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第三章 幸せの行方
6 成人 43
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また力丸との話の途中で寝たのか、ベッドの上だった。
今度は睦峯がベッド脇に座っていて、ソファに斎が寝ていた。
滅多に見ない人たちにびっくりする。
「起きたか? しんどくないか?」
睦峯が優しい声で聞いた。
うん、しんどくはない。体が動いてくれないだけ。
俺が頷いたら、少しだけほっとした顔になって睦峯はソファから斎をおぶってきた。斎は、目は閉じているけれど寝ていなかったらしい。睦峯にしっかりと捕まっている。
「成人。調子はどうですか?」
か細い声が聞いてきた。
「元気」
「なら、良かった。私は最近、めまいが酷くて目も開けられない有り様ですよ。先日、壊してもらったはずの頭の機械が悪さをしているみたいで」
斎は眉間に皺を寄せながら、ゆっくりゆっくり話した。話すことすら辛いのかもしれない。
「頭を開けて、取り出して貰えることになりました。何があるか分からないから、話せるうちに成人に謝りたかったのです」
斎を揺らさないようにするためか、睦峯は身動ぎ一つせずに斎を背負って立っている。
「すみません、成人。小さな子どもに戦いを任せて、私はのうのうと生きてきた。きっと私には、やめさせる力があったのに」
斎は、何も覚えていない。利用されて、大変な目に合ってることを俺は知っている。
「成人」
斎は、ほんの少し目を開けて俺を見た。ベッドに横になったまま、動けやしない俺を。すぐに目は閉じられたけれど、涙が一筋流れて落ちた。
「俺は、幸せ」
「はい。私が元気になったら、また一緒に暮らしてもらえますか」
「うん。家族だから」
「家族……」
「一緒に暮らしてる好きな人が家族でしょ」
斎の閉じた目からぼろぼろと涙が溢れた。どうしたのかな? 睦峯まで泣きそうな顔をしている。
「ありがとう、成人」
何がありがとうなのか、俺にはよく分からなかった。
今度は睦峯がベッド脇に座っていて、ソファに斎が寝ていた。
滅多に見ない人たちにびっくりする。
「起きたか? しんどくないか?」
睦峯が優しい声で聞いた。
うん、しんどくはない。体が動いてくれないだけ。
俺が頷いたら、少しだけほっとした顔になって睦峯はソファから斎をおぶってきた。斎は、目は閉じているけれど寝ていなかったらしい。睦峯にしっかりと捕まっている。
「成人。調子はどうですか?」
か細い声が聞いてきた。
「元気」
「なら、良かった。私は最近、めまいが酷くて目も開けられない有り様ですよ。先日、壊してもらったはずの頭の機械が悪さをしているみたいで」
斎は眉間に皺を寄せながら、ゆっくりゆっくり話した。話すことすら辛いのかもしれない。
「頭を開けて、取り出して貰えることになりました。何があるか分からないから、話せるうちに成人に謝りたかったのです」
斎を揺らさないようにするためか、睦峯は身動ぎ一つせずに斎を背負って立っている。
「すみません、成人。小さな子どもに戦いを任せて、私はのうのうと生きてきた。きっと私には、やめさせる力があったのに」
斎は、何も覚えていない。利用されて、大変な目に合ってることを俺は知っている。
「成人」
斎は、ほんの少し目を開けて俺を見た。ベッドに横になったまま、動けやしない俺を。すぐに目は閉じられたけれど、涙が一筋流れて落ちた。
「俺は、幸せ」
「はい。私が元気になったら、また一緒に暮らしてもらえますか」
「うん。家族だから」
「家族……」
「一緒に暮らしてる好きな人が家族でしょ」
斎の閉じた目からぼろぼろと涙が溢れた。どうしたのかな? 睦峯まで泣きそうな顔をしている。
「ありがとう、成人」
何がありがとうなのか、俺にはよく分からなかった。
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