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第三章 幸せの行方
17 緋色 42
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力丸をここへ連れてくるのも嫌だったのに、下がってろだと? 死にたいのかな、くそガキ。
「やる気あれば、動けるんでしょ。殿下はすぐ甘やかすから、邪魔です」
睨み付けても、引かなかった。流石に目は逸らしたが。
抱いていた成人をベッドに下ろして座らせる。クッションを体の回りに置いて、ぐにゃぐにゃするのを何とか座った姿勢にさせる。大丈夫なのか、と見守っていたら、背中を押された。覚えてろよ、力丸。
「成人、あったかいうちに食べよう」
力丸は、成人にスプーンを握らせた。自分で食えるのか?とはらはらする。
冷蔵庫を開けて、コップ二つにそれぞれ、水と氷を入れている。
「氷」
成人の顔が、ぱっと輝く。スプーンを落としてコップに手を伸ばした所を、力丸に掴まれている。
「後で。ご飯食べてからな。置いといてやるから」
不貞腐れた成人の手に、またスプーンを握らせる。
不満そうな顔を見ながら、自分のご飯を食べ始めた。オムライスとコーンスープらしい。黄色いな……。
「なる? 急がないと氷が溶けて無くなっちゃうぞ」
「え?」
「見てみ? 氷は、置いておいたらどんどん溶けていくんだよ」
氷だけを四つ入れてあるので、そう簡単には無くならないだろうが、それでも少しずつ水にはなっていく。
成人は焦ったらしい。力の入りにくい手でふるふるとコーンスープを掬いはじめた。口へたどり着くまでに大半こぼしながら、必死でスープを飲み始める。
力丸は、すきを見て器用に成人の口にお粥も放り込む。不満そうにされると、水を渡す。自分のご飯もしっかり食べている。
上手いもんだな。
と思うが、何となく腹は立つ。
「私たちも食べておきましょう、殿下」
いつの間にか、二人分のオムライスとコーンスープを並べて、生松が言った。安っぽい椅子に座って、狭い机から皿を取る。
「食べてますね……」
「ああ」
「自分で……」
喉に引っ掛かるような声に驚いて見ると、生松が涙を堪えながら成人を見ていた。
ついさっきまでぐにゃぐにゃしてたのが、もたれかからずにスープに屈みこんで一生懸命食べている。
「力丸。氷、氷が」
「なる、急げ。頑張れ。その氷の溶けた水だけ飲んでいいから」
カシャンと、スプーンを落としてコップを掴む。こくこく飲んで、びくっと震えた後に、にひゃと笑う。
「冷たい」
ああ、動いてるな。
「生松」
「はい」
「心から、感謝する」
「……はい」
「やる気あれば、動けるんでしょ。殿下はすぐ甘やかすから、邪魔です」
睨み付けても、引かなかった。流石に目は逸らしたが。
抱いていた成人をベッドに下ろして座らせる。クッションを体の回りに置いて、ぐにゃぐにゃするのを何とか座った姿勢にさせる。大丈夫なのか、と見守っていたら、背中を押された。覚えてろよ、力丸。
「成人、あったかいうちに食べよう」
力丸は、成人にスプーンを握らせた。自分で食えるのか?とはらはらする。
冷蔵庫を開けて、コップ二つにそれぞれ、水と氷を入れている。
「氷」
成人の顔が、ぱっと輝く。スプーンを落としてコップに手を伸ばした所を、力丸に掴まれている。
「後で。ご飯食べてからな。置いといてやるから」
不貞腐れた成人の手に、またスプーンを握らせる。
不満そうな顔を見ながら、自分のご飯を食べ始めた。オムライスとコーンスープらしい。黄色いな……。
「なる? 急がないと氷が溶けて無くなっちゃうぞ」
「え?」
「見てみ? 氷は、置いておいたらどんどん溶けていくんだよ」
氷だけを四つ入れてあるので、そう簡単には無くならないだろうが、それでも少しずつ水にはなっていく。
成人は焦ったらしい。力の入りにくい手でふるふるとコーンスープを掬いはじめた。口へたどり着くまでに大半こぼしながら、必死でスープを飲み始める。
力丸は、すきを見て器用に成人の口にお粥も放り込む。不満そうにされると、水を渡す。自分のご飯もしっかり食べている。
上手いもんだな。
と思うが、何となく腹は立つ。
「私たちも食べておきましょう、殿下」
いつの間にか、二人分のオムライスとコーンスープを並べて、生松が言った。安っぽい椅子に座って、狭い机から皿を取る。
「食べてますね……」
「ああ」
「自分で……」
喉に引っ掛かるような声に驚いて見ると、生松が涙を堪えながら成人を見ていた。
ついさっきまでぐにゃぐにゃしてたのが、もたれかからずにスープに屈みこんで一生懸命食べている。
「力丸。氷、氷が」
「なる、急げ。頑張れ。その氷の溶けた水だけ飲んでいいから」
カシャンと、スプーンを落としてコップを掴む。こくこく飲んで、びくっと震えた後に、にひゃと笑う。
「冷たい」
ああ、動いてるな。
「生松」
「はい」
「心から、感謝する」
「……はい」
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