飲めるんじゃないかなって思ってた」
「どっちも?」
「そ。父親も母親も。早織さおりんちは、父親が美味しそうにビール飲んでたってさっき言ってたから、母親がお酒に弱いんだろうな。早織が弱いってことはさ」
「あ、うん」
「松島んちってどう?」

 晃くんのうち?
 あまり食卓で、お酒を見たことが無いかもしれない。いや、でもそうだな。誠さんは、たまに飲んでいた。温めた日本酒で、お正月の挨拶に来た学さんと乾杯していた。お姉さんたちも飲んでいた。一太と晃は、安倍と岸田と四人で初めて飲もうと約束があったから、その日は、お酒は飲まないと断った。陽子さんは、どうだったっけ? 楽しそうにおつまみを運んで、それで?

「誠さんは飲んでた。じゃあ陽子さんが、あんまり……」

 ああ。遺伝。……遺伝か。親から受け継ぐもの。
 あの人は、たまに夜の仕事に出て、お酒の匂いをぷんぷんさせて帰ってきた。そんな時も、いつも通り一太に冷たくのぞむに甘かった。

「あ。あー」

 口を噤んだ一太に、安倍が急に真顔になって言った。

「ええっと、ごめん」
「え?」
「父親とか母親とか、その、お前にする話じゃなかった」
「ああ」

 確かに、ちょっと思い出してはいたけれども。その思い出はあまり気分のいいものでは無かったけれども。でも、遺伝、遺伝か……。

「あの人は、たぶん、お酒に強かったと思うよ? たぶん」
「そうか……」
「顔も、よく似てるってずっと言われてた。……こんなとこも似てるのか。かわいそうだな」
「かわいそう?」
「うん。いらなくて捨てて、自分の子じゃない、いらないってずっと言ってる子が自分にそっくりでさ。検査しなくても親子って分かるとか言われて、捨てても捨てても手元に戻されてさ。大事にしてるもう一人の子どもが全然あの人には似てなくて、かわいそうだなって」
「それって、かわいそうなのか?」
「かわいそうじゃない?」
「かわいそうじゃないだろ」
「そっか」

 かわいそうではないのか。そういうのが、あの人が俺に苛立つ原因の一つでもあったと思うんだけど。

「お前はもうさ、その人とは縁を切ったんだろ」
「あ、うん、そう」

 正確には切れていないらしいが、戸籍は別にしてもらった。先日久しぶりに会って、改めて、自分の事をあの人がどう思っているのか確認したばかりだ。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ悲しかったんだと思う。
 でもまあ、それだけ。
 あの人との色んな繋がりをみつけても、まあ、仕方ないなと思うだけ。もう二度とこちらから繋がりたいなんて思わない。もう、本当に、欠片も。

「じゃあまあ、そうだな。松島んちの父ちゃんが飲めるんなら、そっちと一緒だとか思っとけばいいんじゃね? ほら、お前の帰るとこって、これからは松島んちなんだからさ」
「ええー。何それ」

 一太は、ふわふわとした気分のままに笑った。頬に冷たいものが流れて、何だこれと思った。

「酒を飲むと、意味もなく泣きたくなることあるらしいぜ」

 じゃあ仕方ないか。この涙に意味はない。お酒を飲んだせいで勝手に涙が出てきているんだから意味はないんだ。
 一太は、たくさん泣いた。少しして起きた晃が狼狽えながら抱きしめてくれて、もっと泣いた。泣いて泣いて、疲れて寝てしまった。
しおりを挟む
感想 681

あなたにおすすめの小説

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です

はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。 自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。 ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。 外伝完結、続編連載中です。

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

処理中です...