【本編完結】人形と皇子

かずえ

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こぼれ話

そうか、って緋色は言った

「それで、それでね。割り箸をくるくるってしたら白色のふわふわが割り箸にくっ付いてくるんだ。ふわふわだけど、それが飴で。綿みたいな飴だから綿あめって名前で。かじったらかじったとこの白が茶色になるんだけど、でもそのままだと白い。口の中で溶けて美味しくて、いっぱい入れたくなる。でも、末良すえよしは大きいのをぎゅむって口に入れたら固まっちゃって硬くなってびっくりしてた」

 とにかく、綿あめがいかに素晴らしかったかを緋色に伝えなくちゃならない。俺は頑張ってしゃべった。早く動かそうとした舌が絡まりそうだ。言いたいことはたくさんあって、でも緋色ひいろは忙しいから、なかなかゆっくりお話できない。もう全然時間が足りないんだよ。

「そうか……」

 緋色は、俺に髪の毛を預けながらいつもの返事をする。お風呂上がりの布団の上。髪を拭いた後に、緋色は俺に、俺は緋色に美容液をつけるのは、俺たちの毎日のお気に入りの時間だ。いい匂いにうっとりしちゃう。緋色は、絶対に、寒がりの俺の髪の毛を先に乾かすから、俺の髪の毛はもう美容液まで終わってる。匂いもほとんど消えていて、いい感じ。
 俺、髪に美容液を伸ばしてるときに匂うのは好きだけど、ずっと匂うのは好きじゃないからさ。このくらいがいい。
 ほんとは、乾かしてもらってるときにも話そうと思ってたけど、気持ちよくてぼやぼやしてしまった。寝ちゃわなくて良かった。

「三人で分けっこしたから、もう一個作ってもらったんだ。末良がおかわりって言って、俺もおかわりって言った」

 亀吉かめきちはどうだったかな。おかわりは言ってなかったかも。口に入れては、ない、って言っていた。

「おかわり、ねえ。そういうのは、飯で言え」
「あ、う……ええっと。はあい」

 全然お腹ふくれてなんかいなかったのに、なんでか、夜ご飯があまり入らなかったんだよなあ。

「全然お腹ふくれてなかったのに。だって綿わただから」
「飴だろ?」

 ……綿か飴かというと、飴かもしれない。甘かったし。とんでもなく美味しかったし。

「緋色も食べたら分かる」
「何が?」
「おかわりって言っちゃう気持ち」
「そうか?」

 いつもの「そうか」じゃない「そうか」が出た。そういえばさっきの「そうか」も、いつもとちょっと違ったような?
 ……知ってる。緋色は、甘いものはあんまり好きじゃない。俺が口に持っていったら一口は食べるけど。だいたい、あま、って言って終わる。

「むう……でも見に来て。美味しいから。匂いまで美味しいから」
「はは。全くどんなものか想像もついていないから、見には行くけど。俺はいらんぞ」

 まあそう言わずに食べてみてよ。あれはすごいよ。すごくすごい。
 そうだ。明日は乙羽おとわ常陸丸ひたちまるも誘って、皆で味見しようよ。
 そうしよう。 
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